月の落ちたる丘
本当はわかっている。
愛されたい、などと思うのも、大概にした方がいいってこと。
何もかも上手くいかない。
疲れているせいにして、また昨日からやり直せるなら、そうしたい。
でも多分、昨日からやり直したって同じことの繰り返しだ。
苦くかみ潰した後悔を、破片の散らばった床の上で吐き出しても、もう時は既に遅し。
確かにきっかけは向こうだったかもしれないがーーーそれに意地悪く応えて、煽ったのは自分だ。
私が悪いのか?多分悪いんだろう。
でもそれは向こうだって同じことのはず。
過失はいつだって50/50。
向こうの方が多くてこっちの方が少ないなんて都合のいいことはないのだ。
それでも上手くいかないのは、よく知っている。
片付けなければーーーでももう、それも疲れた。
そんなことを呟いても、何も解決しない。
だから呟く前に唇を引き結ぶしかない。
何も言わない、何も考えない。
やり過ごそう。
ひどくイライラするけれど、八つ当たりもやめよう。
もう嫌だ、と自分の中の誰かが言う。
別れましょう、とひとこと。
妙にすんなりとその言葉は出てきた。
彼は目を瞬かせ、なんで、と冷たい声で言った。
もう、ダメになってるじゃない、私達ーーー
なんで、なんて聞けるの?
呆気なく終わりを迎える。
私はただ、コーヒーショップの窓辺の椅子に腰かけ、外を眺めていただけで、もはやアルファベット表記のAから数字の1にまで成り下がった元恋人は、伝票も取らずに去っていった。
好きな時は何から何までしてあげた。
してあげたという表現は好きじゃないし、たしかに私が勝手にやっていた事だったけれど、そういえば彼にただの一度も奢ってもらったことなどなかったなと思い返して、喉元の笑いを噛み殺すのが大変だった。
苛立ちもするが、特別な感情は沸かない。
手切れ金と思えば、安いものだ。
今度は愛し愛される恋がしたいな、などとぼんやり考える。
愛すことをやめることはできないが、せめて愛されたい。
そんなことを思っていたら、目の奥に滲んでいた涙もすっかり干からびた。




