↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
175/246

7-43「本体からの干渉」

 風が、止まった。


 さっきまで確かに吹いていたはずのそれが、不自然なほどにぴたりと止む。


 木々のざわめきも消える。


 鳥の声もない。


 音が——消えた。


「……なんだ?」


 フレイが周囲を見回す。


 誰も答えない。


 いや、答えられない。


 この静けさは、ただの無音じゃない。


 “作られている”。


 そんな感覚が、肌にまとわりつく。


「——来る」


 クレージュが、低く呟いた。


 次の瞬間。


 視界が、揺らいだ。


 ぐにゃりと、世界が歪む。


「っ!?」


 リシェルが息を呑む。


 足元の地面が、確かにそこにあるのに、距離感が狂う。


 遠いのか近いのか、分からない。


「空間……じゃない……?」


 ティロが眉をひそめる。


「違う。これは——」


 クレージュの言葉が、途中で止まる。


 理由は単純だった。


 “声”が、聞こえたからだ。


 頭の中に、直接。


『——観測対象、認識』


 機械のようで、しかし完全に無機質でもない声。


 感情がないわけじゃない。


 ただ——こちらと同じ“尺度”ではない。


「なっ……!」


 フレイが思わず後ずさる。


「今の……聞こえたか?」


「……ああ」


 エイドが短く答える。


 全員、同じものを聞いている。


 間違いない。


 幻覚じゃない。


『複数存在、確認』


『反応、適合』


『——選別を開始する』


 その言葉と同時に。


 空間が、裂けた。


 今までの“裂け目”とは違う。


 もっと滑らかで、もっと正確な——“開かれ方”。


 そこから現れたのは、“それ”ではなかった。


 形が、違う。


 より“人”に近い。


 だが、その目には——何も宿っていない。


「……増えた、のか?」


 フレイの声が震える。


「いや……違う」


 クレージュは、すぐに否定した。


「これは——“段階が上がってる”」


「段階……?」


「さっきのが“観測用”だとしたら、これは——」


 言い切る前に。


 “それ”が、動いた。


 消えたわけじゃない。


 ただ——距離という概念を無視したように、目の前に現れる。


「速——」


 言葉が間に合わない。


 クレージュは反射で魔力を展開する。


 ぶつかる。


 だが——


「っ!?」


 今度は、弾けなかった。


 受け止めたはずの衝撃が、“内部”に侵入してくる。


 防御をすり抜けるような、異質な感触。


「なに……これ……!」


 腕が、重い。


 力が抜ける。


 ただの打撃じゃない。


 “干渉されている”。


『抵抗、確認』


『有意個体、優先対象に設定』


 その声が、再び響く。


 今度は——はっきりと、クレージュに向けられていた。


 視線が合う。


 空虚なはずの“目”が、確かにこちらを捉える。


「……来いよ」


 クレージュが、低く言った。


 怖くないわけがない。


 だが、それ以上に——


 ここで退けば、終わると分かっている。


「俺が相手だ」


 その一歩が。


 戦いじゃない、“対話”の始まりだった。

お読みいただきありがとうございます。

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。