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5-9「追われる知識」

夜の森は、静まり返っていた。


焚き火はすでに消され、

一行はそれぞれ浅い休息に入っている。


だが完全に眠っている者はいない。


ここは敵地に近い。


誰もが分かっていた。


最初に動いたのは、アーニャだった。


枝の上で目を細める。


「……来たにゃ」


小さく、しかし確実な声。


フランソワーズが即座に立ち上がる。


「数は」


「三……いや、四にゃ」


「速い」


フレイが剣を手に取る。


「正面から来る気か」


エイドは目を閉じたまま言う。


「偵察ではないぞ」


「回収だ」


クレージュの視線がアルシェリアに向く。


アルシェリアはすでに立ち上がっていた。


「……予想通りだね」


その声に、わずかな緊張が混じる。


フランソワーズが前に出る。


「クレージュ」


「下がれ」


クレージュは首を振る。


「いや」


「俺も出るよ」


フレイが横に並ぶ。


「無理に前に出るな」


「今回は守る戦いだ」


クレージュは頷いた。


その言葉の意味を理解している。


守る。


対象は――


アルシェリア。


次の瞬間。


森の奥から影が飛び出した。


黒衣。


灰色の紋章。


灰色教団。


一人が低く言う。


「発見」


「対象確認」


その視線は、アルシェリアに向いていた。


「回収を開始する」


フランソワーズが一歩踏み出す。


「ここから先は通さない」


剣を抜く。


空気が一瞬で張り詰める。


敵は四人。


動きに無駄がない。


訓練された戦闘員。


「排除」


短い言葉と同時に、二人が突っ込んできた。


速い。


フランソワーズが迎え撃つ。


金属音。


鋭い剣撃が交差する。


「ちっ……!」


相手も強い。


ただの雑兵ではない。


フレイも横から斬り込む。


「こっちは任せろ!」


残り二人が動く。


一人はフレイへ。


もう一人は――


アルシェリアへ。


クレージュが反応する。


「させるか!」


風属性。


一気に踏み込む。


敵の進路を遮る。


「六彩確認」


敵が言う。


「優先度変更」


クレージュの目が細くなる。


「やっぱりか」


狙いは二人。


アルシェリアと、自分。


敵が手をかざす。


灰色の魔力が走る。


「……っ!」


空気が歪む。


六属性が乱される。


(またこれか)


クレージュは踏み込む。


今度は違う。


無理に押さない。


整える。


風を使い、流れを均す。


灰色の干渉がわずかに弱まる。


「対応しているのか……?」


敵が驚く。


その隙。


クレージュが剣を振るう。


ガキンッ!


防がれる。


だが体勢が崩れる。


「今だ!」


フランソワーズが踏み込む。


一閃。


敵の腕を弾く。


フレイが笑う。


「連携は悪くねえな!」


だが――


後方。


アルシェリアの足元に、灰色の陣が展開される。


「っ……!」


アルシェリアが動けない。


拘束術式。


敵の一人が低く言う。


「確保」


クレージュの視界が狭まる。


(まずい)


距離がある。


間に合わない。


その瞬間。


アルシェリアがクレージュを見た。


「……来る」


何が?


考える前に、体が動いた。


クレージュは踏み込む。


魔力がわずかに揺れる。


アルシェリアとの距離が縮まる。


その瞬間。


バチッ


空気が弾けた。


灰色の術式が――


崩れた。


敵が驚く。


「何だ……!?」


アルシェリアも目を見開く。


「やっぱり……」


クレージュ自身も驚いていた。


(今の……)


分からない。


だが。


灰色が効かない。


その隙。


クレージュがアルシェリアの前に立つ。


「下がれ」


短く言う。


アルシェリアは一瞬だけ黙る。


それから小さく言った。


「……了解」


敵が後退する。


一瞬で判断した。


「撤退」


「目的未達」


「次に備える」


フランソワーズが追おうとする。


「待て!」


だがエイドが止めた。


「追うな」


灰色の煙。


転移術式。


次の瞬間、敵の姿は消えていた。


森に静寂が戻る。


アーニャが木から降りる。


「逃げたにゃ」


フレイが剣を収める。


「判断が早い」


フランソワーズは息を吐いた。


「目的はアルシェリア」


「そして……」


クレージュを見る。


「お前だな」


クレージュは頷く。


アルシェリアがゆっくり近づく。


その目は、先ほどとは違っていた。


研究者の目ではない。


少しだけ、違う感情が混じっている。


「……今の」


クレージュが言う。


「分からない」


アルシェリアは首を振る。


「分かる」


はっきり言った。


「共鳴」


エイドも言う。


「原初の干渉だ」


フレイがため息をつく。


「ますます面倒な力だな」


アルシェリアはクレージュを見た。


そして静かに言う。


「あなたがいると」


「灰色は崩れる」


一瞬、沈黙。


クレージュは剣を握った。


敵は来る。


確実に。


そして次は、もっと強い。


だが。


守るべきものも、はっきりした。


アルシェリアは小さく呟いた。


「……守られた」


その言葉に、クレージュは何も返さなかった。


ただ前を見た。


戦いはまだ始まったばかりだ。

お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

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