↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
152/179

第152話「ラブリー・ブレイブ・レボリューション」

『ファン数が100万人を突破しました』


『新能力を解放します』


『ブレイブLIVE・レボリューション』


『王都全域の回復支援に最適です。怪我人が多いため使用を推奨します』


「今からかよ!? ちっとは休ませろよ!!」


ユウヤの怒鳴り声が、王都の空へ響いた。


石畳に仰向けで倒れたまま、ユウヤは頭を抱える。


死にかけながら竜を倒し、王都へ侵入したワイバーンやキラーイーグルも片づけた。


東門ではサイクロプスを倒し、北門ではレオルドと一緒にフェンリルを倒した。

南門も守っている。


これ以上、何をしろというのか。


「ユウヤ?」


アルヴェルトが首を傾げた。


「急にどうしたんだい?」


「……何でもねえ」


ユウヤは吐き捨てるように答えた。


その隣で、レオルドが真面目な顔で口を開く。


「ユウヤには空想の友人がいるのです。あまり追求するのは良くないですよ」


「なるほど……気をつけるよ」


「なるほどじゃねえ!! イマジナリーフレンドじゃねえから!!」


ユウヤは苛立ちながら顔を上げ、辺りを見渡した。


少し先では、砕けた盾を握った騎士が倒れたまま治療班の魔法を受けている。


その隣では、ハンターが血まみれの仲間を抱えていた。


「おい、目を開けろ!」


肩を揺らしても返事はない。


崩れた建物の前では、住民が瓦礫を必死に掘っている。


「誰か! 中にまだ人がいるんです!」


別の場所では、足を負傷した母親が泣いている子どもを抱きしめていた。


治療班も限界に近く、魔力を使い果たしてその場に膝をついている者までいる。


竜を倒しただけでは、まだ終わっていなかった。


ユウヤは額を押さえる。


「……くそ」


見てしまった以上、無視できるわけがない。


カン。


『ブレイブLIVE・レボリューションの使用を推奨します』


「分かってるよ……」


ユウヤは焼けた腕を支えながら身体を起こした。


アイドル・エールで多少は動けるようになったが、傷が消えたわけではない。


今すぐ倒れて眠りたい。


できれば一週間くらい。


それでも、周囲からは泣き声や助けを求める声が聞こえてくる。


「はぁ……」


ユウヤは大きく息を吐いた。


「絶対、これで最後だからな」


アルヴェルトとレオルドが、揃って首を傾げる。


「あー、もう!」


ユウヤは立ち上がった。


「あいつら全員、助けりゃいいんだろ!」


カン。


『発動確認を待機しています』


ユウヤは奥歯を噛んだ。


「やってやるよ!」


右腕を上げる。


「ブレイブLIVE・レボリューション!!」


その瞬間、王都全域に展開されたままだったブレイブヴィジョンが一斉に白金の光を強めた。


東西南北の門や王城前、中央広場、崩れた市街地。


王都のあちこちに浮かぶ巨大な光幕が、再び空を照らしていく。


そこへユウヤの姿が映し出された。


同時に足元から白金の光が噴き上がり、きらびやかなステージへ姿を変える。


焦げたフリルとリボンが元の輝きを取り戻し、乱れていたツインテールまで綺麗に整えられていく。


「うわ、待て――」


そこまでだった。


ユウヤの声が途中で切り替わる。


背筋が伸び、口元には完璧な笑顔。


右手には、白金に輝くマイクが握られていた。


「みんなーっ!」


明るく澄んだ声が、王都全域へ響き渡る。


「ラブリー・ブレイブ・レボリューション、始まるよーっ♪」


(地獄が始まっちまった……)


外では眩しい笑顔。


内側では絶望しているユウヤを無視して、身体が軽やかに回転した。


ツインテールが左右へ大きく揺れる。


「まずは、みんなにお願いがありますっ♪」


(お願いすんな)


ユウヤはマイクを両手で持ち、可愛らしく首を傾げた。


「僕が『ラブリー』って言ったら、みんなも『ラブリー』って言ってくださいっ♪」


王都中の者たちが、巨大なブレイブヴィジョンを呆然と見上げた。


騎士もハンターも、治療班も住民も、何を求められているのか理解できていない。


「それじゃあ、いくよーっ♪」


ユウヤは大きく息を吸った。


「せーのっ、ラブリー!」


返事はない。


(おぇぇぇぇ……もう無理だ。消えたい……)


その時、瓦礫の陰にいた子どもが小さく口を開いた。


「ラ、ラブリー……」


別の子どもが続く。


「ラブリー!」


さらに、その母親も声を上げた。


「ラブリー!」


ぽつぽつと増えた声は、やがて王都のあちこちから返ってくるようになった。


「ラブリー!」


「ラブリー!」


「ラブリー!」


(返すなぁぁぁぁ!!)


ユウヤの身体は、心から嬉しそうに両手を広げた。


「みんな、最高ーっ♪」


(もう、勘弁してくれ……)


「次はこれっ!」


マイクを前へ突き出す。


「ブレイブー!」


「「「ブレイブー!」」」


今度は、すぐに返ってきた。


騎士が叫び、ハンターが拳を上げ、子どもたちも声を張り上げる。


「もう一回っ! ブレイブー!」


「「「ブレイブー!!」」」


(あっ……終わったわ……)


軽快な音楽が王都全体へ流れ始め、ユウヤの身体が勝手にステップを踏む。


右へ、左へ動き、そのまま一回転。


白金の光が舞台を照らすように降り注いだ。


「それじゃあ、いくよーっ♪」


曲が始まる。


キラッと参上 君のヒーロー

涙も痛みも 抱きしめちゃうぞ


倒れた君に リボンを結んで

せーので叫ぼう ブレイブチャージ!


「ラブリー!」


「「「ラブリー!」」」


「ブレイブ!」


「「「ブレイブ!」」」


「ラブリー!」


「「「ラブリー!」」」


「ブレイブ!」


「「「ブレイブ!」」」


王都中の声が重なっていく。


ユウヤが腕を振るたび、白金の光も広がった。


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

痛いの痛いの 飛んでいけ!


ソイヤ! ソイヤ! 立ち上がれ!

泣いた分だけ 強くなれ!


(ソイヤまで掘り返すんじゃねえぇぇぇ!!)


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

燃えろ希望よ 燃えるな衣装!


みんなの声が 力になる

今日も君だけのヒーローだ!


ユウヤが最後のポーズを決めると、白金の光が王都全域へ降り注いだ。


倒れていた騎士の出血が止まり、血まみれの仲間を抱いていたハンターが腕の中の男の呼吸に気づく。


「息が……!」


治療班の魔術師にも魔力が戻り始めた。


「これなら、まだ治療を続けられる!」


重傷者の傷がすべて消えるわけではない。


折れた骨も、失った血も完全には戻らない。


それでも命を繋ぐには十分だった。


動けなかった者が身体を起こし、治療班も再び負傷者のもとへ走り始める。


ユウヤの身体が両腕を広げた。


音楽が止まる。


(終わったよな?)


ほんの少しだけ安堵した直後、また前奏が流れた。


(あるのかよ二番!!)


眩しい笑顔のまま、身体が再び踊り始める。


「まだまだいくよーっ♪」


(いくな!!)


キラッと光るよ 君の明日

怖くて泣いても 手を繋ごう


転んだ君に エールを送って

せーので叫ぼう ブレイブスマイル!


「ラブリー!」


「「「「「ラブリー!」」」」」


「ブレイブ!」


「「「「「ブレイブ!」」」」」


今度は最初から、王都中から大きな声が返ってきた。


外壁の外に残っていた戦場でも、白金の光を受けた騎士たちが盾を構え直す。


「ラブリー!」


「ブレイブ!」


「ソイヤ! ソイヤ!」


結界術師たちも戻った魔力で術式を支え、騎士団とハンターは残った魔物を押し返していった。


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

痛いの痛いの 飛んでいけ!


ソイヤ! ソイヤ! 立ち上がれ!

泣いた分だけ 強くなれ!


(早く終わってくれぇぇぇ……!)


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

燃えろ希望よ 燃えるな衣装!


みんなの声が 力になる

今日から君もヒーローだ!


最後の音が王都の空へ消える。


ユウヤの身体は両手でハートを作り、片足を上げて、最後に片目を閉じた。


(殺せ)


白金の光が大きく広がり、王都を包み込む。


治療班が動き、瓦礫の撤去も再開される。

傷ついた者同士が手を取り合い、少しずつ人の動きが戻っていった。


ようやく音楽が止まり、ステージも消える。


ユウヤの身体から力が抜け、表情も元に戻った。


その場に膝をつく。


「……終わったよな?」


今度こそ、自分の声だった。


カン。


『ブレイブLIVE・レボリューションの成功を確認』


『王都全域の治癒支援に成功』


『多数の重傷者の生命維持を確認』


『治療班の魔力回復を確認』


『生存率が大幅に上昇しました』


「……はぁ」


ユウヤはそのまま石畳に座り込んだ。


「最悪な気分だ……」


全身も重いが、精神的な疲労は竜との戦い以上だった。


「もう二度とやんねえ」


周囲では、騎士が仲間を助け起こし、意識を取り戻したハンターを仲間が抱きしめている。


治療班も次の負傷者へ走り、瓦礫の下から助け出された男は家族と泣きながら抱き合っていた。


アルヴェルトとレオルドも、黙ってその様子を見ている。


その時、近くにいた子どもがユウヤを見上げた。


「……もう一回」


ユウヤの眉が動く。


「は?」


子どもは、ぱっと笑った。


「もう一回、ラブリーしてー!」


「しねえよ!!」


ユウヤの怒声が響いた。


だが、別の子どもが手を叩く。


「もう一回!」


さらに、その隣の大人まで声を上げた。


「もう一度!」


やがて誰かが叫ぶ。


「アンコール!」


ユウヤの顔から血の気が引いた。


「おい」


「アンコール!」


「アンコール!」


「アンコール!」


その声は市街地から中央広場へ、さらに外壁の方からも聞こえ始めた。


「おい……やめろ……」


カン。


『アンコールを要求されました』


「……おい」


カン。


『希望エネルギーが集まっています』


「おい!! 絶対やらねえぞ!」


カン。


『ブレイブLIVE・レボリューション』


『アンコールを開始します』


「ふざけ――」


ユウヤの声が、再び途中で切り替わった。


表情が明るくなり、背筋が伸びる。


右手にマイクが戻った。


「みんなーっ! アンコールありがとーっ♪」


(やめてくれぇぇぇぇぇ!!)


音楽が流れ、ユウヤの身体が再び踊り始める。


「ラブリー!」


「ラブリー!」


「ブレイブ!」


「ブレイブ!」


「ソイヤ! ソイヤ!」


王都民は、完全にノリ始めていた。


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

もう一回だけ 立ち上がれ!


ソイヤ! ソイヤ! 声出して!

笑える明日を 掴み取れ!


ラブリー! ブレイブ! レボリューション!

涙のあとに 虹をかけ!


みんなの声が 光になる

今日からみんながヒーローだ!


「ラブリー!」


「ブレイブ!」


「ソイヤ! ソイヤ!」


「レボリューション!」


(これが地獄か……)


アンコールとともに、再び白金の光が王都へ降り注いだ。


治療班の魔力がさらに戻り、重傷者の状態も安定していく。


先ほどまで動けなかった者まで、仲間に支えられながら身体を起こしていた。


そして、長いアンコールがようやく終わる。


身体の自由を取り戻したユウヤは、そのまま石畳へ突っ伏した。


「……やっと終わりやがった……」


顔を上げる気力すらない。


カン。


『ファン数が増加しました』


『現在ファン数:2486210人』


「イカれてんな……」


カン。


『楽曲定着率が急上昇しています』


『ラブリー・ブレイブ・レボリューションが王都内で急速に浸透しています』


「……は?」


少し離れた場所から、子どもたちの声が聞こえた。


「ラブリー!」


「ラブリー!」


「ブレイブ!」


「ブレイブ!」


「ソイヤ! ソイヤ!」


ユウヤは、ゆっくりと顔を上げる。


「……嘘だろ」


アルヴェルトが周囲を見渡した。


「民が立ち上がる歌だ」


少しだけ笑う。


「復興の象徴に相応しい」


「相応しくねえだろ!? 頭イカれてんのか!!」


レオルドも真剣な表情で歌詞を口にする。


「ラブリー、ブレイブ、レボリューション……」


「おい」


「素晴らしい歌でした」


「お前ら、ぶっ飛ばすぞ」


アルヴェルトは肩をすくめた。


「民が元気を取り戻した証拠だよ」


「綺麗にまとめんじゃねえ!!」


ユウヤの怒鳴り声に、周囲から笑いが起こった。


そのすぐ近くでは、子どもたちがもう一度声を合わせている。


「ラブリー!」


「ブレイブ!」


「ソイヤ! ソイヤ!」


ユウヤは石畳に突っ伏したまま、頭を抱えた。


「頼むから忘れてくれぇぇぇ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラブリーでブレイブな黒歴史の本人とか(⌒▽⌒) 確実に良い話なのに、残念な気持ちが上回る不思議さがたまらないです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。