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04

ラーナお姉さんは驚いた顔をしてこちらを見た後柔らかく微笑む。うわ、美人が笑うとさらに美人になるな、前世は……こういう類の美人はみたことなかったからな。新鮮だなー。さて、ここで自問自答タイムだ、ここでラーナお姉さんと遊ぼうとしたらどうなる?答えは簡単だ、阻止される、誰に?そんなのも簡単なことだ、なにせその阻止がすでに始まっているからに他ならないのだから――――。


「そんなの…そんなの私が許しませんわよっ!」


お姉様の泣き声交じりの怒声が飛ぶ、やっぱりなぁ、と思いつつ振り返れば目に涙をたっぷりとためてこちらをキッと見据えるお姉様の姿。お兄様はなぜか母の所でなにやら話をしている、お姉様の隣ではエドゥワールもプルプルと震えながらこちらを見ている。これだから餓鬼どもは、すぐに泣きわめいて自分の意見を押し通そうとする。そしてもう1人、ラーナお姉さんと同じく晴天の真っ青な空と同じ色の少年、お兄様と同じくらいの年ごろだろうか、猫のようなアーモンド形の釣り目に赤い色がよく映える少年だ。たしかカルワナイト家の白髪のツインテール少女と、深海のごとく暗い蒼の頭髪の青年になにやら言われて不機嫌そうにしていた少年だったはず、はぁ……。

大人たちは様々な反応をしているがカルワナイト家のご夫人の形相がすごい東の方にある国の“キ”のごとくだ、たしかそんなお面があったような気がするが、今は置いておこう。アハトール家はわれ関せずの様子でツンとすましている。うちの家はまあ、お兄様と談笑中と言うか、なんというか、決して笑ってはいないけれど。


「その子は闇子ですのよっ!?もし、もしクロが闇子になってしまったら……わ、私、私」

「そうだぞ!ネクロアーシュ!そいつは呪われてるんだぞっ!」


チッ、これだから視野の狭い奴は嫌いなんだよ。内心舌打ちしたいのを抑えればくんっ、と髪の毛を引っ張られる感覚、おっと、ラーナお姉さんか

ラーナお姉さんの顔は悲しそうな色でいっぱいだった。ケンカしないで、って言いたそうだった。でもそれは無理だと思う、なにせ彼らは知らないのだ。闇子の本当のことを―――。


闇子は魔族の王、通称でいえば魔王だね。あぁ、別に種族が違うから仲が悪いってわけではないよ。それなりに仲良しだから王都にでも行けば魔族を見ることができると思う。まぁ、闇子はその魔王の妃候補なんだよ。

魔王は世襲制なんだけど……まぁ、子供を産むのに魔族を用いるわけにはいかないんだ、兄妹が結婚してはいけないように、魔王のように力の強いものが魔族と子を設けたりするとその子は生まれてすぐ無に還ってしまう。だから闇子という人間を作る、闇子となった人間は魔力が上がり強くなる、がそれは魔王からの恩恵なので魔物から好かれ、魔物が集まってきてしまうというわけだ……という研究中に殺された。クソが


まあ、この話が本当かどうか確かめるためにもぜひ仲良くなりたいのだが……それを阻止されそうになるとこちらとしても些か問題がある。うーむ、うまく説得できないものか、闇子の話をしてもいいんだけどどこでそんな話聞いたーってことになるからね。さてはて困った。


「なんだよ、なんでお前が姉さんと仲良くしようとしてるんだよっ、なんで、姉さんは俺じゃなくてお前に、あんな、笑顔っ、みせるんだよ!」

「……はい?」

「なんでだよ!なんでっ、なんでぇ、俺、ひっく、姉さん、がうぅ、好きなだけな、のにぃぃ」


なんだよ、シスコンかよコイツ。半ばあきれたような顔をしてラーナお姉さんを振り返れば心底驚いた顔をしている。そりゃそうか……私みたいに普段好き好きオーラ出してないもんね、コイツ

これには皆ポカーンっとなる。白髪のツインテール少女がまさにそれだ、目に涙をためている、だから泣くなよ。


「……私は」


ラーナお姉さんが口を開く、全員が一挙一動を見逃すまいとラーナお姉さんを凝視する。


「……私は貴方が大っ嫌いよ」


まあ、この一言で目の前のコイツが真っ白な灰になるんだけども。

ですよねー、いきなり好きだよとか言われても今まで憎たらしかった愛されてたやつに言われても困りますよねー。

ああ、哀れや哀れ……。


「ふん、やはりシュミントン家は気狂いが多いな」

「……あら嫌だわお兄様ったら、ぶちかまして差し上げましょうか?」


なにやら不穏な会話が聞こえて思わずそちらに目をやると呆然とした顔のお兄様とアハトール家の当主のこめかみに拳銃を突き付けている母、そしてその母の心臓あたりにあるのは短刀らしき刃物だ。

父はまたか……とでも言いたげな顔でやれやれとため息をつきお兄様の目を手で覆う。こっちを最優先にしてくれません?

えー…仲悪いの?兄妹だよね?不穏だ、どちらかがどちらかを殺してしまいそうになる雰囲気の中、子供たちだけが呆然としている。大人たちは始まったか…とでも言いたげだ。

……久しぶりに殺気を感じた気がするけれど慣れっこだからもう慣れた、といっても魂の本質は俺ではなくネクロアーシュなのでドキドキと動悸が激しい。


「みんな……仲良くしてくれないの?なんで、お姉様怖い顔するの?」


こうなりゃ魂の本質に身を任せて演技だ、幼子の演技を貫き通すんだ…。

お姉様はぱちくりと目を瞬かせた後、ハッ、と我に返る。そうだよ、私5歳だよ?闇子とかわかーんなーい。でもエドゥワール、お前は許さん、なんで歳そんな変わんないのに、闇子知ってんだよ。母はこちらに今気が付いた風にあらあら、と言って拳銃をしまう。この家族怖すぎ。

伯父さんも短刀をしまってようやく、空気が元に戻りつつあった。


「失礼いたします」


この家のメイドさんの凛とした声が響く。扉の所には人間のメイドさんが立っている。


「皆様、大変長らくお待たせいたしました、只今よりパーティを始めたいと思いますのでどうぞこちらへお越しくださいませ。」


そうして楽しいパーティは始まり、私はそれからラーナお姉さん…ラーナと話すことなく、帰路についた。あっさりしていて、どうも落ち着かない気分だったけれど

――――――――

それから数か月後のこと、なにやらカルワナイト家が家を訪ねてきた。家に来たのは当主のセイク・カルワナイト様とその奥様のロベリア・カルワナイト、そしてその子供たち4人だ。ちゃんとラーナもいるそうだ。

家はそれを歓迎ムードで迎えていた。大人の事情と言うやつで追いやられ私たち子供は遊戯室で遊ぶことになった……さっそく険悪ムードだが


「えーっと…ようこそ、シュミントン家へ」

「あぁ、こちらこそ」


お兄様とラーナの兄であろう男の子がぺこりとお互い頭を下げ合う……となりの火花を散らさんばかりの妹たちから目をそらしながら……。さて、睨み合いますは我が家のお姉様、クイリア・シュミント―――――――ン!!!とカルワナイト家次女のアリス・カルワナイトだ!!!

と、いうのを脳内妄想してみる。もと男児ですからー。

鮮やかな紅色と真っ白な雪のような髪の毛のコントラストはまさに……紅白の素晴らしさを体現しているようだ。


「ふんっ、お子様がこんなところにいてよろしくて?」

「だれがお子様よっ、あんたの1つ上よっ!」


だれが争えと、こちらもこちらで仲が最悪なのだが……


「ようこそ、おいで下さいました」

「ああ、来てやったぞ」


ウザすぎ、目の前のコイツはこちらを見ようともせずラーナの方を見ている。こいつシスコンかよ……シスコンか


「はぁ……」


波乱万丈になりそうなのは私の気のせいなのか……







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