4-24「封じられた回路」
王都オベールロワイヤルの地下は、広い。
水路、倉庫、古い避難通路。
そして――
クレージュたちは新しい何者かと出会う。
王都オベールロワイヤルの地下は、広い。
水路、倉庫、古い避難通路。
そして――忘れられた構造物。
「この先は、戦争期の封鎖区画だ」
魔導院長が灯りの魔石を掲げる。
クレージュ、フレイ、フランソワーズ、アーニャ。
少数精鋭での調査だ。
灰色の残滓は、地下へと向かっていた。
石壁に刻まれた紋様が現れる。
薄く、だが確かに。
「……これ」
クレージュの声が低くなる。
六属性の流れに似ている。
だが、歪んでいる。
魔導院長が壁を撫でる。
「大陸戦争期の術式刻印だ」
「封印指定第一級」
フランソワーズが眉をひそめる。
「なぜ王都地下に」
「戦時中は、王都が最前線だった」
院長は続ける。
「当時、六属性を“人工的に再現する理論”が研究された」
空気が凍る。
「再現……?」
クレージュがゆっくりと振り向く。
「六彩の前身だ」
院長は断言する。
「だが完成せず、暴走事故が多発」
「結果、理論は封印された」
石床に淡い灰色の痕跡が走っている。
「倉庫街と同じ流れだ」
アーニャがしゃがみ込む。
「匂いが繋がってるにゃ」
クレージュは目を閉じる。
風を使う。
微細な魔力の流れが、壁の奥へ続いている。
「……まだ生きてる」
「封印は解かれていない」
「でも」
壁の奥から、わずかな脈動。
「再接続されてる」
フレイが低く呟く。
「誰かが掘り起こしたな」
魔導院長の顔が険しくなる。
「封印解除は王家許可が必要だ」
「つまり内部犯ではない」
「もっと古い系譜の知識だ」
クレージュの胸が重くなる。
(六彩の再現……)
敵は、模倣している。
だが完成していない。
だから“集めている”。
その時。
壁の刻印が、淡く光る。
灰色。
一瞬だけ。
全員が武器を構える。
だが爆発はない。
脈動が止まる。
「共鳴した」
クレージュが息を吐く。
「俺に反応してる」
沈黙。
魔導院長が静かに言う。
「六彩は“完成形”だ」
「この回路は“未完成の模倣”」
フランソワーズがクレージュを見る。
「つまり、あなたは鍵」
重い言葉。
クレージュは拳を握る。
「違います」
全員が見る。
「俺は鍵じゃない」
「封印側です」
静かな宣言。
フレイがわずかに笑う。
「言うようになったな」
だが事実は変わらない。
灰色術式は、
六彩理論を元に再構築されている。
つまり。
敵は――
六彩の“構造”を知っている。
それは偶然ではない。
魔導院長が低く言う。
「この封印、単独犯では扱えん」
「組織だ」
アーニャが耳を動かす。
「上、誰か来る」
足音。
重い鎧の音ではない。
軽い。
そして規則的。
地下通路の奥から、黒衣の影が現れる。
顔は覆面。
だが刻印は見える。
灰色の紋章。
「……やはり嗅ぎつけたか」
低い声。
クレージュの目が細くなる。
「実行犯か」
「実験観測者だ」
男は言う。
「六彩は完成形」
「だが模倣は可能だ」
空気が震える。
灰色は事故ではない。
研究だ。
組織だ。
そして…
六彩は、
奪われる対象になりつつある。




