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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第6話:モブの天気予報と錯覚のベランダ

順調に距離を縮める主役二人を眺めつつ、モブ二人は次の「イベント」の準備に取り掛かります。

武器は天気予報と、向かいのマンションから丸見えの「ベランダ」。


人間の心理を突いた、悪魔的?な錯覚トラップの結末はいかに?

一階の『カフェ・シュガー』でのアルバイトを終え、二階の自室に戻った俺は、ベッドに寝転がりながらスマホの画面を見つめていた。

天気予報アプリの画面には、明日の午後から局地的に降り注ぐであろう「にわか雨」のマークが、これ見よがしに表示されている。


「……にわか雨、ね」


独り言を呟きながら、俺はメッセージアプリを開いた。

連絡先の一覧から、無表情な猫のアイコン――昨日追加したばかりの鈴木さんのアカウントをタップする。


『明日の午後、にわか雨らしいぞ』


たった一言、それだけを送信した。

すると、数十秒も経たないうちに既読がつき、返信が送られてきた。


『……雨。つまり、相合傘イベントの確定フラグ』


さすがはラノベを何十冊も読み込んでいる同志だ。

俺が言わんとしていることを一瞬で察知したらしい。

俺は起き上がり、窓の外を見た。

道路を挟んだ向かい側には、一条さんと風間が住むお洒落なマンションが建っている。


『ああ。でも、あいつらが両方ともしっかり傘を持ってきてたら、ただの「雨の日の下校」で終わってしまう。どっちかに傘を忘れさせる必要がある』

『……難しい。高校生は天気予報を見る』

『だから、錯覚させるんだ。人間の無意識を突く』


俺は、自分の部屋が「向かいのマンションから丸見え」であるという地の利を最大限に活かす作戦を打ち明けた。

名付けて、『錯覚のベランダ洗濯物トラップ』だ。

俺の部屋のベランダは、風間たちのマンションの部屋の窓と向かい合っている。

明日の朝、俺がわざとベランダにたっぷりと洗濯物を干しておけば、朝起きてカーテンを開けた二人は、視界の端に映るその光景を見て無意識にこう思うはずだ。

『あ、向かいの人が洗濯物を外に干してる。

ってことは、今日は一日晴れるんだな』と。

人間は、他人の行動を見て無意識に状況を判断してしまう生き物だ。


『……なるほど。悪魔の所業。でも、天才』


鈴木さんからの短い称賛を受け取り、俺はクローゼットから「最悪濡れてもいい、どうでもいいTシャツやタオル」をかき集めた。

明日の朝、これをベランダに並べてやる。モブにできる精一杯の裏工作だ。


翌朝。

俺は作戦通り、これ見よがしにベランダへ洗濯物を干してから家を出た。

駅までの道で、後ろから「……おはよう」と鈴木さんが合流してくる。


「おはよう。トラップは仕掛けてきたぞ。これであいつらが傘を持ってきてたら、警戒心が強いってことだ」

「……完璧。でも、もし両方とも傘を忘れて、しかも雨宿りしたまま動けなくなったらどうするの?」

「そん時は、俺の折りたたみ傘をこっそり風間の靴箱に入れておくさ。『たまたま置き傘があった』ってことにして、一条さんに貸してやれるようにな」


俺たちはオタク特有の早口で作戦のバックアップまで完璧に打ち合わせながら、学校へと向かった。


そして、運命の放課後。

六時間目の途中から、空は急激に暗くなり、予報通りにバケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨が降り始めた。

窓を叩く激しい雨音に、教室のあちこちで「うわ、マジか」「傘持ってないんだけど」という悲鳴が上がる。


ホームルームが終わるや否や、俺と鈴木さんは無言で視線を交わし、教室を誰よりも早く飛び出した。

向かうは当然、昇降口の死角だ。


下駄箱の陰に隠れて待つこと数分。

階段を降りてきた一条さんが、外の景色を見てピタリと足を止めた。

彼女の手には、傘がない。

完璧な美少女が、激しい雨のカーテンを見つめながら、絶望したように肩を落として途方に暮れている。


「……佐藤くん。作戦、大成功」

「ああ。一条さん、見事に引っかかってくれたな。あとは……風間だ」


俺たちは息を潜め、次に現れるはずの「主人公」の登場を、今か今かと待ちわびていた。

第6話をお読みいただき、ありがとうございました。


渉の仕掛けた「錯覚のベランダ洗濯物トラップ」、見事に一条さんを引っかけることに成功しました。

土砂降りの雨の中、傘を持たずに途方に暮れる完璧なヒロイン。

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