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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第49話:デートの報告と、ないはずの抱き枕

夕方。

俺は彩を家まで送っていった。

帰り道では来週末のS先生のイベントの話題で盛り上がったが、俺の頭の片隅には、どうしても別の緊張感が居座っていた。


(今週末、俺、初めて女の子の部屋に上がるのか……)


しかも、親公認で。

ていうか、色んな服を見せられるんだろうけど……ぶっちゃけ、どれを着てても可愛いって思いそうだし、ちゃんと俺が選べるのか不安なんだけど。

どう考えてもモブの分際で経験していいイベントじゃない。

俺は帰宅後も無駄にドキドキしてしまい、変に寝不足のまま連休明けの朝を迎えることになった。


木曜日。

朝食を済ませて制服に着替え、カバンを持って玄関のドアを開ける。


「おはよう、渉くん」


「……は?」


アパートのドアの目の前に、スクールバッグを持った彩が立っていた。


「いや、おはようじゃないだろ。なんでお前がいるんだよ」

「一緒に学校に行こうと思って」

「だからなんで」

「行きたかったから来ただけ。ほら、行くよ」


有無を言わさず歩き出す彩の背中を、俺は慌てて追いかける。

(幼馴染でもないのに、朝、家の前で待ち伏せして一緒に登校って……完全にヒロインのムーブじゃないか)

俺は内心でツッコミを入れつつも、隣を歩く彩のペースに巻き込まれるまま、学校へと向かった。



その日の昼休み。

俺と彩は、一条さんによって校舎裏の少し人目のつかない場所へ連行されていた。


「それでね、デートだけど……」

一条さんは周囲を少し気にするようにキョロキョロした後、嬉しそうに声を弾ませた。


「佐藤くんのアドバイス通り、『一緒にいて楽しい』って伝えてみたの。そしたら風間くん、すっごく照れてたけど……最後は笑ってくれた!」


(おおっ……!)


あのガードの固い海斗が、ちゃんと女の子の前で自然に笑ったらしい。一条さんのストレートな好意が、確実に海斗の壁を壊し始めている。


「よかったね、一条さん」

「うん! 本当にありがとう、二人のおかげだよ。……また相談に乗ってね?」

「もちろん。いつでも言って」


彩が優しく微笑むと、一条さんは「ありがとう!」と嬉しそうに言って教室へ戻っていった。


「次のデートはいつなんだろうね」

「まだ決まってないらしいけど、まあ時間の問題だろ。順調そうで何よりだな」

主役カップルの尊い進展にほっこりしながら、俺たちも教室へと戻った。



そして金曜日、放課後。

明日はついに、彩の家で服を選ぶ日だ。


「そういえば、明日何時に行けばいい?」

帰り際、下駄箱で靴を履き替えながら俺が尋ねると、彩はピタッと動きを止めた。


「んー……何時でもいいよ」

「何時でもって、朝早く行きすぎても迷惑だろ」

「ううん、全然。渉くんの好きな時間に来て?」


そう答える彩の目が、明らかに泳いでいた。

(……なんだ? 絶対に何か企んでるだろ、こいつ)

とはいえ、無理に追及するのも野暮だ。

明日はバイトも休みにしてあるし、まあ昼前くらいに適当に行けばいいか。


「わかった。じゃあ、また明日な」

「うん、また明日」


俺たちは家の前で別れ、俺は休日前夜の解放感に浸りながらアパートへ帰った。

明日は休みだ。

アラームもかけず、泥のように眠ってやる。

俺はベッドにダイブし、そのまま深い眠りについた。


土曜日。


朝の七時頃、一度ふっと意識が浮上した。

窓から差し込む朝日で部屋が明るい。

でも、今日はバイトもないし、彩の家に行くのも昼からでいい。

俺は「二度寝最高……」と心の中で呟きながら、傍にあった抱き枕をぎゅっと抱きしめて、再び眠りの底へ沈んだ。


次に意識が戻ってきたのは、午前十時。

(……よく寝たな。でも、もうちょっと寝れるか……)


休日の特権である三度寝を満喫しようと、俺は腕の中にある抱き枕をさらにぎゅっと抱き寄せた。

柔らかくて、少しだけ温かくて、なんだか最近よく嗅いでいるような、嗅ぎ慣れた匂いがする。


……ん?


まどろみの中で、俺の脳細胞がゆっくりと違和感を訴え始めた。


(温かい……?)

(嗅ぎ慣れた匂い……?)


ていうか俺、抱き枕なんて持ってなくね……?


俺はパチリと目を開けた。

視界に入ってきたのは、俺の腕の中にすっぽりと収まっている、見慣れたショートヘアのつむじ。


恐る恐る布団の中を覗き込むと、そこには。

部屋着を着て、俺の腕の中でスヤスヤと規則正しい寝息を立てている彩の姿があった。


「…………は?」


俺の口から、間抜けな声が漏れる。


(どういう状況だよ!!)


俺の頭の中で、警報がけたたましく鳴り響いた。

今日、俺が女の子の部屋に行く予定だったんじゃないのか。

なんで、朝起きたら俺の布団の中に、女の子が潜り込んでいるんだよ!


腕の中の柔らかい感触に心臓が爆発しそうになりながら、モブである俺の土曜日は、とんでもないパニックと共に幕を開けた。

お読みいただき、ありがとうございました。

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