6-16「使徒の圧」
煙が晴れる。
そこに立っていたのは――
“使徒”。
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人型。
だが人ではない。
灰色の外殻。
内部から脈打つ異質な光。
そして何より――
存在そのものが、重い。
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「――起動確認」
低い声。
感情はない。
ただの“機能”。
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次の瞬間。
消えた。
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「……っ!?」
クレージュの視界から、完全に消失。
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ドンッ!!!
衝撃。
騎士の一人が、何もない空間から叩き潰される。
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「速い……!」
フランソワーズが歯を食いしばる。
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エイドの声。
「違う」
「速いんじゃない」
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一瞬の間。
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「認識が追いついていない」
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クレージュの目が細くなる。
(見えてない……!)
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「全員散開!」
フランソワーズが叫ぶ。
だが。
遅い。
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使徒が再び現れる。
今度はクレージュの目の前。
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「――媒介」
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その一言で。
全身が凍る。
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クレージュは反射で剣を振るう。
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ギィィン!!!
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受けた。
だが――
押し切られる。
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ドンッ!!
地面に叩きつけられる。
息が詰まる。
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「くそっ……!」
立ち上がろうとする。
だが。
重い。
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(なんだ、この圧……!)
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アルシェリアが言う。
「存在密度が違う」
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リシェルが光を放つ。
「抑えます!」
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光が広がる。
空間を整える。
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一瞬だけ。
世界が“軽く”なる。
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「今です!」
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クレージュが跳ぶ。
アルシェリアと同時に。
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三点干渉。
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ドクンッ
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繋がる。
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六秒。
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今までで最長。
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「いける……!」
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使徒へ斬り込む。
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バチィィィン!!!
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直撃。
だが――
浅い。
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「装甲、健在」
使徒が淡々と言う。
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次の瞬間。
反撃。
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ドンッ!!!!
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クレージュが吹き飛ぶ。
今までとは桁が違う。
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壁を突き破る。
瓦礫の中に叩き込まれる。
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「がはっ……!」
血を吐く。
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三点干渉が切れる。
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「……無理だろ、これ」
フレイが低く言う。
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だが。
その目は死んでいない。
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エイドが告げる。
「目的を変えろ」
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クレージュが顔を上げる。
「……目的?」
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「倒すな」
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一瞬、思考が止まる。
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「止めろ」
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それが答えだった。
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(……止める?)
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クレージュの中で、何かが切り替わる。
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(勝つんじゃない)
(時間を稼ぐ)
(門を閉じる)
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全てが繋がる。
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「リシェル!」
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「はい!」
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「光で“上”を抑えろ!」
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リシェルが空を見上げる。
歪んだ門。
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「やります!」
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光が放たれる。
空間を固定するように。
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アルシェリアが言う。
「私は“下”」
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地面に灰色を流し込む。
侵食ではない。
固定。
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クレージュが理解する。
(上下で挟む……!)
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エイドが言う。
「お前は“繋げ”」
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媒介として。
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クレージュが立ち上がる。
血まみれ。
だが笑う。
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「やってやるよ」
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使徒が動く。
再び突進。
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「――排除」
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クレージュが踏み込む。
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三点干渉。
強制発動。
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ドクンッ!!!
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限界を超える。
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七秒。
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「維持しろォ!!」
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全力で繋ぐ。
光と灰色を。
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空間が軋む。
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門が揺れる。
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使徒が止まる。
初めて。
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「……干渉?」
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リシェルが叫ぶ。
「今です!!」
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アルシェリアが応じる。
「閉じる」
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クレージュが叫ぶ。
「押し込めェ!!」
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三つの力が一点に集まる。
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バチィィィィィン!!!!!!
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空間が歪む。
門が軋む。
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そして――
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ヒビが、閉じる。
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完全ではない。
だが。
確実に縮む。
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「……っ!」
使徒の動きが鈍る。
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「接続……不安定」
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クレージュが叫ぶ。
「今だァァァ!!」
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最後の力を振り絞る。
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ドォォォォン!!!!
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衝撃。
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光が弾ける。
灰色が崩れる。
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そして――
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門が、閉じた。
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完全に。
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静寂。
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使徒が止まる。
動かない。
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「……接続……遮断」
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そのまま――
崩れた。
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ズドンッ……
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完全停止。
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沈黙。
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クレージュがその場に崩れる。
「……はぁ……っ……」
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リシェルも膝をつく。
アルシェリアも静かに目を閉じる。
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フランソワーズが剣を下ろす。
「……やったのか」
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エイドが答える。
「一時的に、な」
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クレージュが空を見る。
もう歪みはない。
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だが。
分かっている。
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「……また来るな」
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エイドが即答する。
「確実に」
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それでも。
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今は。
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守った。
お読みいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに。




