表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人助けでポイントを稼いだら、最強ヒーローになっていた ~ネタ装備が進化する異世界譚~  作者: 白峰レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
101/132

第101話「二日酔いのボス」

翌朝。


ユウヤは、ひどい頭痛と共に目を覚ました。


「……っ、頭いてえ……」


酒だ。


昨日、第五の連中にしこたま飲まされた記憶がうっすらある。


いや、正確には――途中からほとんど覚えていない。


団長のベルグがやたら上機嫌で騒ぎまくっていたこと。

副団長のザックが途中から呆れた顔をしていたこと。

エルンが何故か泣きそうな顔で杯を持っていたこと。


そこまでは覚えている。


その先が、曖昧だった。


「……何やってたんだ、俺……」


額を押さえながら身体を起こした、その瞬間だった。


「ボスが起きたぞー!!」

「おはようございますボス!」

「おい、水持ってこい! 朝飯もだ!」

「ボス、今日は軍事演習っすよ!」


「……は?」


ユウヤは目を瞬かせた。


周囲では第五の騎士たちが妙に生き生きしている。

しかも全員、こっちを見ていた。


「待て」


ユウヤは眉をしかめた。


「何だ、ボスって……」


すると、昨日ぶん殴った覚えのある騎士の一人が真顔で言う。


「何だって……昨日、これから俺のことはボスと呼べ!って言ってたじゃないですか」

「ベルグ団長も、今日からボスが第五の頭だって」


「……」


「あと、宴会の途中でボス、自分で杯掲げてましたよ。“俺がボスだ! てめえら全員ついてこい!”って」


「嘘だろ……覚えてねえ……」


そこへ、奥からザックが面倒くさそうな顔で歩いてきた。


「朝からうるせえぞ」


「副団長、おはようございます!」


「はいはい」


ザックはユウヤを見て、小さく鼻を鳴らした。


「起きたか、ボス」


「あんたまで言うのかよ……」


「団長が決めた話だからな。今さら変わらねえよ」


ザックは壁にもたれながら続けた。


「それより、今日は大規模な軍事演習だ。選抜組は全員参加になる。もちろん、ボスもその一人だ」


「……は? 軍事演習!? 聞いてねえし、俺、二日酔いだぞ!?」


「そりゃあ、あんだけ飲まされたらな……」


ザックは呆れたような顔をした。


その後ろで、第五の連中は妙に盛り上がっていた。


「絶てぇボスに恥かかすんじゃねえぞ!!」

「今日は第五が最強ってことを分からせてやる!!」

「第一も第二も第三も第四もまとめて黙らせろ!!」


「朝からうるせえ!! 頭に響くだろうが!」


ユウヤが怒鳴ると、第五の連中が一瞬で背筋を伸ばした。


「「「はい、ボス!!」」」


「だから誰がボスだ……」


頭痛が少し増した気がした。



帝都の外れに設けられた大規模演習場には、朝早くから各騎士団が集結していた。


第一騎士団。

白銀の鎧を揃え、最前列に並ぶ姿はいかにも帝国騎士の花形といった風格がある。

全員が一糸乱れぬ動きで立ち、無言のまま周囲を見渡していた。


第二騎士団。

重装の比率が高く、全体的に威圧感が強い。

厚い鎧と大きな盾、重い得物。黙っているだけで壁のようだった。


第三騎士団。

無駄がない。

姿勢、視線、間隔、そのどれもがきっちり揃っている。

派手さはないが、完成度の高さが際立っていた。


第四騎士団。

鎧は比較的軽く、代わりに杖や魔導具を携えた者が多い。

隊列の後方には魔法陣の刻まれた箱まで並んでおり、明らかに他とは毛色が違う。

帝国騎士団が誇る魔法部隊だ。


そして――第五騎士団。


一応、並んではいる。

本当に一応だ。


列というより、喧嘩寸前の集団にしか見えない。


「おい押すな!」

「押してねえよ! てめえが近いんだよ!」

「ボスに恥かかすんじゃねえぞ!!」

「俺たちが最強だ!!」


「うるせえ!! 黙って並んでろ!!」


ユウヤの一喝で、第五の列がびしっと静まる。


「「「はい、ボス!!」」」


ベルグがドヤ顔でほかの隊の方を見る。


「ガハハハ!! 見ろ! これが新しい俺たちのボスだ!」


そのやり取りだけで、周囲の視線が刺さった。


第一の連中は露骨に眉をひそめ、第二は呆れ、第三は冷たい目を向け、第四は少し引いた顔をしている。


第五は、今日も第五だった。


一方その頃。


第三騎士団の列にいたレオルドは、少し離れた場所からその光景を見ていた。


「……ユウヤは、すごいですね」


思わず、そう呟く。


たった二日で、第五騎士団の中心に立っている。


もちろん、本人の意思ではないのだろう。

だが、それでも結果としてそうなっているのだから、やはりすごい。


「ですが目立ち過ぎですね。二日で第五騎士団のトップになるなんて……」


少し呆れたように首を振る。


そして、その後で小さく呟いた。


「それに比べて私は、しっかり溶け込んでいます」


全く溶け込めていなかった。


第三の列の中でも、レオルドは妙に浮いている。


剣を携えているだけで、只者ではない雰囲気を出している。

明らかに周囲より目立つ。

しかも本人だけ、それに気づいていない。


近くにいた見習いが小さく舌打ちしたが、レオルドはそれすら「緊張しているのでしょう」と解釈していた。


高台へ進行役の騎士が上がる。


「静まれ!」


声が演習場全体へ響いた。


第一から第四までは、すぐに静まった。

第五だけが一拍遅れた。


「ボス、静まれだってよ」

「聞こえてんだよ」


ユウヤが小声で返すと、また周囲が妙に感心したような顔をした。


進行役の騎士は咳払いを一つして、続ける。


「これより、帝国騎士団による大規模軍事演習を開始する! 各騎士団は指定区画へ移動し、順次説明を受けろ!」


ざわめきが少し広がる。


まるで戦争前かと思うほどの大規模演習だ。

普段の訓練とは空気が違う。


各騎士団はそれぞれの区画へ向かって歩き始める。


その途中、ほんの一瞬だけ、ユウヤとレオルドの目が合った。


レオルドは何故か得意げな顔をした。

ユウヤは、何とも言えない顔になった。


(……何かやらかしてねえだろうな、あいつ)


そう思った。


だが、ここでわざわざ声をかければ余計に目立つ。

第三と第五は配置まできっちり離されていた。


レオルドの方もそれは分かっているのか、すぐに視線を戻した。


ユウヤも何も言わず、第五の列へ意識を戻す。


「ボス、第三のやつら、すましててムカつきますね」


「お前らがうるせえだけだ」


「静かにしろ」


すぐ後ろからザックの冷えた声が飛んだ。

少し前を歩くベルグが、楽しそうに振り返る。


「ははっ! 今日も真面目だな、ザック! 演習なんざ、騒いでやってなんぼだろ!」


「そんな訳ねえだろうが!」


第五は今日も平常運転だった。


第一演習の内容は、すぐに発表された。


「第一演習は、各騎士団混成による模擬戦闘だ!」


ざわめきが走る。


各騎士団ごとではない。

混成だ。


つまり、第二、第三、第四、第五、そして第一の騎士が同じ場に入る。


ユウヤは小さく息を吐いた。


「……めんどくせえ」


まだ酒が抜けてない。

二日酔いで気持ち悪い。

だが、少しずつ意識は冴えてきた。


その分、別のものが気になり始める。


整列している他団の中に、何人か妙なやつがいる。


強いとか弱いとかではない。

もっとざらついた、嫌な感じだ。


第二、第三、第四騎士団だけ違和感がある。

どこかで感じたことのある違和感が。


「……何だ、ありゃ」


小さく呟く。


一方、第三の列ではレオルドもまた同じものを感じ取っていた。


やはりいる。


訓練の時に感じた、あの気持ちの悪い感覚。

今日は普段よりも濃い。


第三だけではない。

第二にも。

第四にも。


特に第四の一部からは、魔力とは違う、もっとどろりとした嫌な圧が混ざっている。


第四の若い騎士が、軽く杖を振っただけで魔力がぶわりと膨らんだ。

本来その年齢、その階級で出せるはずのない密度だった。


レオルドは少しだけ目を細めた。


(やはり……)


その瞬間だった。


第二の列の端にいた騎士が、重装のくせに妙に軽い足取りで位置を変えた。

鎧の重さに見合わない踏み込みだった。


さらに第三では、昨日呼び出されていた見習いの一人が、口元を拭うようにして下を向く。

息が荒い。

目もどこか虚ろだ。


第四では、魔法部隊の一人が杖を握る手を小刻みに震わせていた。

だが魔力だけは、異様に高い。


「おい、しっかり立て」

「あ、はい……」


横の騎士に小突かれ、その見習いは返事をする。

だが、目が妙だった。


血走っている。


レオルドはその様子を見つめた。


(前回の訓練の比じゃない……)


一方、ユウヤの隣では、エルンが小さく袖を引いた。


「ゆ、ユウヤさん……」


「何だ」


「第二も、第三も……あと第四の人たちも、何か変じゃないですか……?」


ユウヤは少しだけ目を見開く。


エルンですら分かるくらいか。


「……ああ」


短く答えた、その時だった。


少し前を見ていたベルグが、舌打ち混じりに呟く。


「ちっ……ありゃあ、だいぶキマってんな……」


ユウヤが眉をひそめる。


「どういうことだ?」


後ろからザックが低く続けた。


「……例の薬か。第一の方は総長が上手くやってるようだが」


ユウヤの目つきが変わる。


「おい、それ。詳しく――」


そこで、演習場全体に号令が響いた。


「各隊、開始位置につけ!!」


ざっと空気が張り詰める。


ザックは前を向いたまま言う。


「後で話す。今は動くぞ」


ユウヤは舌打ちを飲み込んだ。


頭痛はまだ残っている。

だが、もうそれどころではない。


第二。

第三。

第四。


全部にいる。


逆に、第一と第五には今のところ感じない。


ただの演習じゃない。


そんな確信が、じわじわと形を持ち始めていた。


ざっと地面を鳴らすように、騎士たちが一斉に動き出した。


第一から第五まで。

帝国騎士団のすべてが、今ひとつの演習場で交わる。


その中で。


ユウヤとレオルドは、それぞれ別の列にいながら、同じ異常を見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ