5-17「灰色兵器戦線」
研究室の奥から、重い振動が響いた。
ドン……ドン……
床がわずかに揺れる。
空気が張り詰める。
エイドが静かに言う。
「来るぞ」
次の瞬間。
壁の奥が砕けた。
轟音。
崩れ落ちる岩とともに現れたのは――
灰色兵器。
一体ではない。
二体。
さらにその後ろから、黒衣の戦闘員が流れ込んでくる。
「増援か……!」
フランソワーズが剣を構える。
フレイが笑う。
「派手になってきたな!」
アーニャが爪を鳴らす。
「全部倒せばいいにゃ!」
アルシェリアが前に出る。
その目は、もう迷っていない。
「……やる」
クレージュが頷く。
「頼む」
灰色兵器が同時に動いた。
一体が前進。
もう一体が側面へ回る。
連携している。
フランソワーズが即座に指示を出す。
「分断する!」
「フレイ、左!」
「アーニャ、側面!」
「クレージュは中央!」
全員が動く。
クレージュが中央へ踏み込む。
灰色兵器が拳を振り下ろす。
ドンッ!!
衝撃。
だが止まらない。
風をまとい、滑り込む。
フレイが横から斬りつける。
「こっちだ!」
敵の注意が分散する。
アーニャが背後へ。
「隙だらけにゃ!」
関節部へ連撃。
金属が軋む。
フランソワーズが正面から押さえる。
「動きを止める!」
完璧な連携。
だが――
まだ足りない。
灰色兵器の核は無傷。
アルシェリアが声を上げる。
「魔力が散ってる!」
「このままじゃ削りきれない!」
クレージュが理解する。
(集中……)
エイドが言う。
「一点に集めろ」
「お前が軸だ」
クレージュは踏み込む。
周囲の流れを感じる。
フレイの剣。
フランソワーズの動き。
アーニャの位置。
そして――
アルシェリア。
「……今!」
アルシェリアが前に出る。
両手をかざす。
淡い光。
六属性ではない。
澄んだ魔力。
原初の欠片。
空気が震える。
灰色の流れが、一瞬だけ歪む。
「崩れてる!」
クレージュが踏み込む。
全力。
一点集中。
剣を突き込む。
バチッ!!
灰色の魔石が揺らぐ。
フレイが叫ぶ。
「押し込め!」
フランソワーズが踏み込む。
「ここで終わらせる!」
アーニャが飛び込む。
「いくにゃ!」
三方向からの攻撃。
そして――
クレージュが決める。
ドンッ!!!
魔石が砕けた。
一体、崩壊。
だがもう一体が迫る。
横から突進。
「来るぞ!」
フレイが叫ぶ。
クレージュが振り向く。
間に合わない。
その瞬間。
アルシェリアが前に出た。
「止まれ」
短い言葉。
魔力が広がる。
灰色兵器の動きが、わずかに鈍る。
完全ではない。
だが。
一瞬で十分。
クレージュが滑り込む。
「これで!」
突き。
魔石にヒビ。
フランソワーズが重ねる。
「終わりだ!」
斬撃。
ドンッ!!
二体目も崩壊。
残った戦闘員たちが動揺する。
「撤退!」
「後退!」
灰色の煙。
転移術式。
一瞬で姿が消えた。
静寂。
壊れた兵器の残骸だけが残る。
フレイが息を吐く。
「……終わったか」
アーニャが笑う。
「楽勝にゃ!」
フランソワーズが剣を収める。
「連携は問題ない」
エイドが言う。
「予想以上だ」
アルシェリアは少しだけ息を乱していた。
だが、表情ははっきりしている。
クレージュが声をかける。
「大丈夫か」
アルシェリアは頷く。
「……平気」
少しだけ間を置いて言う。
「さっきの」
「ちゃんと繋がってた」
クレージュは笑った。
「だな」
エイドが静かに言う。
「確定した」
全員が見る。
「原初の器と欠片」
「この二つが揃えば」
「灰色は崩れる」
フレイが肩を回す。
「つまり最強コンビか」
アーニャが言う。
「強すぎにゃ」
フランソワーズが少しだけ目を細める。
「……だが狙われる」
その言葉に、全員が理解する。
敵はまだ終わっていない。
むしろ――
これからが本番。
クレージュは剣を握った。
守る。
壊す。
そして――進む。
アルシェリアが隣に立つ。
二人の距離は、もう自然だった。
灰色研究所の奥へ。
まだ、終わっていない。




