表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
120/135

第120話「逃がさねえ」


「今度は私が終わらせます」


レオルドの呟きは、戦場の喧騒の中でも不思議とはっきり響いた。


次の瞬間、白金の光に底上げされた緑の闘気が爆発する。レオルドの姿は一閃の光と化し、仰け反った巨竜の首元へ再び斬り込んだ。


今度は違う。


剣が深く入る。


硬く閉ざされていた鱗を斬り裂き、その下の肉まで断ち割る。赤黒い血が噴き上がり、巨竜が苦悶の咆哮を上げた。


「よし!! 今だ!! 傷口へ集中しろ!!」


ライナーの怒声が飛ぶ。


第三騎士団が即座に動いた。レオルドが作った傷口へ向けて、一斉に斬撃を叩き込む。浅い。だが浅くていい。重ねれば通る。その確信が、今の騎士たちにはあった。


「第四騎士団!! 行くわよ!!」


イルゼが杖を振り上げる。


光槍、氷槍、風刃。白金の加護を受けた魔法が、先ほどまでとは別物のような威力で夜空を切り裂いた。狙いは首元と翼。逃がさない。再び飛び上がらせない。その意志が、魔法の軌道にはっきり宿っていた。


グレゴールは第二騎士団を率い、前脚へ食らいつく。


「押し込め!! 脚を殺せ!!」


大盾が並ぶ。重装騎士たちが歯を食いしばり、巨体の片脚へ体重ごとぶつかった。踏み潰されそうになりながらも、誰も離れない。前脚の動きが鈍った瞬間を、ヴォルクハルトは見逃さなかった。


「そこだ」


大剣が唸る。


深い一撃が、前脚の関節へ食い込んだ。


「がははっ!! 最高だ!! 力が湧き出てきやがる!!」


ベルグは楽しそうに笑いながら、真正面から竜の顎へ拳を叩き込み続けている。吹き飛ばされてもすぐ戻り、また殴る。その馬鹿みたいな執念が、今は確実に巨竜を苛立たせていた。


一方その頃、広場中央のステージでは。


ユウヤが死んだ目でマイクを握っていた。


「キミの願い、ぜんぶ受け止めるっ♪

このボクが明日へ連れてくよっ♪」


「「「「ボース!!」」」」


(おぇぇぇ、マジで死にてえ……)


第五騎士団だけが異様な熱量で拳を突き上げている。


「ボスー!! 最高っす!!」

「もっとです!!」

「これが俺たちのボスだ!!」


(こいつら絶対後で殺す)


だが、その殺意すら無駄にならないのが最悪だった。


『敵意・羞恥・殺意を出力へ変換』

『ブレイブLIVE出力上昇』


(そんな変換すんな!!)


ユウヤの内心の絶叫とは裏腹に、白金色の光はさらに強まっていく。騎士たちの武器がより強く輝き、魔法陣はさらに濃くなった。


巨竜も反撃に出る。


爪が振り下ろされ、尾が唸り、喉奥で赤黒い光が脈打つ。何度も騎士たちが吹き飛ばされ、地面へ叩きつけられる。だが、今は違った。折れない。誰も退かない。踏みとどまれる。立ち上がれる。


それは白金の光が与える加護であり、同時に、ここまで耐え抜いた帝国騎士たち自身の意地でもあった。


ヴォルクハルトが前へ出る。


血で濡れた鎧も、砕けかけた大剣も、その歩みを止めなかった。


「帝国は我らの手で守る!!」


広場に響く、鋼のような声。


「帝国騎士の意地を見せろ!!」


「「「おおおおおっ!!」」」


返る咆哮は、もはや恐怖ではなかった。


ヴォルクハルトが竜の正面へ飛び込み、その一撃で視線を引きつける。グレゴールが下から押し上げ、ベルグが顔面を殴り飛ばし、イルゼの魔法が翼を縫い止める。ライナーが戦場全体へ視線を走らせ、最も効率のいい位置へ仲間を送り込んでいく。


その全てを見ながら、レオルドは一度だけ剣を握り直した。


曾祖父。


人類史上最強と呼ばれた勇者。


世界を滅ぼしかけた竜種の魔王を、命と引き換えに討ち倒した英雄。


その血を自分は引いている。


だが――


レオルドは、静かに目を細めた。


「貴方は一人で戦った」


小さな呟きは、誰にも届かない。


「ですが、私は違います」


その背後では、帝国騎士団が戦っている。ユウヤは歌と踊りで力を与えながら、全員を支えている。


一人ではない。


だからこそ、ここで終わらせられる。


「これで決着です」


緑の闘気が、さらに膨れ上がる。


次の瞬間、レオルドは真っ直ぐに竜の首元へ跳んだ。


白金の加護を纏った最後の斬撃が、深々と傷口へ叩き込まれる。


同時に。


ヴォルクハルトの大剣。


ベルグの拳。


グレゴールの重撃。


ライナーの号令で放たれた第三騎士団の斬撃。


イルゼ率いる第四騎士団の一斉魔法。


そして、広場中の騎士たち全員の総攻撃が、一つの傷口へ集中した。


巨竜が絶叫する。


地面が揺れるほどの咆哮だった。


だが、もう止まらない。


傷は裂け、鱗は砕け、白金と緑の光がその巨体を穿つ。


やがて。


巨竜の首が大きく仰け反り、膝から崩れた。


巨体が傾く。


誰もが息を止める。


そして次の瞬間、世界を震わせるような轟音と共に、竜の魔王は地に伏した。


もう、動かない。


広場を支配していた圧が、ふっと消える。


数秒の沈黙のあと。


「……勝った」


誰かが呟いた。


それを合図にしたように、歓声が爆発した。


「やったぞ!!」

「倒した!!」

「帝都を守ったんだ!!」


騎士たちが武器を掲げる。傷だらけの顔に、疲労と安堵と誇りが浮かんでいた。


ヴォルクハルトは大きく息を吐き、レオルドは剣を下ろす。イルゼはその場にへたり込み、ベルグは豪快に笑い、グレゴールは無言で盾へ額を預けた。


絶体絶命の状況から帝都は守られた。

誰一人かけてもこの結果にはならなかった。


「……あれ?」


第五騎士団の一人が、きょろきょろと辺りを見回した。


「ボスは?」


その一言で、数人がステージのあった場所を見る。


だが、もうそこには何もなかった。


巨大ステージは消えている。照明も紙吹雪も、あの忌々しいマイクすら影も形もない。


「……ほんとだ」

「いつ消えた?」

「ボス、さっきまで歌ってませんでした?」


ライナーが顔を上げる。


レオルドも周囲を見渡した。


ヴォルクハルトでさえ、いつ消えたのか把握していなかった。


誰も気づかなかった。


勝利の瞬間、あまりにも多くの視線が巨竜へ向いていたからだ。



帝都から少し離れた夜道を、メルキオは無言で歩いていた。


背後で起きたことは、振り返らなくても分かる。


伝説の竜の魔王の気配が消えた。


つまり、倒されたのだ。


「……予想以上でした」


静かな声で呟く。


レオルド・フォン・アルヴェイン。


確かに凄まじい力を持つ男だった。勇者の血を色濃く継ぐ存在として、危険視する理由は十分にあった。だが、あれはまだ理解できる力だ。強い。だが、理屈の外にはいない。


想定内だった。


想定外だったのは――


マスクドブレイブ。


あの白金の光。謎の属性。味方全体の魔力と闘気を底上げした謎の力。あの場で戦況をひっくり返した、理解不能の化け物。


「本当の脅威は……」


そこまで呟いた、その時だった。


「おい」


背後から、低い声。


メルキオが振り向く。


白い光が、夜の道へ静かに降り立っていた。


そこに立っていたのは、ユウヤだった。


白金の炎を揺らしながら、じっとメルキオを見据えている。


「何処に行く気だ」


その声に、さすがのメルキオも表情を変えた。


ユウヤは一歩前へ出る。


「前は逃げられたからな」


さらに一歩。


「今回は逃がさねぇ」


メルキオの顔から、初めて余裕が消えた。


逃げられない。


そう理解したからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ