表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/132

4-30「守りたい人」

夜の王都は静かだった。


昼間の騒ぎが嘘のように、街は落ち着きを取り戻している。


だが王城の一角。


小さな庭園には灯りが残っていた。


クレージュは石のベンチに座っている。


今日の出来事が頭を離れない。


灰色術式。


触媒。


そして――


「世界規模案件」


エイドの言葉。


自分が中心にいる。


それが、少し怖い。


「……ここにいたのね」


振り向く。


リシェル。


白いドレス姿。


王女としてではなく、一人の少女として。


クレージュは立ち上がる。


「すみません」


「急に呼び出して」


リシェルは首を振る。


「いいの」


「私も話したかった」


二人は庭園を歩く。


夜風が静かに吹く。


しばらく沈黙が続く。


先に口を開いたのはリシェルだった。


「怖かった」


クレージュが振り向く。


リシェルは空を見ている。


「今日の灰色」


「あなたが巻き込まれるのが」


声は小さい。


王女ではない。


ただの少女。


クレージュは少し驚く。


「俺は大丈夫です」


リシェルは首を振る。


「違う」


「あなたはいつもそう言う」


彼女の瞳が揺れる。


「でも」


「今日分かった」


「あなたは狙われている」


風が止まる。


クレージュは何も言えない。


リシェルは続ける。


「王女として」


「私は王国を守る」


「でも」


一歩近づく。


距離が縮まる。


「一人の人間として」


「あなたも守りたい」


クレージュの胸が少し熱くなる。


「……ありがとうございます」


だが言葉がそれしか出ない。


リシェルは少し笑う。


「真面目ね」


「でも」


「それがあなたらしい」


少し沈黙。


遠くで鐘が鳴る。


王都の夜の鐘。


リシェルは小さく息を吸う。


「もし」


「あなたが王国を離れることになったら」


クレージュは驚く。


「離れません」


「まだ分からない」


リシェルは言う。


「灰色教団」


「管理者」


「戦争」


「何が起きるか分からない」


彼女は真っ直ぐクレージュを見る。


「それでも」


「覚えていて」


「私はあなたの味方」


クレージュの心が揺れる。


今まで戦いばかりだった。


でも今、はっきり分かる。


守りたいものがある。


それは王国でも使命でもない。


目の前にいる少女。


「……リシェル」


名前を呼ぶ。


初めて。


リシェルの目が少し大きくなる。


クレージュは言う。


「俺」


「逃げません」


「灰色教団も」


「世界も」


「全部止めます」


リシェルは微笑む。


「知ってる」


「あなたはそういう人」


夜風が吹く。


二人の距離は少し近い。


まだ触れてはいない。


でも、確かに近づいている。


現実はここで終わらない。


灰色教団。


六彩触媒。


王都危機。


そして――


守りたい人。


むしろ…

これからが本当の戦いとなる。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次回からは第五章となります。

お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ