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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第8話:追跡、そしてドラッグストア

自分たちの罠のせいで風邪を引いてしまった風間くんを前に、罪悪感で胃を痛める渉と鈴木さん。


放課後、責任を感じている一条さんが動き出します。

その日の授業中、俺と鈴木さんはずっと針のむしろに座っている気分だった。

斜め前の席で、風間は時折苦しそうに咳き込み、ノートを取る手も覚束ない。

そして、そのさらに前の席の一条さんは、授業中にもかかわらず何度も後ろを振り返り、痛ましそうな視線を風間に送っていた。


「……一条さん、完全に気にしてるな。自分のせいで風邪引いたって思ってる」

「……うん。責任を感じるヒロイン。……でも、本当の戦犯は私たち」


鈴木さんの冷徹な事実確認が、俺の心にグサグサと突き刺さる。

なんとか一日が終わり、放課後のチャイムが鳴った。


風間はホームルームが終わるや否や、フラフラとした足取りで真っ先に教室を出て行った。

すると、それを見ていた一条さんも、慌てた様子で自分のカバンに荷物を詰め込み、風間を追うように小走りで教室を飛び出していく。


「……佐藤くん、行くよ」

「ああ、追跡だ。俺たちの贖罪ミッションが始まるぞ」


俺と鈴木さんもすぐさま立ち上がり、二人の後を追った。

校門を出て、住宅街の道へ。

数十メートル先を、熱で足元がおぼつかない風間が歩いている。

そして、そこからさらに十メートルほど後ろを、一条さんが心配そうについていく。

俺たちはさらにその後ろから、二人の動向を見守り続けた。


やがて、風間が俺のアパートの向かいにあるマンションに辿り着き、エントランスに入っていった。

そのすぐ後に、一条さんもマンションへと吸い込まれていく。


俺たちは急いで向かいの俺のアパートの二階、つまり自室へと駆け上がった。

息を潜め、窓のカーテンの隙間から、道路を挟んだ向かいのマンション監視する。


「初めてお部屋上がるのがこんな理由だとは」

「確かに…。……風間は自分の部屋に入った。一条さんも、まずは自分の部屋に戻ったのかも」

「……うん。でも、絶対このまま終わらない。……責任を感じてるヒロインが、熱を出した主人公を放置するわけがない」


鈴木さんの言う通りだった。

十分ほど待っただろうか。風間の部屋に、一条さんが姿を現した。

学校の制服ではなく、ゆったりとした薄手のパーカーにロングスカートという、少し急いで着替えたようなラフな私服姿だ。学校では見せないその無防備な格好が、たまらなく可愛い。


「……よし、入った」

「……看病イベント、発生。密室フラグ」


俺と鈴木さんは小さくガッツポーズをした。だが、喜んでいる場合ではない。


「一条さんは今、風間の状態と、部屋に『看病に必要なもの』があるかを確認してるはずだ。……熱を出した男の一人暮らしの部屋に、都合よく風邪薬や冷えピタ、スポーツドリンクが常備されてるわけがない」

「……ってことは」

「ああ。一条さんは状況を確認した後、絶対に買い出しに出てくる。……ここから一番近いドラッグストアは、駅の向こうの『マツモト薬局』だ」

「……先回りするの?」

「当然だ。風間をこれ以上悪化させないために、俺たちは完璧な看病セットを一条さんに買わせなきゃならない」


俺が力強く頷くと、鈴木さんはメガネをクイッと押し上げた。


「……了解。ミッション『贖罪』、フェーズ2」


俺たちは急いでアパートを飛び出した。

裏道の細い路地を駆け抜け、住宅街をショートカットする。誰に頼まれたわけでもないのに、どうして俺たちはこんなに必死に走っているのだろうか。

全ては、俺たちが仕掛けたトラップのせいだ。風間を救うため、そして一条さんに完璧な看病を成功させるため、モブは裏道を全力疾走する。


息を切らしながら、俺たちは一条さんよりも数分早くドラッグストアに到着した。

乱れた呼吸を整え、店内に入る。適当に歯磨き粉のコーナーの前に立ち、商品を選んでいるフリをしながら入り口を監視した。


予想通り、それから十分後。

自動ドアが開き、肩で息をしながら、私服姿の一条さんが店内に駆け込んできた。

額には汗がにじみ、必死な形相で店内を見渡している。風間の部屋で彼の辛そうな姿を見て、居ても立っても居られなくなったのだろう。


彼女はまず冷却シートのコーナーへ向かい、箱をいくつかカゴに放り込んだ。そして、次に風邪薬のコーナーへとやってきたが――そこでピタリと足を止めた。

棚には無数の薬が並んでいる。一条さんは箱の裏を見比べながら、どれを買えばいいのか分からずに困惑し、泣きそうな顔になっていた。


「……よし、行くぞ」

「……うん。ミッション開始」


俺と鈴木さんは、不自然にならないようにゆっくりと歩き出し、一条さんの背後へと近づいた。


「……あれ? 一条さん、じゃないか?」


俺がわざとらしく、少し驚いたような声で背中越しに声をかける。

一条さんはビクッとして振り返り、俺と鈴木さんの顔を見て、目を丸くした。

第8話をお読みいただき、ありがとうございました。


ドラッグストアで途方に暮れる一条さんの背後に、音もなく忍び寄るモブ二人(笑)。


ただ傍観しているだけだった渉と鈴木さんが、ついに物語のメインキャラクターに直接接触しました。

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