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人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


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第137話「王族の役目」


朝のソイヤは、まだ少し冷えていた。


細い路地の奥にある小さな家で、ユウヤは目を覚ました。


床に敷かれた毛布の上。

隣ではロウたちが丸くなって眠っている。

レオルドは壁際で背筋を伸ばしたまま座っていた。


「……おい」


ユウヤは半眼で声をかける。


「お前、結局その姿勢で寝たのかよ」


レオルドはゆっくり目を開けた。


「はい。問題ありません」


「問題あるだろ。首とか痛くならねえの?」


「鍛えていますので」


「鍛えてるとこ見たことねえけどな……」


反対側では、アルヴェルトが毛布から顔を出した。


「朝から元気だね……」


「よく眠れたみてえだな。寝癖ついてんぞ」


「なかなか悪くない寝心地だったよ」


「……お前本当に王子か?」


アルヴェルトは苦笑する。


その声で、ロウがもぞもぞと起き上がった。


「ユウヤ兄ちゃん……もう行くの?」


「ああ」


ユウヤは立ち上がり、軽く肩を回す。


「また、帰ってきてね」


「当たり前だろ」


ユウヤは乱暴にロウの頭を撫でた。


ティナとデンも起き出して、ユウヤたちを見上げる。


小さな家の中に、朝の光が差し込んでいた。


「行くぞ」


「うん」


「はい」


三人は、小さな家を出た。



ソイヤの門前には、すでに人が集まっていた。


ディルク。

明日への誓いのレオン、ガイ、カイル、ミーナ。

グレッグとトム。

ロウ、デン、ティナ。

そして、ソイヤのハンターたち。


全員が、王都へ向かう三人を見送りに来ていた。


ユウヤは門前で大きく息を吐く。


「はぁ……アイドルモビリティ召喚」


白い光とともに、キラキラと輝くセグウェイが出現した。


アルヴェルトはセグウェイを見て、すでに諦めた顔をしていた。


「……やっぱり、いつもの並びなのかい?」


ユウヤが当然のようにハンドルの前へ立つ。


「仕方ないだろ」


レオルドも頷く。


「この配置が一番安定します」


「はあ……」


アルヴェルトは深いため息を吐いた。


「結局これなんだね……」


トムが横から手を振る。


「でも、似合ってるっすよ!」


「それはちょっと嫌かな」


グレッグは腕を組みながら言った。


「飯はちゃんと食えよ。腹が減ってりゃ、戦えるもんも戦えねえ」


「お前は母ちゃんかよ」


そんな軽口の横で、ディルクは表情を引き締めていた。


「王都までは、最短で走れば今日中に着くかもしれん。だが、途中で連中が仕掛けてくる可能性もある」


「分かってる」


ユウヤは短く答える。


ディルクはアルヴェルトへ視線を向けた。


「アルヴェルト殿下。ソイヤは、こちらで守ります」


「頼む」


アルヴェルトは静かに頷いた。


「ルークとリア、セシル、ヘルガもいる。危険を押しつける形になってすまない」


「この街も、もう無関係ではありません」


ディルクはそう言い切った。


「預かった以上、好きにはさせません」


レオンも一歩前へ出る。


「兄貴。こちらは任せてください」


その声は明るかったが、目は真剣だった。


「ルーク殿下も、リア殿下も、セシルさんも、俺たちが必ず守ります」


ガイ、カイル、ミーナも頷く。


ユウヤはレオンを見る。


「頼んだぞ」


「はい!」


レオンは力強く返事をした。


その時だった。


「待ってください!」


治療院の方から声が響いた。


全員が振り返る。


ルークだった。


まだ顔色は悪い。

歩き方も少しぎこちない。

それでも、彼はリアに支えられながら門前まで来ていた。


後ろにはシエラもいる。


その顔は、完全に怒っていた。


「ルーク殿下。安静にしてくださいと言いましたよね」


「すみません。ですが、どうしても……」


ルークはシエラに頭を下げ、それからアルヴェルトを見る。


「兄上」


アルヴェルトの表情が変わる。


「ルーク」


「僕も行きます」


門前の空気が、一瞬で重くなった。


リアが隣で小さく息を呑む。


「ルーク兄様……」


ルークは震える拳を握りしめた。


「これ以上、守られているだけではいられません。父上の文書を兄上に渡すことはできました。でも、まだ終わっていません」


アルヴェルトは、弟をまっすぐに見た。


そして、静かに言った。


「駄目だ」


ルークの表情が固まる。


「お前はここに残れ」


「また、僕だけ逃げろということですか?」


アルヴェルトは目を逸らさない。


「そうだ」


周囲がわずかにざわつく。


アルヴェルトは一歩、ルークへ近づいた。


「お前の役割は戦うことではない。生き残ることだ」


「兄上……」


「私が王都へ戻れば、セドリックは必ず私を狙う。蛇架も同じだ」


アルヴェルトの声は、兄のものではなく、王族のものだった。


「私を殺せば、王位継承の正統性を潰せるからな」


ルークは黙って聞いている。


「もし私が倒れ、さらにお前まで王都で倒れれば、王国は終わる」


その言葉に、ルークの顔色が変わった。


アルヴェルトは続ける。


「セドリック……いや、蛇架に国を奪われる。だが、お前が生きていれば、まだ終わらない」


「僕が……?」


「ああ」


アルヴェルトは頷いた。


「王族とは、そういうものだ」


声は冷たくなかった。


だが、甘くもなかった。


「戦えるかどうかではない。剣を握れるかどうかでもない。生きて、次に繋ぐことも役目だ」


ルークは言葉を失う。


自分が戦えないことは分かっている。

今の身体で王都へ行けば、足手まといになることも分かっている。


それでも、置いていかれることが苦しかった。


だからこそ、アルヴェルトは逃げ道を作らなかった。


「ルーク。お前には、ここに残る役目がある」


重い沈黙が落ちる。


「俺がいる限り、そんなことは起きねえけどな」


突然の一言に、アルヴェルトがユウヤを見る。


ユウヤは面倒くさそうに肩を鳴らした。


「勝手に死ぬ前提で話進めんな」


「ユウヤ……」


「俺が何のためについて行くと思ってんだよ」


ユウヤはアルヴェルトを睨むように見る。


「お前を王都まで連れてって、王様ごっこさせるためじゃねえぞ。死なせねえためだ」


「王様ごっこはひどいね」


「ひどくねえよ。王子様だろ」


「そういう問題かな」


レオルドも一歩前に出た。


「私もいます」


彼は真っ直ぐにルークを見た。


「アルヴェルト殿下には、指一本触れさせません」


ユウヤが横目で見る。


「こんなんだが、最強のボディガードもついてる」


レオルドは静かに頷く。


「私はAランクハンターで、帝国騎士で、ユウヤと殿下の友ですから」


アルヴェルトは少しだけ笑った。


「私は良い友に恵まれてるね」


「今さらだろ」


ユウヤが鼻を鳴らす。


それでも、アルヴェルトはルークへ向き直った。


「もちろん、私は二人を信じている。だが、王族は最悪を考えなければならない」


ルークは黙って兄を見る。


「誰かが倒れても、次の誰かが国を繋ぐ。それが王家の役目だ」


その言葉に、リアがルークの隣へ立った。


「ルーク兄様」


ルークが妹を見る。


リアの目には涙が浮かんでいた。

それでも、声は震えていなかった。


「私も残ります」


「リア……」


「セシルさんのそばにいます。ルーク兄様も、一緒に待ちましょう」


リアはアルヴェルトを見て、それからユウヤたちを見る。


「アルヴェルト兄様が戻ってこられる場所を、ここに残しましょう」


ルークは唇を噛んだ。


悔しさは消えない。


だが、リアの言葉は、彼の胸に確かに届いていた。


戻る場所を残す。


それもまた、役目なのだと。


ルークはゆっくりと息を吐いた。


「……分かりました」


アルヴェルトは何も言わず、弟の言葉を待つ。


ルークは拳を握りしめたまま、まっすぐに兄を見た。


「僕は、ここに残ります」


短い沈黙。


そして、ルークは続けた。


「兄上が戻るまで、リアとセシルさんのそばにいます」


それだけでは終わらなかった。


ルークは、震える声を抑えながら言う。


「そして、もしもの時は……」


アルヴェルトの目が細くなる。


ルークは言い切った。


「王家の血を、王国の希望を、僕が繋ぎます」


その場の誰も、すぐには口を開かなかった。


それは、逃げの言葉ではなかった。


戦えない少年が、自分に与えられた役目を受け止めた言葉だった。


アルヴェルトは静かに頷く。


「頼んだ、ルーク」


「はい」


ルークは深く頷いた。


ディルクが前へ出る。


「ルーク殿下たちは、ソイヤの街で預かります」


その声には、ギルドマスターとしての責任があった。


「この街にいる限り、好きにはさせません」


レオンもまっすぐユウヤを見る。


「兄貴」


「あ?」


「こちらは任せてください」


レオンは胸を張った。


「ルーク殿下も、リア殿下も、セシルさんも、俺たちが必ず守ります」


「……言うじゃねえか」


ユウヤは少しだけ笑った。


「頼んだぞ」


「はい!」


レオンの返事は、朝の空気に真っ直ぐ響いた。


少し離れた治療院の窓辺で、ヘルガは外の騒ぎを見ていた。


肩には包帯。

顔色も良くない。


それでも、門前に立つルークの姿を見ると、口元だけはわずかに緩んだ。


「若いのが、いい顔するじゃないか」


誰に聞かせるでもなく、ヘルガはそう呟いた。


ユウヤはセグウェイに乗る。


アルヴェルトが真ん中。

レオルドが後ろ。


いつもの並びだった。


アルヴェルトは一度だけ、ルークとリアを見る。


「ルーク、リア」


「はい」


「はい、兄様」


アルヴェルトは微笑む。


「必ず戻る」


ルークは真っ直ぐに頷いた。


「待っています」


リアも胸の前で手を握る。


「お気をつけて、アルヴェルト兄様」


レオルドが静かに言う。


「参りましょう」


ユウヤはハンドルを握り直した。


「よし、今度こそ行くぞ」


ロウたちが門の横から手を振る。


「ユウヤ兄ちゃん!」


ロウが胸の前で手を合わせる。


「……ソイヤ」


それに続いて、子供たち、街のハンター、住民たちが祈るように胸の前に手を合わせる。


「「「ソイヤ」」」


ユウヤは思わず振り返る。


「だから、それ祈りの言葉じゃねえからな!?」


ため息をついて、ハンドルを握る。


カン。


『アイドルモビリティ、高速走行モードへ移行します』


「安全は!?」


カン。


『優先順位を変更しました』


「すんな!!」


アルヴェルトが顔を引きつらせる。


「……何かあったのかい?」


「気にすんな!!」


「嫌な予感がするんだけど!?」


レオルドは後ろで風の膜を張る。


「いつでも出発できます」


「お前ら、ちゃんと掴まってろよ!」


白いセグウェイが朝日の中で光を放つ。


次の瞬間、三人を乗せた乗り物は、王都へ続く街道を走り出した。


残る者は、希望を繋ぐために残る。


戻る者は、王国を取り戻すために戻る。


白い光は、朝日に照らされながら、王都へ向かっていった。

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