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人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


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第117話「アイドル勇装」


赤黒い光が、竜の喉奥で不気味に膨れ上がっていく。


広場にいる誰もが、それが何を意味するのか分かっていた。


もう止められない。


障壁は限界。

騎士たちも限界。

レオルドですら満身創痍だ。


次の一撃が放たれれば、広場ごと消し飛ぶ。


ヴォルクハルトが大剣を握り締めた。


「総員――」


その時だった。


眩い光が、広場の中央から弾けた。


「なっ……!?」


あまりの光量に、竜の赤い瞳が細まる。

狙いが逸れた。


次の瞬間、放たれたブレスが大きく上へ逸れる。


轟音。


赤黒い奔流は夜空を切り裂き、そのまま遥か上空へと消えていった。


騎士たちが呆然と空を見上げる。


「助かった……?」

「今の光は……?」


その中心に、一つの人影が立っていた。



やがて光が晴れる。


そして、広場は静まり返った。


誰も、すぐには言葉を出せなかった。


そこにいたのは――ツインテールだった。


白と桃色を基調としたフリル。

胸元の大きなリボン。

ひらひら揺れるスカート。

無駄にきらきらした光。


しかも、なぜか花びらまで舞っている。


ユウヤは、ゆっくりと自分の姿を見下ろした。


数秒の沈黙のあと、ようやく口を開く。


「……死ぬ」


ベルグが目をしばたたかせる。


「……俺は今、何を見せられてる?」


ライナーは顔をしかめた。


「いや、見なかったことにしよう」


イルゼは真顔だった。


「……凄いわね」


レオルドだけが静かに頷く。


「似合っています」


「黙れ! この場の全員殺して、俺も死ぬ!!」


ユウヤが叫んだ、その瞬間だった。


再び全身が光に包まれる。


『精神的拒絶反応を確認』

『不適合』

『形態を再構築します』


「当たり前だろうがぁぁぁ!!」


光が爆ぜた。


数秒後。


再び現れたユウヤは、先ほどよりはまだまともだった。


白を基調とした衣装。

金色の装飾。

長いコート。

胸元のブローチ。


王子様というか、やたら派手なアイドルというか。

とにかく別方向に目立つ格好ではあるが、少なくともさっきよりは人類の尊厳が残っている。


ユウヤは無言で自分の姿を見下ろした。


「……なんだこれ」


レオルドが少し考えてから言う。


「先程の方も、個性はありました」


「お前は後で殺す」


即答だった。


だが、その時だった。


「ボス!!」


第五騎士団の連中が、揃って目を輝かせた。


「いつものやりましょうよ!!」

「そうですボス!!」

「名乗りです!!」


ユウヤの顔が引きつる。


「嫌だ」


即答。


「えぇぇぇぇ!?」


第五が揃って落胆した。


「何でお前らそんな残念そうなんだよ」


「だってボスの変身って、そこまでがセットじゃないですか」

「セットじゃねえ」


レオルドが首を傾げる。


「確かに、名乗りまで含めて完成形ですね」


「お前まで言うな」


その時だった。


ベルトが鳴る。


『アイドル形態は名乗りにより性能が向上します』


「てか、今回の名乗り知らねえから」


『了解しました』


「おっ」


右手が勝手に持ち上がる。


「……は?」


左手も動く。


「おい」


足まで勝手に開いた。


「待て」


嫌な予感しかしない。


止まれ。

止まれ。

止まれ。


だが、身体はまるで言うことを聞かなかった。


右手が胸へ。

左手が空へ。

光が差し込み、また花びらが舞う。


「やめろぉぉぉぉぉ!!」


そして、口が勝手に開いた。


「みんなのハート、受け取ったよっ♪」


広場が死んだ。


「今日も君だけのヒーローになるからねっ!」


ベルグが吹き出した。


「この世界に舞い降りた奇跡のアイドル!」


ヴォルクハルトの眉が、ぴくりと動いた。


「アイドル勇装・マスクドブレイブ!!」


静寂。


完全な静寂だった。


ユウヤだけが羞恥で震えている。


『名乗り成功』

『身体能力強化:81倍(基礎)』

『名乗りボーナス:64倍(加算)』

『合計:身体能力強化 145倍』


次の瞬間、白金色の炎が噴き上がった。


今までの黒焔とは違う。


眩く、温かく、それでいて内側にとんでもない力を秘めた炎だった。


メルキオが初めて目を見開く。


「……何だ、この力は……!? まさか未知の属性……?」


竜もまた、本能的な危険を感じたのか低く唸る。


一方のユウヤは、その場に膝をついていた。


「おえぇぇぇ……死ぬ……」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫なわけあるか」


レオルドが少し考えたあと、真面目に言う。


「でも、素晴らしい名乗りでしたよ」


「……てめぇ、帰ったら覚えてろ」


その瞬間、竜が咆哮した。


巨大な前脚が振り下ろされる。


ユウヤは反射的に跳んだ。


景色が一瞬で消える。


気づけば、竜の頭上にいた。


「……は?」


自分が一番驚いた。


速い。


今までとは比較にならない。


145倍という数字が、ようやく実感として理解できる。


竜の反応が遅れた。


ユウヤはそのまま拳を振り被る。


「ブレイブパンチ」


『違います。キラキラブレイブパンチです』


「……」


一瞬だけ沈黙。


「……キラキラブレイブパンチ」


白金色の炎が爆ぜた。


轟音。


叩き込まれた一撃が、竜の首元の鱗を大きく砕く。


血が舞い、巨竜が初めて苦鳴を上げた。


広場の全員が目を見開く。


「通ってるぞ!!」


ヴォルクハルトが叫ぶ。


今まで誰の攻撃でもまともに通らなかった。

レオルドの全力ですら、小さな傷しかつけられなかった相手だ。


だが今の一撃は違った。


確かに、竜へ届いている。


ユウヤは自分の拳を見る。


白金色の炎が静かに揺れていた。


「……なるほどな」


その時、視界の端に新しい表示が浮かぶ。


『ブレイブLIVE』


「……嫌な予感しかしない」


竜が再び唸る。


騎士たちも武器を構え直す。


絶望に支配されていた広場に、ようやく反撃の空気が戻り始めていた。

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