表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
212/217

8-10「戻る場所」

 視界が、ゆっくりと戻ってくる。


 ぼやけた光。


 揺れる輪郭。


 重たい身体。


「……っ」


 喉が、ひどく乾いていた。


「起きた?」


 すぐ近くから、声。


 フランソワ。


 その声に、現実が繋がる。


「……俺……」


 言葉が続かない。


 記憶は、ある。


 全部。


 “あの状態”のことも。


 何をしようとしたかも——


 はっきりと。


「……最悪だ」


 絞り出すように呟く。


「仲間に……剣向けた……」


 沈黙。


 責められてもおかしくない。


 むしろ——


 責められるべきだ。


 そう思った、その時。


「バーカ」


 軽い声。


 フレイだった。


「な……」


「ちゃんと止まったじゃねえか」


 肩をすくめる。


 いつも通りの調子で。


「止まってねえよ。あれは……」


「止めただろ」


 食い気味に言う。


「最後、お前戻ってきたじゃん」


 まっすぐな視線。


 逃げ場がない。


「……」


 言葉が詰まる。


「俺ら全員、ピンピンしてる」


 エイドが横から入る。


「結果オーライってやつだ」


「いや、それは雑すぎるでしょ……」


 マリアが苦笑する。


 でも、その目は優しい。


「でも、本当に無事でよかった……」


 小さく息を吐く。


 緊張が解けたように。


「……すまん」


 クレージュは、頭を下げる。


 短く。


 だが、はっきりと。


「怖かったろ」


 沈黙のあとに、付け加える。


 その言葉に。


 一瞬だけ、空気が止まる。


 正直すぎるからだ。


 だが——


「まあな」


 フレイが笑う。


「普通にビビった」


「否定はしません」


 フランソワも淡々と頷く。


「ですが」


 一歩、近づく。


「それでも、あなたに任せたのは私たちです」


 視線が交わる。


「責任は共有です」


 静かな、強い言葉。


「……重いな、それ」


 クレージュが苦笑する。


「そういうものです」


 即答。


 逃がさない。


 でも——


 突き放さない。


「だからさ」


 フレイが背を向ける。


「次はもっとマシな使い方しろよ、その力」


 軽く手を振る。


「暴走前提じゃ困る」


「……善処する」


 クレージュが小さく答える。


 その顔は、少しだけ楽になっていた。


 空を見上げる。


 さっきまでの張り詰めた空気が嘘みたいに、静かだ。


(……あれは)


 思い出す。


 あの“声”。


 あの“精度”。


 あの“冷たさ”。


 確かに強い。


 だが——


(あれに任せきるのは)


 危険すぎる。


 わかってしまった。


 だから。


 選ぶしかない。


 使うのか。


 使われるのか。


 その境界を。


「……次は」


 小さく呟く。


「ちゃんと、握る」


 自分の意思で。


 その力を。


 ——物語は、次の段階へ進む。

お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ