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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第41話:情報収集と、相棒への連絡

「いや、本当に助かったよ、佐藤。俺一人だったら、何を買えばいいか分からなくて一日中お店の中を彷徨うことになってたと思う」


カジュアルブランドのロゴが入った大きな紙袋を提げながら、海斗が本当にホッとしたような顔で言った。

いつもは重たい前髪の隙間から地面ばかり見ている男が、今はちゃんと前を向いて歩いている。

まともな服を買ったことで、ほんの少しだけ自信が芽生えたらしい。


「気にすんなって。どうせ俺も自分の服を買いたかったし、ちょうどよかったよ」


俺は、自分の分の小さな紙袋を軽く持ち上げて見せた。


「そういえばさ、明日って何時待ち合わせなんだ? 慣れない服着るんだから、当日の朝に焦らないように逆算して動いたほうがいいぞ」


「あ、そうだね。えっと、明日は十時に家を出て、一緒に行こうって話になってるんだ」


「なるほどな。まあ、新しい服着てビシッと決めてこいよ。健闘を祈る」

「うん、ありがとう。佐藤のおかげで少し自信が出たよ」


駅の改札前で、海斗は何度も頭を下げてから自分の家へと向かっていった。

あいつの背中を見送りながら、俺は小さくガッツポーズを作る。


(よし。明日のターゲットの動きは完全に把握した。成功してほしい、見守りたい。)


一人になった俺は、ポケットからスマホを取り出し、トークアプリを開いた。

宛先は、昨日から下の名前で呼ぶようになった相棒、『彩』だ。


『明日、十時に家を出発してデートらしい。』


そう打ち込んで送信ボタンを押す。

画面を見つめていると、一瞬で『既読』の文字がついた。

スマホ握りしめて待ってたのかよ、と少しおかしな気分になる。

いつもなら、ここでスタンプか短い了解のメッセージが返ってくるはずなのだが。


ブブブッ、ブブブッ。


突然、スマホの画面が切り替わった。

表示されたのは『彩』という文字と、通話の着信画面。


(えっ!? 電話!?)


俺の心臓が、ドクンと大きく跳ねた。

学校で話すか、用件をLINEでやり取りするくらいだったのに、いきなりの電話。しかも休日。

ただの通話なのに、なぜか物凄く焦ってしまい、俺は「んんっ」とわざとらしく咳払いをして喉を整えてから、通話ボタンをスワイプした。


「……もしもし」

『あ……もしもし、渉くん?』


耳元から聞こえてきたのは、普段の学校での淡々としたトーンより、少しだけ柔らかくて、どこか距離の近い彩の声だった。

電話越し特有の息遣いが妙に生々しくて、歩くスピードが無意識に遅くなる。


『急にごめん。テキストより、直接聞いた方が早いかなって思って。……なんで、十時出発なんて分かったの?』

「あ、ああ。今日さ、海斗のやつに『女の子と出かける服がない』って相談されて、さっきまで一緒に服買いに行ってたんだよ。で、その流れで聞き出した」

『へえ。そうだったんだ。……風間くん、いい服買えた?』

「アイツ無駄にスタイルいいから、何着てもサマになってたよ。明日は一条さんも絶対驚くと思う」


俺がそう答えると、電話の向こうで彩が「ふふっ」と小さく笑う気配がした。


「……で、まあ、その、なんだ」

俺は空いている方の手で後頭部をかきながら、少しだけ早口で付け足した。


「ついでに俺も、無難な服買ったけど。明日の任務用に」


別に言う必要もなかったのに、なぜか自分から口走ってしまった。

見守り任務で悪目立ちしないため。

お洒落な彩の隣を歩いても浮かないための、ただの『カモフラージュ』だ。そう心の中で言い訳を重ねる。


電話越しに、数秒の空白が落ちた。

沈黙がやけに長く感じて、「あれ、電波悪いか?」と言いかけた時。


『……そっか』


彩の声が、さっきよりもほんの少し、弾んだように聞こえた。


『……楽しみ』


たった一言。

それだけで、俺の顔が一気に熱くなった。

画面越しの文字じゃなくて、直接耳に届く声の破壊力はとんでもない。


「い、いや、俺の服なんてただのカモフラージュだから、別に期待すんなって。ただの地味な服だし」

『ふふ。……じゃあ、私も明日はカモフラージュ、頑張らないと』


彩は俺の必死の言い訳をサラッと流すと、いつもの真面目なトーンに戻って話を切り出した。


『向こうが十時に家を出るなら、私たちもそれに合わせないといけないね。……じゃあ、明日はそれに間に合うように、私が渉くんの家に行くね。』

「お、おう。分かった」

『うん。……じゃあね、渉くん。また明日』


ツーツー、という電子音が響き、通話が切れた。


俺はスマホを耳に当てたまま、立ち尽くしていた。

頭の中を、さっきの『楽しみ』という声が何度も繰り替えされている。


「……電話越しの声、可愛いな……」


ポツリと呟いた自分の声は、完全に浮かれた男子高校生のそれだった。

俺たちはただの裏方で、明日は主役の二人を見守るためのミッションだ。

頭ではそう分かっているのに、どうしようもなく明日が楽しみになってしまっている自分がいる。


モブとしての言い訳は、もうとっくに限界を迎えていた。

第41話をお読みいただき、ありがとうございました。

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