表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
115/135

第115話「災厄」


巨大な影が、広場へ落ちた。


次の瞬間。


轟音。


地面が跳ねた。

石畳が割れ、衝撃波が四方へ走る。

広場を囲む建物の窓が一斉に砕け、市民たちの悲鳴が夜へ突き刺さった。


「きゃああああっ!!」

「逃げろ!!」

「何が起きてんだ!!」


土煙が噴き上がる。


帝都全体が揺れたような感覚だった。

立っていた騎士たちですら、衝撃に膝を折りかける。


ユウヤは黒焔を揺らしながら、目の前の砂煙を睨んだ。


「……何だ、今のは」


重い。


土煙の向こうから、ただならぬ圧が押し寄せてくる。


風ではない。

魔力でもない。

もっと生理的に嫌悪感を抱かせる、濁った何か。


やがて。


砂煙の奥で、二つの赤い光が灯った。


騎士の一人が息を呑む。


「目……?」


次の瞬間、巨大な翼が土煙を吹き払った。


現れたのは、竜だった。


黒紫の鱗。

広場を覆い尽くすような巨体。

建物よりなお高く伸びる首。

赤く濁った瞳。

吐息ひとつで空気が震え、地面へ瘴気が染み出していく。


ただ、そこにいるだけで息が詰まった。


騎士も、市民も、誰もが言葉を失う。


「な……」


ヴォルクハルトが広場へ駆け込み、その姿を見た瞬間、顔色を変えた。


「なぜドラゴンが、こんな所にいる……」


後方から、グレゴール、ライナー、イルゼ、ベルグも集まってくる。

別地点で戦っていた騎士たちも、異変を感じ取って広場へ流れ込んでいた。


レオルドもまた広場へ姿を現す。


全員の視線が、竜へ釘付けになる。


その時だった。


「あなた方は、先代の魔王と勇者の戦いを知っていますか?」


白衣の男――メルキオが、竜の前へ歩み出た。


まるで自分の作品でも披露するような口ぶりだった。


ヴォルクハルトが目を細める。


「……当然だ」


低い声が落ちる。


「先代勇者は、人類史上最強と呼ばれた存在だ。あらゆる魔を討ち、最後には自らの命を賭して、世界を滅ぼしかけた魔王を倒した」


広場が静まり返る。


騎士たちの顔が青ざめていく。


ベルグが唾を吐き捨てるように呟いた。


「おいおい……まさかとは思うが……」


メルキオは、穏やかに微笑んだ。


「ええ。蛇架はその遺骸を、かなり前から回収していました」


その一言で、空気が変わる。


「魔人化薬。魔王因子。核形成の研究。全ては、この復活研究へ繋がっていたのです」


ユウヤの黒焔が揺れる。


「……つまり、最初からこれが狙いだったってことか」


「ええ」


メルキオは頷いた。


「ガレスの核を用い、不完全ながら先代魔王の復活体を完成させました。もちろん、核が不十分ですので全盛期には遠く及びません」


そこまで言って、メルキオは竜を見上げた。


「ですが――世界を滅ぼす程度なら十分でしょう」


周囲の騎士たちが息を呑む。


イルゼの顔から血の気が引いた。


「冗談じゃ……」


グレゴールが歯を食いしばる。


「こんなものを何故帝都に……!」


メルキオは淡々と続けた。


「本来は魔人の選別が終わった後、残った人類を滅ぼすために投入する予定でした。ですが、あなた方が想定以上に邪魔をしたもので」


その視線が、ユウヤとレオルドへ向いた。


「予定を早めました」


レオルドの表情が険しくなる。

ヴォルクハルトも、大剣の柄を強く握った。


その中で、ひとりだけ。


ユウヤが前へ出る。


黒焔を揺らしながら、竜を見上げる。


「……要するに、あの禍々しき巨竜を消し炭にすれば良いのだろう?」


メルキオが初めて、少しだけ笑った。


「出来るものなら」


次の瞬間。


竜の赤い瞳が、ぎろりと動いた。


視線の先にいたのは――レオルドだった。


本能。


あるいは記憶。


先代勇者に討たれた魔王の残滓が、レオルドの中にある“勇者の血”を感じ取ったのだろう。


竜がゆっくりと口を開く。


喉の奥で、赤黒い光が膨れ上がっていく。


ヴォルクハルトの表情が変わった。


「レオルド!!」


遅い。


次の瞬間、光が解き放たれた。


轟ッ――!!


一直線のブレス。


熱と瘴気を混ぜたような、赤黒い奔流が空間そのものを焼きながらレオルドへ襲いかかる。


レオルドは即座に前へ出た。


緑の闘気が全身を包む。


「風よ!!」


両腕の前へ風魔法を叩きつける。

圧縮された風が壁のように立ち上がり、ブレスへぶつかる。


だが、止まらない。


勢いすら鈍らない。


「なっ……!?」


レオルドの目が見開かれる。


ヴォルクハルトが怒鳴った。


「 急げ!! 魔法を使える者は総動員で障壁を張れ!!」


イルゼが即座に反応する。


「全員、魔力障壁展開!! 重ねなさい!!」


第四の魔法騎士たちが一斉に杖を掲げた。

さらに第一、第三、第五の中で魔法を扱える者まで前へ出る。


幾重もの障壁が、レオルドの前へ展開された。


ブレスが直撃する。


轟音。


障壁が勢いよく十枚、二十枚と砕け散る。

火花と瘴気が広場を舐め、周囲の建物を吹き飛ばす。


なんとか止めた。


本当に、ギリギリで。


だが、その代償は大きかった。


広場周辺の建物が半壊し、衝撃だけで通りの石畳がめくれ上がる。

騎士たちが何人も吹き飛び、魔力を絞り出した魔法騎士たちがその場へ膝をついた。


イルゼが息を荒げる。


「こんなの……反則でしょ……!」


ユウヤの黒焔が揺らぐ。


「……凄まじい力だ」


それでも。


止めるしかなかった。


ヴォルクハルトが大剣を構える。


「総員、迎撃準備!!」


グレゴールが前へ出る。

ベルグが笑いながら拳を鳴らす。

ライナーが剣先を上げる。

レオルドは口元の血を拭い、竜を睨んだ。


「では、行きます」


次の瞬間。


緑の闘気が爆発した。


本気だった。


今までとは比べ物にならないほど濃い緑のオーラが、レオルドの全身を包む。


空気が裂ける。


レオルドの姿が消えた。


一瞬後には、もう竜の首元まで踏み込んでいる。


「はあああああっ!!」


全力の斬撃。


緑の閃光が、竜の鱗を断ち切ろうと叩きつけられる。


高い金属音のような音が響いた。


レオルドが目を見開く。


鱗の表面を浅く裂いたに過ぎなかった。


「……ッ!?」


その瞬間。


長大な尾が、視界を埋めた。


速い。


空中では避け切れない。


レオルドは即座に剣を両手で構え、防御姿勢を取る。


だが――


轟音。


尾の一撃が、剣ごとレオルドを吹き飛ばした。


緑の光が、夜空を弾ける。


そのまま数十メートル先の建物へ激突。


建物の壁が砕け、レオルドの身体ごと崩れ落ちる。


「レオルド!!」


ユウヤの叫びが響いた。


広場が凍りつく。


先頭で斬り込んだ最強の一撃が、ほとんど通じなかった。


その事実だけで、騎士たちの顔から色が消える。


そして竜は、何事もなかったかのようにゆっくりと首を巡らせた。


赤い瞳が、次の獲物を探していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ