part3 再会
復活してみた。
俺は一旦基地から外に出た。何処かで食事をするためだ。
腕時計を見ると既に7時を過ぎていた。確認するとより一層腹が減ってきた。
「どうせなら日本っぽい飯を――」
そう言いかけたところで俺は――会いたくなかった人物と出会った。
「え…お、お兄ちゃん…?」
「…真奈、か」
俺たちはその場で動くことが出来ずにいた。それもそうだ。もう家族には3年もあっていないのだから。
俺はなんとか足を動かし反対方向へ歩こうとする。
「待ってお兄ちゃん!」
真奈が俺を呼び止める。だが俺はその声を無視して歩き続ける。
ダメだ。ここで関わりを持ってしまうと真奈が――家族が危険に晒されるかもしれない。スマン真奈。今は許してくれ。
「待ってって、言ってるでしょ!」
ガバッと後ろから真奈が俺の体を掴んだ。それで流石に目立ったのか周りの人がこちらを見てくる。くそっ、ここで目立ったらそれこそ面倒だ。
俺は真奈を振り返って見る。すると真奈は涙を流しながら俺を見ていた。
「ねぇ、今までどこ行ってたのよ!?皆どれだけ心配したと思ってるのよぉ…」
「っ!…真奈…本当にごめん」
俺は真奈の頭をそっと撫でる。そういやよく真奈が落ち込んでいた時はこうして慰めていたっけな。そうして撫でていると真奈も落ち着いてきたようだ。
「とりあえず一緒に帰ってよ。お父さんもお母さんもとっても心配してたんだから!」
泣き止んだ真奈はそう言って俺の腕を引くが、俺はその手を軽く振り払う。
「それは出来ない…俺がいると皆が危ないんだ。分かってくれ」
「は…?それってどういう意味なの?何か危ないことにでも巻き込まれてるってことなの?」
真奈は俺の体を激しく揺する。だが俺はその理由について言うわけにはいかない。言ったら確実に”奴ら”は始末してくるはずだから。
正直俺だって家に帰りたい。父さんと母さんと真奈の4人でまた一緒に暮らしたいさ。けど…俺はもう”普通の人間”じゃないんだ。それに”奴ら”の行っている虐殺行為を知って無視するなんて俺には出来ない。止める力があるのは俺だけなんだ。だからまだ帰れないんだ。
「分かってくれとは言えないけどさ…お願いだ。もう少しだけ待っててくれ。必ず俺は帰るから。また一緒に暮らせるから」
俺はそう言って真奈の頭に手をのせる。真奈は困惑と怒りと悲しみ…様々な感情が混じった表情をしていたが、ふぅっと小さな溜息を付くと、
「…絶対だからね!絶対絶対絶~~対っ!ちゃんと帰ってきてよ!じゃないと一生恨むからね!約束だからね!」
そう力強く言うのだった。けどまだ納得はしてないだろう。コイツの性格上明らかに強がってるしな。
「分かった約束する。安心しろ、俺は約束は守る男だ!」
「まったく……信じてるからね」
そう言って俺たちはほんの少しぎこちなくはあるが笑いあった。
(全てを終わらせて必ず帰らなきゃな…絶対に!)
俺は心の中で強く誓った。
「そういやこんな時間までどこに行ってたんだ?部活か何かか?」
「うん。高校で陸上部に入ってその練習の帰り」
ふと思った疑問を口にすると真奈は案外普通に答えた。良かった、話題変えにしては下手だったはずだけど自然に出来たぞ。
そう聞いて自分の本来の目的を思い出した。
「そういや飯とか食ったのか?」
「え?いやまだだけど。お父さんとお母さん出かけててちょっと帰るの遅くなるって言ってたし帰りにお弁当でも買おうかなって」
つまりまだ食べてないのか。よしここは兄の威厳を見せる時だな。
「じゃあ飯でも食いに行かないか?俺も飯食おうとしてたとこだし」
「そうなの?じゃあ一緒に行こう!」
そう言うが否や真奈は俺の腕を掴んで歩き出した。てっきり悩んだり断るかと
思ってたけどこれは以外な反応だってかどんだけ力強く引っ張ってんだよ!
「ちょ、どうしたんだよ!?」
「ん?別に~。そういえば近くにお洒落なレストランがあるんだった。そこにしよ、お兄ちゃん!」
思わぬ妹のテンションに戸惑いつつ俺は腕を引かれていった。ちなみにそこ…高いのか?
「ん?ん~ん?おやおや、やはり貴方でしたか」
町の上空。そこを飛んでいる彼は夜空をじっくり見ないと誰も分からない。
「スパイダーが倒されたのは驚きでしたが…やはり間違いは無かったようですね」
そして彼は気づいた。奴の腕を引いている女性の存在を。
彼はニタァと笑うと
「これは…フフフ。貴方に本当の絶望を味あわせてあげましょう、”ホッパー”」
そう呟いた。その呟きは誰にも聞こえることなく夜空に溶けていった。
勢い100%です。