6-15「門の向こう側」
空が、割れた。
完全ではない。
だが――
“繋がった”。
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ヒビの向こう。
それは空ではなかった。
光でも闇でもない。
色が、存在しない空間。
そこに――
“何か”がいた。
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形はない。
だが、確かに“いる”。
巨大。
あまりにも巨大。
王都全体が、まるで小石のように感じるほど。
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「……なんだ、あれ」
フレイの声が震える。
それを見たことがある者はいない。
理解できる者もいない。
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ただ一つ、分かること。
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“人の敵ではない”
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クレージュの背筋に冷たいものが走る。
(……違う)
今まで戦ってきたものとは。
存在の“格”が。
違う。
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その“何か”が――
動いた。
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ズ…………
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それだけで。
空間が歪む。
空気が軋む。
地面が悲鳴を上げる。
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リシェルが膝をつく。
「……っ……!」
光が乱れる。
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アルシェリアが言う。
「……干渉が強すぎる」
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エイドの声も低い。
「直視するな」
「存在そのものが情報を壊す」
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クレージュは歯を食いしばる。
(でも……)
(目を逸らすな)
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その瞬間。
“それ”の一部が、こちらに向く。
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「――」
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音はない。
だが。
“認識”された。
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ゾワッ
全身が凍る。
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「……見られた」
クレージュが呟く。
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次の瞬間。
灰色兵器が一斉に動く。
今までとは違う。
統率されている。
まるで――
“指示”を受けたかのように。
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「守れ!!」
フランソワーズが叫ぶ。
騎士たちが展開する。
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だが。
押される。
一気に。
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「くそっ……!」
フレイが剣を振るう。
だが数が違う。
質も違う。
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クレージュが前に出る。
「三点干渉!」
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三人が即座に反応する。
光。
灰色。
そして核。
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ドクンッ
流れが繋がる。
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今度は――
最初から安定している。
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「行ける!」
クレージュが踏み込む。
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五秒。
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限界を超えている。
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「まだ……!」
身体が軋む。
だが止まらない。
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連撃。
一体。
二体。
三体。
灰色兵器を次々と撃破する。
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だが。
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空の“それ”が、さらに近づく。
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ズズズズ……
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圧が増す。
世界そのものが押し潰されるような感覚。
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「……無理だ」
誰かが呟く。
騎士の一人。
膝をついている。
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「勝てるわけがない……」
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その空気。
広がりかける絶望。
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その時。
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「立て」
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低い声。
フレイだった。
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「まだ終わってねぇ」
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クレージュも叫ぶ。
「ここで折れるな!!」
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リシェルが光を強める。
「まだ守れます!」
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アルシェリアが言う。
「来る」
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その瞬間。
“それ”の一部が、さらに裂ける。
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そして――
“何か”が落ちてくる。
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ズドォォォォン!!!!
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王都の中心に、激突。
衝撃波。
建物が吹き飛ぶ。
地面が割れる。
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煙の中。
それが、立ち上がる。
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人型。
だが――
人ではない。
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灰色。
だが今までとは違う。
より濃く。
より重い。
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「……あれが」
クレージュの声が低くなる。
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エイドが告げる。
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「“使徒”だ」
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その一言で。
全ての意味が変わる。
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使徒が、ゆっくりと顔を上げる。
目が光る。
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「――接続、完了」
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声。
明確な意志。
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クレージュが剣を握る。
「……上等だ」
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震えはない。
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絶望的な相手でも。
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止める。
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ここで。




