6-4「王都戦線」
王都オベールロワイヤルは、戦場と化していた。
南区画だけではない。
東、西、北――
各所で同時に爆発と煙が上がっている。
「複数確認! 灰色兵器、計五体以上!」
伝令の声が響く。
騎士団が出動し、市民の避難が進められている。
だが。
追いついていない。
「くそっ……!」
フレイが舌打ちする。
「数が多すぎる」
クレージュは周囲を見渡した。
(全部は無理だ)
一人では。
この規模は。
フランソワーズが即座に判断する。
「分かれる!」
「クレージュ、中央!」
「フレイは西!」
「アーニャは東を抑えろ!」
「了解にゃ!」
エイドが言う。
「俺は全体を監視する」
アルシェリアがクレージュを見る。
「私は一緒に行く」
クレージュは頷いた。
「頼む」
二人は中央へ駆け出す。
煙の中心。
最も被害が大きい場所。
そこに――
いた。
先ほどよりも、さらに巨大な灰色兵器。
装甲が増え、魔石の輝きも強い。
そして。
その上に立つ影。
「……やはり来たか」
低い声。
グラディオだった。
第三司祭。
前回とは違う。
明らかに“戦うための姿”だ。
「王都を選ぶとは」
クレージュが言う。
「ずいぶん大胆だな」
グラディオは答える。
「実験には最適だ」
その一言で、空気が冷える。
アルシェリアが前に出る。
「やめろ」
グラディオは視線を向ける。
「欠片か」
「ちょうどいい」
「同時に回収する」
クレージュが剣を構える。
「やってみろ」
次の瞬間。
灰色兵器が動いた。
これまでとは速度が違う。
重さも、圧も、桁違い。
「……速い!」
クレージュが踏み込む。
迎え撃つ。
剣をぶつける。
ドンッ!!
衝撃。
腕が痺れる。
「前より硬い……!」
アルシェリアが叫ぶ。
「強化されてる!」
グラディオが言う。
「当然だ」
「前回のデータは有効だった」
フレイの言葉が頭をよぎる。
(本気じゃなかった)
クレージュは歯を食いしばる。
灰色兵器が連続攻撃。
拳、蹴り、衝撃波。
街が削られていく。
「止める!」
クレージュが踏み込む。
だが――
押し切れない。
アルシェリアが言う。
「共鳴が必要!」
「分かってる!」
距離を詰める。
並ぶ。
その瞬間。
空気が震える。
だが――
不安定。
「……足りない」
アルシェリアが呟く。
「何が」
「干渉が強すぎる」
グラディオが冷静に言う。
「対策済みだ」
魔石が脈動する。
灰色が強制的に押し込まれる。
共鳴が乱れる。
クレージュの目が細くなる。
(崩されてる)
その時だった。
「――クレージュ!」
声が響く。
振り向く。
リシェルだった。
騎士に守られながら、前線まで来ている。
「なんで来たんですか!」
思わず叫ぶ。
リシェルははっきり言った。
「必要だから!」
その言葉に、一瞬だけ思考が止まる。
アルシェリアが気づく。
「……光」
リシェルの周囲に、淡い光が広がる。
純粋な魔力。
混ざりのない光属性。
エイドの声が響く。
「補助になる」
「流れを整える」
クレージュが理解する。
(足りなかったのは……)
「これだ!」
リシェルが両手をかざす。
光が広がる。
灰色の干渉を押し返す。
アルシェリアの欠片が安定する。
そして――
クレージュの中の流れが、繋がる。
「……来た」
小さく呟く。
空気が変わる。
今度は違う。
明確な一つの流れ。
グラディオの目が細くなる。
「……なるほど」
クレージュが踏み込む。
「これで終わりだ!」
アルシェリアと同時に。
リシェルの光を受けて。
三つの力が重なる。
剣を振るう。
バチィィン!!!
灰色の核が大きく揺らぐ。
フレイが遠くから叫ぶ。
「押し込め!」
フランソワーズも合流する。
「今だ!」
連携が重なる。
そして――
ドォォォン!!!
灰色兵器が大きく崩れた。
完全ではない。
だが。
確実に追い詰めた。
グラディオが後退する。
「……興味深い」
静かに言う。
「三点干渉か」
クレージュが構える。
「逃がさない」
だが。
グラディオはわずかに笑った。
「今日はここまでだ」
灰色の光。
転移。
姿が消える。
静寂。
王都に、少しだけ平穏が戻る。
クレージュは息を吐いた。
リシェルが近づく。
「大丈夫?」
クレージュは苦笑した。
「なんとか」
アルシェリアが小さく言う。
「……完成に近づいた」
エイドが結論を出す。
「次は来る」
クレージュは空を見上げた。
戦いは終わっていない。
むしろ――
ここからが本番だ。
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次回もお楽しみに。




