6-18「境界突破計画」
王城・作戦室。
厚い扉の向こうに、主要メンバーが集まっていた。
円卓の中央には――
歪みの観測図。
王都上空に残る“門の痕跡”が、淡く投影されている。
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王が口を開く。
「時間は多くない」
短い一言。
それで十分だった。
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エイドが前に出る。
「現状の整理から入る」
淡々と。
無駄はない。
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「門は“閉じていない”」
「遮断されているだけだ」
空間図が変化する。
層のように重なった構造。
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「向こう側とこちら側」
「完全に切れていない」
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クレージュが言う。
「つまり」
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「再接続は確実」
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即答。
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空気が重くなる。
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リシェルが静かに問う。
「どれくらいで」
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エイドは少しだけ考える。
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「最短で……数日」
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ざわめき。
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フランソワーズが低く言う。
「猶予はないな」
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王が頷く。
「だからこそだ」
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その一言で、全員の視線が集まる。
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「受けに回るな」
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間。
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「叩きに行く」
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宣言だった。
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クレージュの口元がわずかに歪む。
「いいですね」
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エイドが続ける。
「作戦は単純だ」
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図が変わる。
門の構造。
その中心。
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「“核”を破壊する」
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アルシェリアが補足する。
「門は単なる穴ではない」
「維持構造がある」
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「それを壊せば――」
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リシェルが言葉を継ぐ。
「完全に閉じる」
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エイドが頷く。
「その通り」
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だが。
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「問題はそこにどうやって行くかだ」
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沈黙。
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クレージュが言う。
「向こう側に入るしかないだろ」
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エイドが即答する。
「正解」
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フランソワーズが眉をひそめる。
「正気か?」
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エイドは肩をすくめる。
「最初から正気じゃない」
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フレイが笑う。
「違いねぇ」
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だが。
笑いはすぐに消える。
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王が問う。
「成功率は」
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エイドは少しだけ考える。
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「低い」
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正直すぎる答え。
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「だが」
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一瞬、クレージュを見る。
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「ゼロではない」
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それで十分だった。
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クレージュが前に出る。
「行きます」
即答。
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リシェルも続く。
「私も」
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フランソワーズが言う。
「当然、同行する」
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フレイは腕を組む。
少しだけ黙って。
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「……俺は外だな」
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クレージュが振り向く。
「いいのか」
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フレイはニヤリと笑う。
「中はお前らの領分だ」
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そして。
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「外は俺が守る」
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それで役割は決まった。
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エイドが整理する。
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「突入班は三人」
「クレージュ、リシェル、アルシェリア」
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「外部支援」
「フランソワーズ、フレイ、騎士団」
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「目的は一点」
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空間図の中心。
核が強調される。
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「門核の破壊」
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クレージュが頷く。
「シンプルでいい」
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アルシェリアが言う。
「だが難易度は高い」
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エイドが補足する。
「向こう側では」
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一瞬、間。
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「“常識”が通用しない」
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空気が張り詰める。
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リシェルが小さく呟く。
「……それでも」
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顔を上げる。
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「やります」
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迷いはない。
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王がゆっくりと頷く。
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「決定だ」
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その一言で。
全てが動き出す。
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会議が終わる。
人が散っていく。
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クレージュは一人、立ち止まる。
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(向こう側、か)
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未知。
危険。
そして――
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「……楽しみだな」
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小さく笑う。
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その横に、リシェルが立つ。
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「怖くないんですか?」
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クレージュは少し考えてから答える。
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「怖いよ」
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正直に。
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「でも」
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空を見る。
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「止めない方が、もっと怖い」
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リシェルは静かに頷く。
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「同じです」
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アルシェリアも加わる。
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「なら問題ない」
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三人が並ぶ。
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これが。
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“突入班”。
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その時。
エイドの声が最後に響く。
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「準備は急げ」
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短く。
確実に。
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「門は待ってくれない」
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その言葉で。
時間が動き出した。
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