6-21「届かない距離」
境界層。
世界の外側。
その中心へ――
三人は、踏み込んでいた。
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「――排除」
使徒が動く。
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空間ごと押し潰すような一撃。
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クレージュが剣を構える。
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三点干渉。
発動。
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ドクンッ!!!
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だが――
重い。
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(さっきより……!)
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使徒が“適応”している。
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ギィィィン!!!
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剣がぶつかる。
だが、押し返される。
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「くっ……!」
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リシェルが叫ぶ。
「支えます!」
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光が流れ込む。
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アルシェリアも続く。
「補強」
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だが――
足りない。
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「……止まらない」
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使徒の圧が、全てを上回る。
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クレージュの足が後ろに滑る。
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(このままじゃ……!)
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核まで、あとわずか。
見えている。
届く距離。
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だが。
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“届かない”。
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たったそれだけの差。
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「……くそっ!!」
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クレージュが叫ぶ。
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その瞬間。
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“何か”が引っかかる。
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(なんでだ……)
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(何が足りない……)
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力はある。
流れもある。
タイミングも合っている。
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それなのに。
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“押し切れない”。
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エイドの声が響く。
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「見誤るな」
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短い一言。
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クレージュの目が細くなる。
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「何を……!」
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「力じゃない」
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一瞬の間。
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「“向き”だ」
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意味が分からない。
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だが。
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リシェルが小さく呟く。
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「……流れが、逆です」
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クレージュの思考が止まる。
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(逆……?)
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アルシェリアが言う。
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「押すな」
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「“通せ”」
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その言葉で。
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全てが繋がる。
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(……そうか)
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今までの戦いは。
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“ぶつけていた”。
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だがここは違う。
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“流れの中”。
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なら。
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(合わせる……!)
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クレージュの目が変わる。
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踏み込む。
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だが今度は――
力を込めない。
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使徒の動きに合わせる。
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流れに乗る。
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「……っ!」
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一瞬。
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世界が静止する。
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その瞬間。
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クレージュの剣が――
“すり抜ける”。
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「……通った」
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防御を越えた。
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使徒の目がわずかに揺れる。
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「……異常」
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クレージュが叫ぶ。
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「今だ!!」
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リシェルとアルシェリアが同時に反応する。
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光と灰色が流れる。
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三点干渉。
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今度は。
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“押さない”。
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“流す”。
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ドクンッ……
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静かに。
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だが深く。
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繋がる。
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クレージュの身体が軽くなる。
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(いける……!)
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そのまま。
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一気に踏み込む。
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使徒の横をすり抜ける。
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核へ。
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「――っ!!」
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あと一歩。
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手が届く。
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その瞬間。
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使徒が振り向く。
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「――適応完了」
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速い。
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今までで最速。
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「間に合わな――」
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だが。
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リシェルが叫ぶ。
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「行って!!」
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光が爆発する。
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視界が白く染まる。
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アルシェリアが支える。
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「止める」
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使徒の動きが一瞬止まる。
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その一瞬。
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クレージュが――
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手を伸ばす。
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核へ。
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触れる。
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ドクンッ
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世界が震える。
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全ての流れが、クレージュの中に流れ込む。
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「――ッ!!」
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情報。
圧。
存在。
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耐えきれない。
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だが。
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(掴め……!)
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離さない。
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その時。
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核の奥で。
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“何か”が目を開く。
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それは。
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クレージュと同じ。
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“何か”。
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(……これが)
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言葉にならない理解。
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そして。
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「――侵入確認」
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別の声。
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核の“向こう側”。
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何かが気づいた。
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ゾワッ
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全身が凍る。
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(……やばい)
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エイドの声が叫ぶ。
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「離れろ!!」
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だが。
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遅い。
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核が、反応する。
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光でも闇でもない“何か”が――
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溢れ出す。




