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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第5話:モブの帰り道、次なるフラグへ

落とし物イベントを無事に(裏で)成功させた渉と鈴木さん。

ミッションの余韻に浸りながら、ターゲット二人をこっそり尾行して帰ります。


少しずつ縮まる主役たちの距離と、モブ二人の平和な日常。

「……ふふっ。今日のミッション、完璧だった」

「鈴木さん、さっきからニヤニヤしすぎだぞ。道行く人に不審者扱いされるからな」


学校からの帰り道。

俺と鈴木さんは、少し離れた前方を行く一条さんと風間の背中を眺めながら歩いていた。

もちろん、尾行だなんて人聞きの悪いものじゃない。家が同じ方向だから、ただ「偶然」後ろを歩いているだけだ。俺たちも一応、モブとしての倫理観は持ち合わせている。


「……だって、一条さんのあの顔。完全に風間くんへの好感度が爆上がりした顔だった。……風間くんも、ちょっと誇らしげだったし」

「違いない。あの『俺が探すよ』って声のかけ方、地味メンのくせにイケメンムーブかましてたもんなぁ」


俺たちはオタク特有の早口で、先ほどのイベントの感想戦に花を咲かせていた。

前方を行く二人の距離感は、昨日アパートの前で見た時よりも明らかに縮まっている。

並んで歩く、とまではいかないものの、時折一条さんが風間の方を振り返って何かを話し、風間がそれに短く頷いているのが見えた。


「……なんか、いいよな。ああやって、少しずつ距離が縮まっていくのを見るのって」

「……うん。自分じゃない誰かの青春を、安全な場所から摂取する。……モブにしか味わえない贅沢」

「全くだ」


俺は自動販売機で買った缶コーヒーを開け、一口飲んだ。

自分自身が恋愛をしたいとか、ヒロインとどうにかなりたいとか、そういう野心は本当にこれっぽっちもない。

ただ、ああいう「尊い」光景が現実で繰り広げられている事実があれば、それだけで毎日の退屈な学校生活も悪くないと思えるのだ。


やがて、前を歩いていた二人が、俺の住むアパートの向かいにあるマンションに到着した。

俺と鈴木さんは少し離れた電柱の陰で立ち止まり、その様子を見守る。


「……じゃあ、風間くん。今日は本当にありがとう」

「……気にすんな。それじゃ」


二人はマンションのエントランスで言葉を交わし、別々のタイミングで中へと入っていった。

昨日みたいな気まずさはなく、二人で鍵を探したことで、確実に二人の間の壁が薄くなっているのが遠目からでも分かった。


「……よし。今日の観測はここまでだな」


俺が息を吐くと、鈴木さんも満足そうに頷いた。


「……お疲れ様、佐藤くん。最高のアシストだった」

「鈴木さんもな。一条さんの死角を作る動き、プロのそれだったぞ」

「……ふふ。伊達にラノベを何十冊も読んでない」


少しだけドヤ顔をする鈴木さんが、なんだか面白くて、俺は軽く笑い声を漏らした。

昨日知り合ったばかりだというのに、妙な連帯感が生まれているのが可笑しい。


「じゃあ、俺はバイトあるから。また明日な」

「……うん。また明日」


鈴木さんと別れ、俺は一階の『カフェ・シュガー』へと向かった。

バイトの準備をしながらスマホを取り出し、何気なく天気予報のアプリを開く。


『明日の午後から、局地的なにわか雨に注意。傘を持ってお出かけください』


「……にわか雨、か」


画面の傘マークを見つめながら、俺の脳内に一つの「ラブコメ展開」がよぎる。

放課後、突然の雨。

傘を持っていなくて困っているヒロインと、そこへ通りかかる主人公。


「……これは、次のイベントの準備が必要かもな」


俺は誰にも聞こえない声で呟き、バイトのエプロンをキュッと締めた。

モブの平穏な日常は、どうやら明日も忙しくなりそうだった。

第5話をお読みいただき、ありがとうございました。


アシスト大成功でホクホクのモブ二人。

一条さんと風間くんの距離も、少しずつですが確実に縮まっています。


そして最後に流れた、天気予報の「にわか雨」のニュース。

ラブコメにおいて、雨が降るということは……もうお分かりですね?

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