6-1「帰還」
王都オベールロワイヤルの城門が、ゆっくりと開いた。
朝の光が差し込む。
長い遠征を終えた一行は、静かにその門をくぐった。
街の空気は変わらない。
人々の声。商人の呼び声。
日常は、何事もなかったかのように続いている。
だが――
クレージュたちの中では、確実に何かが変わっていた。
「戻ってきたな」
フレイが軽く言う。
クレージュは王都を見上げた。
(……違う)
同じ場所のはずなのに、違って見える。
知ってしまったからだ。
灰色教団。
原初。
そして――
自分自身のこと。
フランソワーズが前に出る。
「まずは王宮へ報告だ」
「すでに連絡は入っている」
アーニャが伸びをする。
「やっとご飯にゃ〜」
フレイが笑う。
「その前に仕事だ」
エイドは何も言わない。
ただ王城を見ていた。
アルシェリアは、少しだけ足を止める。
「……ここが」
クレージュが言う。
「王都だ」
アルシェリアは小さく頷いた。
「……綺麗」
その言葉に、ほんの少しだけ救われた気がした。
その時。
城門の奥から、一人の影が駆けてくる。
白い髪が揺れる。
光のような存在。
「……クレージュ!」
リシェルだった。
息を切らしながら、一直線に走ってくる。
フランソワーズが小さく息を吐く。
「まったく……」
だが止めない。
リシェルはクレージュの前で立ち止まった。
言葉が出ない。
ただ見ている。
無事かどうか。
それだけを確認するように。
クレージュが言う。
「ただいま」
短い言葉。
リシェルは一瞬だけ目を閉じた。
それから――
「……おかえりなさい」
微笑んだ。
その表情に、すべてが詰まっていた。
だが。
その再会の裏で。
王城の上階。
一人の男が、静かにその光景を見下ろしていた。
「……あれが」
低い声。
「原初の器か」
その目は、冷たく鋭かった。
王都は、すでに動き始めている。
知らぬ間に。
確実に。
戦いの舞台は――
次の段階へと進んでいた。
新しいフェーズへと物語は移りました。
次回もお楽しみに。




