5-14「研究所」
夜の森。
気配は、確実に近づいていた。
枝を踏む音。
わずかな魔力の揺らぎ。
そして、あの独特の――灰色の気配。
アーニャが低く言う。
「数、多いにゃ」
フランソワーズが即座に判断する。
「戦闘は避ける」
フレイが眉を上げる。
「逃げるのか?」
「違う」
フランソワーズは首を振った。
「本拠地を探るのが先だ」
エイドも同意する。
「ここで消耗する意味はない」
クレージュは頷いた。
「……分かりました」
アルシェリアが静かに言う。
「この先にある」
全員が彼女を見る。
「何が」
「研究所」
アルシェリアは目を閉じる。
空気を感じ取るように。
「灰色の流れが集中してる」
「さっきの兵器とは違う」
「もっと……大きい」
フレイが口元を歪める。
「当たりを引いたか」
フランソワーズが即座に指示を出す。
「進路を変える」
「敵の追跡をかわしながら、本拠地へ接近する」
アーニャが頷く。
「任せるにゃ」
次の瞬間、一行は動いた。
正面には進まない。
森の斜面を使い、気配を散らしながら進む。
アーニャが先行し、
罠や敵の配置を探る。
フランソワーズが後方を抑え、
フレイが中衛で支える。
エイドは周囲の魔力を読み取り、
アルシェリアは“灰色の流れ”を追う。
そして――
クレージュは、その中心にいる。
動きながら、感じる。
流れ。
仲間の位置。
そして、灰色の歪み。
しばらく進んだ後。
森が開けた。
そこにあったのは――
巨大な施設だった。
岩壁をくり抜いて作られた構造。
外からは半分しか見えないが、
内部はかなり広い。
入口には警備。
灰色教団の戦闘員が配置されている。
さらに――
灰色兵器が一体、門の前に立っていた。
フレイが小さく呟く。
「本拠地ってやつか」
フランソワーズが低く言う。
「間違いない」
アルシェリアは少しだけ表情を固めた。
「……ここ」
「前線研究所」
エイドが続ける。
「重要拠点だな」
クレージュは施設を見つめた。
あの中で。
灰色の研究が続けられている。
誰かが、苦しんでいるかもしれない。
フランソワーズが振り返る。
「ここからは慎重にいく」
「正面突破は不可」
フレイが笑う。
「だろうな」
「じゃあどうする」
フランソワーズは地形を指さす。
「裏手」
「岩壁の上から侵入できる可能性がある」
アーニャがすぐに動く。
「見てくるにゃ」
音もなく、岩壁へと駆け上がる。
しばらくして戻ってきた。
「行けるにゃ」
「見張りも少ない」
フランソワーズが頷く。
「そこから入る」
エイドが付け加える。
「内部は複雑だ」
「迷えば終わりだ」
アルシェリアが言う。
「案内する」
クレージュが見る。
「覚えてるのか」
「構造は似てる」
アルシェリアは答えた。
「灰色教団は同じ設計を使う」
フレイが言う。
「便利なもんだ」
フランソワーズが最後に確認する。
「目的は三つ」
「情報の確保」
「研究の破壊」
「可能であれば捕虜の救出」
クレージュが頷く。
「了解」
フランソワーズの視線が鋭くなる。
「そして」
「絶対に無理はするな」
クレージュは少しだけ苦笑した。
「善処します」
フレイが肩を叩く。
「それでいい」
風が吹く。
灰色研究所が、目の前にある。
ここが――
敵の中心。
クレージュは剣を握った。
一歩間違えれば、戻れない。
だが。
止まる理由はない。
フランソワーズが言う。
「行くぞ」
一行は静かに動き出した。
岩壁を登り、
闇の中へと潜り込む。
灰色の核心へ。
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