6-2「王宮会議」
王城の会議室は、異様な空気に包まれていた。
重厚な扉の向こう。
長い円卓を囲むのは、王国の中枢を担う者たち。
王族。
軍部。
魔導院。
そして――
その中心に立たされているのが、クレージュだった。
「報告は以上です」
フランソワーズが簡潔に告げる。
灰色研究所の破壊。
幹部との接触。
原初の共鳴。
すべてが語られた。
沈黙が落ちる。
やがて、一人の貴族が口を開いた。
「……信じ難いな」
低く、疑うような声。
「六属性の上に、もう一つ存在するなど」
魔導院の老学者が反論する。
「だが事実だ」
「複数の証言と観測結果が一致している」
別の男が言う。
「問題はそこではない」
視線がクレージュに向けられる。
「その力を持つ者が、ここにいるということだ」
空気が変わる。
重く、鋭く。
クレージュは何も言わない。
ただ真っ直ぐ立っている。
「……危険だな」
誰かが呟いた。
その一言で、空気が決定的に傾く。
リシェルが立ち上がる。
「違います」
強い声。
全員の視線が集まる。
「彼は王国を守るために戦いました」
「灰色教団を止めたのも、彼です」
貴族の男が冷ややかに言う。
「だからこそだ、王女殿下」
「その力が敵に渡ればどうなる?」
言葉が詰まる。
だが、リシェルは引かない。
「それでも」
「彼は――」
「感情で判断する場ではない」
軍部の男が遮った。
その声には、現実的な重さがあった。
「我々が考えるべきは」
「管理だ」
その言葉に、場が静まり返る。
クレージュの目がわずかに細くなる。
「管理……ですか」
初めて口を開く。
低い声。
だが、はっきりしていた。
軍部の男が頷く。
「そうだ」
「君の力は国家級だ」
「野放しにはできない」
フレイが笑った。
「ずいぶん偉そうだな」
場の空気が一瞬で張り詰める。
「誰に向かって言っている」
貴族が睨む。
フレイは肩をすくめた。
「事実だろ」
「こいつは命令で動くタイプじゃない」
フランソワーズも静かに言う。
「彼は独立した戦力だ」
「無理に縛れば、逆効果になる」
エイドが一歩前に出る。
「結論は単純だ」
全員が見る。
「使うか、敵に回すか」
その一言で、場が凍る。
クレージュは苦笑した。
「ずいぶん物騒ですね」
だがその目は笑っていない。
軍部の男が言う。
「選択してもらう」
「王国に従うか」
「それとも――」
言葉を切る。
だが意味は明確だった。
敵。
クレージュは少しだけ考えた。
それから言う。
「一つだけ」
静かに。
だが、強く。
「勘違いしないでください」
全員の視線が集まる。
「俺は、命令で戦ってるわけじゃない」
空気が揺れる。
「守りたいものがあるから戦ってるだけです」
リシェルの目がわずかに揺れる。
クレージュは続ける。
「それが王国と一致してるなら」
「協力します」
一瞬の間。
「でも」
はっきりと言った。
「縛られる気はない」
沈黙。
フレイがニヤリとする。
「いいねえ」
フランソワーズも目を細める。
エイドは何も言わない。
ただ、評価している。
軍部の男はしばらく黙っていた。
やがて言う。
「……いいだろう」
「現時点では協力関係とする」
完全な支配ではない。
だが、完全な自由でもない。
微妙な均衡。
会議が終わる。
人々が去っていく。
最後に残ったのは――
クレージュとリシェルだけだった。
「……ごめんなさい」
リシェルが小さく言う。
クレージュは首を振る。
「気にしてないです」
「むしろ分かりやすい」
リシェルは少しだけ笑った。
「そうね」
その時。
クレージュの胸の奥が、わずかにざわついた。
「……?」
アルシェリアも同時に顔を上げる。
「来る」
その一言。
次の瞬間。
王都の外で――
爆音が響いた。
「何……!?」
リシェルが振り向く。
窓の外。
遠くで、黒い煙が上がっている。
エイドが低く言う。
「……早すぎる」
クレージュは剣を握った。
灰色教団。
もう来ている。
王都に。
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