表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/33

第7話:傘と罪悪感の等価交換

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


モブの罠にハマり、雨宿りを余儀なくされた一条さん。

そこへ現れたのは、しっかり傘を持参した主人公・風間くんでした。


観客席から見守る渉と鈴木さんの前で、王道の「相合傘イベント」は発生するのか!?

昇降口には、雨宿りをする生徒たちが少しずつ増え始めていた。

一条さんは下駄箱の前に立ったまま、スマホで雨雲レーダーでも見ているのか、困り果てた顔で画面と外の景色を交互に見つめている。


「……来た」


隣に潜む鈴木さんが、短く囁いた。

階段の方から、いつものように猫背で気配を消した風間海斗が降りてくる。

そして、彼の手には――しっかりとしたビニール傘が握られていた。


「おいおい、あいつ俺の洗濯物トラップをすり抜けて傘持ってきたのかよ」

「……警戒心マックスの主人公。でも、好都合。これで『傘を貸す』イベントが発生する」


俺たちは柱の陰から、祈るような気持ちで風間の動向を見守った。

風間は昇降口に立ち尽くす一条さんの背中を見つけると、一瞬だけ歩みを止めた。

そして、小さく息を吐いてから、彼女の隣へと歩み寄っていく。


「おい風間、ここでスルーして帰ったら男じゃないぞ。一生モブのままだぞ」

「……行け、風間くん。ヒロインがピンチ」


俺たちの念が通じたのか、風間は一条さんの横に立つと、ぽつりと声をかけた。


「……一条さん。傘、忘れたの?」

「あっ、風間くん……。うん、朝は晴れてたし、お向かいさん洗濯物干してたから、つい……」


一条さんが気まずそうに笑う。

すると風間は、自分が持っていたビニール傘を、迷うことなく一条さんの前にスッと差し出した。


「え……?」

「これ、使って。俺、走って帰るから」

「だ、だめだよ! こんなに降ってるのに、風間くんが濡れちゃうよ!」


一条さんが慌てて断ろうとするが、風間は傘の柄を彼女の手に無理やり押し付けた。


「いいから。男が少し濡れるくらい、どうってことない。……じゃあな、気をつけて帰れよ」


そう言い残すと、風間は一条さんが止める間もなく、激しい雨が打ち付ける外へと勢いよく飛び出していった。

水しぶきを上げながら、あっという間に見えなくなっていくその背中。

残された一条さんは、押し付けられた傘を両手でギュッと握りしめ、雨に消えた風間の背中を、頬を真っ赤にして見つめていた。


「……よしっ!!罪悪感半端ないけどっ」

「……第一関門、突破。完璧な王道展開」


俺と鈴木さんは、暗がりで音のないハイタッチを交わした。

ヒロインを気遣い、自らは雨の中を駆け抜ける主人公。

それを胸に刻み込むヒロイン。

俺たちの仕掛けたトラップから、見事なまでに理想的なラブコメイベントが錬成されたのだ。



翌朝、すっかり晴れ渡った空の下、俺たちはいつものように教室でターゲットの登校を待っていた。

ガラリ、と教室のドアが開く。

入ってきた風間を見た瞬間、俺と鈴木さんは同時に息を呑んだ。


「……ゴホッ、ケホッ……」


風間は、誰の目から見ても明らかに体調が悪そうだった。

顔色は青白く、目の下にはうっすらとクマができている。

重い前髪の隙間から見える目は潤んでおり、熱があるのは明白だ。

彼は自分の席につくや否や、机に突っ伏してしまった。


「……佐藤くん」

「……ああ、分かってる」


俺と鈴木さんは、顔を見合わせた。

斜め前では、一条さんが心配そうに風間の背中をチラチラと見つめている。


風間が風邪を引いた原因。

それは紛れもなく、昨日の大雨の中を走って帰ったからだ。

そして、彼が走って帰るハメになったのは、一条さんが傘を忘れたから。

一条さんが傘を忘れたのは――俺がベランダに、錯覚用の洗濯物を干したからだ。


「……やばい。完全に俺たちのせいで風邪引かせた」

「……罪悪感が、エグい。フィクションの裏側には、リアルな犠牲が伴う」


俺たちは頭を抱えた。ただラブコメを観測したかっただけなのに、まさか主人公に物理的なデバフを与えてしまうなんて。

俺と鈴木さんは、机の下で固く拳を握りしめ、心に誓った。

この後、風間と一条さんのために、全力でサポート(贖罪)をしなければならない、と。

第7話をお読みいただき、ありがとうございました。


傘を押し付けて雨の中を走り去る風間くん、完全にイケメン主人公ムーブでしたね。

しかし、フィクションの裏にはリアルな犠牲が……。


自分たちの仕掛けたトラップで主人公を物理的にデバフ(風邪)してしまい、特大の罪悪感を抱えるモブ二人。次回、第8話からは怒涛の「贖罪ミッション」がスタートします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ