6-12「三つの流れ」
王城・訓練区画。
普段は騎士たちが剣を振るう場所。
だが今は――
異様な空気に包まれていた。
⸻
「もう一度いく」
クレージュが言う。
目の前にはリシェル。
その隣に、アルシェリア。
三人が並ぶ。
⸻
フランソワーズとフレイは少し離れて見ている。
「……無茶してるな」
フレイが呟く。
フランソワーズも頷く。
「だが、必要だ」
⸻
クレージュが息を整える。
「合わせるぞ」
リシェルが頷く。
「はい」
アルシェリアも静かに応える。
「来る」
⸻
三人が同時に魔力を流す。
光。
灰色。
そして――
クレージュの“核”。
⸻
ドクンッ
空気が震える。
流れが繋がる。
だが――
次の瞬間。
バチッ!!
弾けた。
「ぐっ……!」
クレージュがよろめく。
リシェルも一歩下がる。
アルシェリアが眉をひそめる。
「……またズレた」
⸻
エイドの声が響く。
「原因は単純だ」
「出力が合っていない」
クレージュが舌打ちする。
「そんなの分かってる」
「でも合わせきれない」
⸻
リシェルが言う。
「私が強すぎるんです」
フレイが笑う。
「自覚あるのはいいことだな」
⸻
アルシェリアが補足する。
「違う」
「強さの問題ではない」
「“質”が違う」
⸻
クレージュが眉を寄せる。
「質?」
エイドが答える。
「光は“整流”」
「灰色は“侵食”」
「そしてお前は――」
一瞬、言葉を切る。
⸻
「“媒介”だ」
⸻
クレージュの目がわずかに開く。
(媒介……?)
⸻
「二つを繋ぐ役割」
「だが今は」
「流されているだけだ」
核心だった。
⸻
フレイが腕を組む。
「つまり?」
エイドが言う。
「主導権を握れ」
⸻
クレージュは黙る。
ゆっくりと目を閉じる。
(流されてる……)
確かにそうだ。
今までは。
繋がっただけ。
偶然。
⸻
「もう一回だ」
目を開く。
今度は違う。
⸻
三人が再び構える。
リシェルが光を練る。
アルシェリアが灰色を解放する。
⸻
クレージュは――
“待つ”。
⸻
流れが来る。
光。
灰色。
ぶつかる。
弾ける。
その直前。
⸻
(ここだ)
⸻
手を伸ばす。
掴む。
無理やりではない。
自然に。
流れの“中心”を。
⸻
ドクンッ
今度は違う。
弾けない。
繋がる。
⸻
「……来た」
クレージュが呟く。
リシェルの目が開く。
「安定してます……!」
アルシェリアも頷く。
「成功」
⸻
だが。
次の瞬間。
グラッ
クレージュの身体が揺れる。
「……っ!」
維持できない。
⸻
バチィン!!
強制的に切れる。
クレージュが膝をつく。
「はぁ……っ……!」
息が荒い。
汗が滴る。
⸻
エイドが淡々と言う。
「今ので三秒」
「戦闘には短い」
クレージュが苦笑する。
「分かってる」
⸻
フランソワーズが言う。
「だが」
「三秒あれば十分な場面もある」
フレイも頷く。
「要は使い方だ」
⸻
リシェルが心配そうに言う。
「大丈夫ですか?」
クレージュは立ち上がる。
まだ震えている。
だが――
笑う。
「前よりはな」
⸻
アルシェリアが言う。
「あと一歩」
エイドも続ける。
「だが、その一歩が遠い」
⸻
クレージュは空を見上げる。
(足りない)
出力じゃない。
技術でもない。
⸻
(覚悟か……?)
⸻
その時。
フレイがぽつりと言う。
「実戦でしか越えられねぇ壁だな」
クレージュが振り向く。
フレイはニヤリと笑う。
「安心しろ」
「すぐ来る」
⸻
その言葉の直後。
ドンッ……
遠くで、鈍い振動。
全員が止まる。
⸻
エイドの声が低くなる。
「……来た」
⸻
クレージュの目が変わる。
(早すぎるだろ……)
⸻
リシェルも息を呑む。
フランソワーズが即座に剣を取る。
「配置に戻るぞ!」
⸻
クレージュは剣を握る。
震えは、もうない。
⸻
「……試すしかないな」
⸻
未完成の力。
三秒の奇跡。
それでも――
戦う




