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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第24話:週明けのだるさと、GWの下見計画

月曜日。

週明け特有の、どこか気だるい空気が教室全体に漂っていた。

週末の休み気分が抜けきらず、あちこちから小さなあくびが漏れている。


俺は自分の席に座り、頬杖をつきながらぼんやりと隣の席へ視線を向けた。


鈴木さんは、指定の制服のボタンをきっちりと留め、少し背中を丸めながら文庫本を読んでいる。

学校での彼女は、いつも通りの『目立たない図書委員』といった雰囲気だ。

でも、土日に俺の部屋で見せたあのクールな私服姿や、無防備な部屋着姿を知ってしまった後だと、どうしたってそのギャップに戸惑ってしまう。

あんなに可愛いのに、なんで学校ではわざわざこんな地味な格好をしているんだろう。


純粋な疑問が湧いて、無意識のうちにじっと見つめてしまっていたらしい。

不意に、鈴木さんが本から顔を上げ、メガネの奥の瞳で俺を見た。


「……どうかした? 私の顔、何かついてる?」

「えっ、いや。全然問題ないよ。」


俺が誤魔化すようにパタパタと手を振ると、鈴木さんは小さく小首を傾げた後、


「……そっか」


とだけ言って、再び視線を本へと戻した。

危ない危ない。

ただの友達だと思っている相手に、じろじろと見つめられていたら不気味だろう。

俺は小さく息を吐き、自分も教科書を開いて適当に文字を追うふりをした。


午前中の授業が終わり、昼休みのチャイムが鳴る。

今週の水曜日、二十九日からは待ちに待ったゴールデンウィークが始まる。

カレンダー通りでもかなりの連休になるため、クラスのあちこちからは「連休どこ行く?」という浮足立った会話が聞こえてきていた。


俺は弁当の空き箱を片付けながら、隣で同じようにお茶を飲んでいる鈴木さんに小声で話しかけた。


「いよいよ今週から連休だな」

「……うん。水曜日から」

「あの二人……風間と一条さん、この連休で絶対何かあるよな」


俺の言葉に、鈴木さんは小さく頷く。

この大型連休という絶好のタイミングで、何もイベントが起きないなんてラブコメ的にはあり得ない。


「よし、ちょっと探りを入れてみるか」


俺たちは、前方の席を見やった。

一条さんは自分の席で、次の授業の支度をするために教科書やノートを整理しているところだった。

誰かと話しているわけではないので、これなら声をかけやすい。

俺と鈴木さんは少しだけ一条さんの席の近くへと移動し、聞こえるように連休の話題を出し始めた。


「そういえば鈴木さん、今年のGWってどこか行く予定あるのか?」

「……ううん、特に。家で本読んでると思う。佐藤くんは?」

「俺もバイト三昧かなぁ。どっか遠出しても混んでるだけだし」


そんな風にわざとらしく話していると、教科書をしまっていた一条さんが、ひょっこりと顔を上げた。


「ねえ、二人とも」

「ん? どうした、一条さん」


俺が自然なトーンで返事をする。

一条さんは少し周りを気にするようにキョロキョロと視線を泳がせた後、声をひそめて言った。


「あのね……ちょっと、相談に乗ってくれないかな」

「相談? 俺たちでよければ聞くけど、ここで話すのもなんだし、ちょっと移動しようか」


クラスメイトの耳に入るのはマズい内容かもしれない。

俺の提案に一条さんはホッとしたように頷き、俺たち三人は教室を出て、人があまり通らない階段の踊り場へと移動した。


「それで、相談って?」

「ありがとう。えっとね……GWに、友達とどこか遊びに行こうって話になってるんだけど」


一条さんはそこで少し言葉を区切り、ほんのりと頬を染めた。


「……あんまり目立ちたくないというか、知り合いに会わない場所ってないかな?」


俺と鈴木さんは、一瞬だけ視線を交わした。

(相手は間違いなく風間だな)と察しつつも、俺たちモブに野暮な詮索は無用だ。

『友達って男? 女?』などと聞き返すような無粋な真似はしない。


「知り合いに会わない場所か。この辺の駅前だと、同じ学校のやつらと絶対エンカウントするもんな」

「……うん。だから、少し離れたところがいいと思う」

「そうだな……あ、それなら、隣町の端っこに新しくできた大型ショッピングモールはどうだ? ここから電車で十駅くらいあるし、かなり広いから誤魔化しやすいと思うぞ」


俺が提案すると、一条さんは納得したように顔を明るくした。


「あ、そっか! 十駅あれば、さすがにこの辺の人も減るよね!」

「ああ。それに、あそこならお店もいっぱいあるし、映画館も入ってるから時間も潰しやすいと思うぞ」

「そっか! うん、そこに誘ってみる! ありがとう、佐藤くん、鈴木さん!」


一条さんは嬉しそうに微笑むと、小走りで教室へと戻っていった。

その後ろ姿を見送りながら、俺たちはミッションを一つクリアしたような気分になっていた。


放課後。

ホームルームが終わり、生徒たちが次々と教室を出ていく中、俺と鈴木さんは居残って作戦会議を開いていた。


「行き先は、隣町のショッピングモールになりそうだな」

「……うん。でも、いつ行くかまでは、まだ聞いてない」

「まあ、それは追い追い探るとして。あそこなら広いし、風間たちもリラックスして楽しめるだろ」


俺が楽観的に言うと、鈴木さんは少し難しい顔をして首を横に振った。


「……佐藤くん。あそこのモール、かなり広い」

「え?」

「……人が多いし、逃げ道もたくさんある。私たちが見守ろうとしても、見失う可能性が高い。もし何かハプニングが起きても、私たちが見えない場所だと手も貸せないし……」


言われてみればその通りだ。

あそこは広大すぎて、俺たちみたいな素人が後ろからこっそり尾行しながら見守るには、難易度が高すぎる。


「確かに。見失ったら本末転倒だな。……じゃあ、どうする?」


俺が尋ねると、鈴木さんは俺の目をじっと見つめて、静かに言った。


「……事前に、下見に行かない?」

「下見って……俺とお前でか?」


俺は思わず聞き返してしまった。

事前に二人でショッピングモールへ行く。

それはつまり、どう言い訳をしたところで、傍から見ればただの休日のデートではないか。


俺が言葉に詰まっていると、鈴木さんは少しだけ頬を赤く染めながら、小さくコクリと頷いた。


「……うん。二人でシミュレーションした方が、確実だから。……だめ、かな?」


上目遣いでそんな風に聞かれて、断れるわけがなかった。

真面目な顔をして「シミュレーション」と言っているが、少し顔が赤いところを見ると、彼女もこれがどういう意味を持つのか少なからず意識しているはずだ。


「ま、まあ、そうだな。……当日に失敗するわけにはいかないし、下調べは重要だよな」

「……うん」


俺が了承すると、鈴木さんはホッとしたように口元を綻ばせた。


こうして、主役たちを完璧に見守るための『GW前の下見』が決定した。

あくまで同志としての真面目な任務。

そう自分に言い聞かせるものの、俺の頭の中は「鈴木さんと二人でお出かけする」という事実でいっぱいで、すでにゴールデンウィークのことで頭がいっぱいになってしまっていた。

第24話をお読みいただき、ありがとうございました。

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