6-9「未完成の覚醒」
光が、暴れていた。
リシェルの身体から溢れ出す純白の魔力。
制御を失いかけている。
「……っ……!」
膝をつきながらも、崩れない。
その意思だけで、踏みとどまっている。
⸻
クレージュはその前に立つ。
手を伸ばす。
「リシェル!」
彼女の目が、わずかに開く。
苦しみの中でも。
確かに意識はある。
「……やります」
小さく。
だが、はっきりと。
⸻
アルシェリアが言う。
「繋ぐ」
「全部」
エイドの声が重なる。
「制御は任せるな」
「流れに乗れ」
クレージュは息を吸う。
(流れ……)
(感じろ)
目を閉じる。
⸻
見える。
魔力の流れ。
リシェルの光。
アルシェリアの灰色。
そして――
自分の中にある“何か”。
それはまだ形になっていない。
だが確かにある。
中心。
核。
(これが……)
(俺の力)
⸻
「――今だ」
アルシェリアの声。
クレージュが目を開く。
リシェルの手を掴む。
その瞬間。
ドクンッ
三つの力が、一気に流れ込む。
「――ッ!!」
衝撃。
意識が揺れる。
視界が白く弾ける。
⸻
グラディオがそれを見ている。
「……興味深い」
だが動かない。
観察している。
あえて。
「どこまで届くか」
試すように。
⸻
クレージュの中で、何かが弾ける。
流れが繋がる。
今までとは違う。
無理やりではない。
自然に。
一直線に。
「……繋がった」
小さく呟く。
アルシェリアが応える。
「来た」
リシェルの光が安定する。
暴走が、収まる。
代わりに――
一点へと収束していく。
⸻
クレージュの手に。
光と灰色が重なる。
剣が――
変わる。
淡く輝く。
だがそれは。
まだ不完全。
揺らいでいる。
「……これが」
言いかけて。
グラディオが動く。
「十分だ」
一瞬で距離を詰める。
今度は全力。
殺す気だ。
⸻
クレージュの目が変わる。
(見える)
流れが。
動きが。
“来る位置”が。
踏み込む。
迎え撃つ。
⸻
バチィィィィィン!!!!!!
激突。
今までとは次元が違う。
衝撃が空間を揺らす。
床が割れる。
壁に亀裂。
王城が軋む。
⸻
「……!」
グラディオの目が、わずかに開く。
初めて。
完全に。
止められた。
⸻
クレージュが叫ぶ。
「これで――!」
剣を振り抜く。
三つの力を乗せて。
全てを込めて。
斬撃。
⸻
ズガァァァン!!!!!!
直撃。
グラディオの身体に――
初めて、亀裂が入る。
灰色の装甲が砕ける。
血が、わずかに飛ぶ。
⸻
静寂。
ほんの一瞬。
⸻
グラディオが後退する。
一歩。
二歩。
そして止まる。
その顔に浮かぶのは――
初めての感情。
「……なるほど」
低く。
静かに。
だが確かに。
「これは……想定外だ」
⸻
クレージュは息を荒げる。
膝が震える。
剣が揺れる。
(まだ……持たない)
分かっている。
この力は。
長く使えない。
未完成。
無理やり繋いだだけ。
⸻
アルシェリアが言う。
「限界が来る」
エイドも告げる。
「あと一撃」
「それが限度だ」
⸻
リシェルが立ち上がる。
まだふらついている。
だが。
光は消えていない。
「……いけます」
クレージュが振り向く。
「無理するな」
リシェルは首を振る。
「今しかないです」
その目に、迷いはない。
⸻
グラディオがゆっくりと構える。
砕けた装甲が、再生していく。
「良い」
「実に良い」
その声には、わずかな興奮が混じっている。
「ならば」
手を上げる。
灰色が収束する。
「ここで回収する」
⸻
クレージュが剣を構える。
アルシェリアが並ぶ。
リシェルが光を集める。
フランソワーズも立ち上がる。
「……まだ終わっていない」
⸻
四人。
対一。
最後の衝突へ。
⸻
その瞬間。
クレージュの中で、何かが囁く。
(まだだ)
(その先がある)
だが――
届かない。
まだ。
⸻
「行くぞ!!」
クレージュが叫ぶ。
全員が踏み込む。
そして――
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次回もお楽しみに。




