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5-10「グラディオ」

夜が明ける頃、一行は森を抜け、岩肌の露出した峡谷地帯へと出た。


木々はまばらになり、代わりに灰色の岩がむき出しになっている。

風が強く、乾いた音が谷に響く。


エイドが足を止めた。


「ここだ」


フレイが周囲を見回す。


「……やけに静かだな」


アーニャが耳を伏せる。


「匂いが濃いにゃ」


「さっきの連中より、もっと」


フランソワーズが剣を抜く。


「警戒を」


その時だった。


――ドンッ


地面が揺れた。


岩壁の向こう側から、重い衝撃音。


「来るぞ」


エイドの声は低い。


次の瞬間。


岩壁が砕けた。


轟音。


砕け散る石の中から現れたのは――


巨大な影だった。


「……なんだ、あれは」


フレイが呟く。


それは“人型”だった。


だが明らかに人ではない。


三メートルを超える体躯。

全身が灰色の金属で覆われている。

関節には魔力の光が走り、内側で何かが脈動している。


そしてその中心――胸部。


六属性の魔石が埋め込まれていた。


歪んだ配置で。


「灰色兵器……」


アルシェリアが呟く。


「完成形に近い」


その巨体の肩の上。


一人の男が立っていた。


黒衣ではない。


重厚な外套。


鋭い眼光。


「見つけたぞ」


低く響く声。


「原初の器」


クレージュの目が細くなる。


男は続ける。


「そして……欠片」


アルシェリアを見る。


「両方揃うとはな」


フランソワーズが前に出る。


「何者だ」


男はゆっくりと名乗った。


「第三司祭」


「グラディオ」


フレイが小さく笑う。


「幹部ってやつか」


グラディオは答えない。


ただ、静かに命じた。


「捕らえろ」


次の瞬間。


灰色兵器が動いた。


ズンッ!!


地面が沈む。


巨体が一歩踏み出すだけで、衝撃が走る。


「散れ!」


フレイが叫ぶ。


全員が左右に飛ぶ。


直後、拳が振り下ろされる。


地面が砕けた。


「重い……!」


フランソワーズが歯を食いしばる。


ただの力ではない。


魔力の圧が乗っている。


「ただの人形じゃないにゃ!」


アーニャが背後へ回り込む。


爪で斬りつける。


だが――


ギンッ!


弾かれる。


「硬すぎるにゃ!」


アルシェリアが叫ぶ。


「核を狙って!」


「胸部の魔石!」


クレージュが踏み込む。


風をまとい、一気に距離を詰める。


灰色兵器が反応する。


腕が振られる。


速い。


巨体に似合わない速度。


「……っ!」


ギリギリで回避。


そのまま懐へ入る。


剣を振るう。


ガキンッ!!


胸部に当たる。


だが――


砕けない。


「耐性がある……!」


アルシェリアが叫ぶ。


「六属性を分散してる!」


フレイが横から斬り込む。


「面倒な仕組みだな!」


フランソワーズも続く。


連続攻撃。


だが決定打にならない。


グラディオが腕を組む。


「無駄だ」


「それは完成に近い」


「六属性を均等に分散し、耐性を持たせている」


エイドが前に出る。


「だが均等は弱点になる」


グラディオが視線を向ける。


「管理者か」


エイドは淡々と続ける。


「均衡は崩れやすい」


「一点に集中すれば、崩壊する」


クレージュが理解する。


「一点突破……」


アルシェリアが言う。


「でも六属性じゃ足りない!」


その瞬間。


クレージュはアルシェリアを見る。


アルシェリアも気づく。


「……共鳴」


短い言葉。


クレージュは踏み込む。


アルシェリアも一歩前へ。


二人の距離が縮まる。


その瞬間。


空気が震えた。


灰色兵器の動きがわずかに鈍る。


「来てる……!」


アルシェリアが言う。


クレージュは剣を構える。


六属性を無理に使わない。


ただ流れを整える。


そして――


一点に集中。


「ここだ!」


胸部へ突き込む。


その瞬間。


バチッ


見えない何かが弾けた。


灰色兵器の魔石が、一瞬だけ揺らぐ。


フレイが叫ぶ。


「今だ!」


フランソワーズが踏み込む。


全力の一閃。


ドンッ!!


衝撃。


胸部の魔石に亀裂が入る。


グラディオの目が細くなる。


「ほう……」


灰色兵器が後退する。


魔力が不安定になる。


「……共鳴か」


グラディオは静かに言った。


「やはり揃うと厄介だな」


手を上げる。


「ここまでだ」


灰色兵器が動きを止める。


「撤退する」


フレイが舌打ちする。


「逃がすか!」


だがエイドが止める。


「深追いするな」


グラディオは最後にクレージュを見る。


「原初の器」


「いずれ回収する」


アルシェリアにも視線を向ける。


「欠片もな」


灰色の光。


転移。


次の瞬間、巨体もろとも姿が消えた。


静寂。


風だけが残る。


フランソワーズが息を吐く。


「……強い」


フレイが笑う。


「久しぶりに手応えのある相手だな」


アーニャが言う。


「でも勝てるにゃ」


アルシェリアはクレージュを見る。


「今の……」


クレージュも同じことを思っていた。


「分からない」


だが一つだけ確かだ。


二人が近づいたとき。


灰色は揺らいだ。


エイドが言う。


「確定したな」


全員が彼を見る。


「灰色教団の弱点は」


「お前たちだ」


クレージュとアルシェリア。


二人の存在そのもの。


戦いは、さらに大きくなる。

お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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