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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第2話:観客席は、一人とは限らない

クラスの「主役」二人に何かが起きていると確信した渉。

今回は、放課後の帰り道、彼らが住む場所についての驚きの事実を知ることになります。

放課後のチャイムが鳴ると、教室の空気は一気に緩む。

部活に行く奴、遊びに行くグループ、そしてさっさと帰る帰宅部。

俺、佐藤渉も、適当にバッグを肩にかけて席を立った。


斜め前の席では、風間海斗が相変わらず誰とも目を合わせず、音もなく教室を出ていくところだった。

あいつ、背は高いし顔も整ってるのに、なんであんなに気配を消すのが上手いんだろう。

「もったいないなあ」とは思うけど、まあ、あいつなりの処世術なんだろう。


俺も少し遅れて校門を出た。

俺が住んでいるアパートは、ここから歩いて十分ちょっとの場所にある。

一階が知り合いのやってる『カフェ・シュガー』で、その上が住居になっている、この辺りでは少し目立つ建物だ。


駅前の大通りを抜けて、住宅街の静かな道に入る。

すると、前方になんとなく見覚えのある後ろ姿が見えた。

風間だ。あいつと家が同じ方向なのは知っていたけど、今日も相変わらず猫背で歩いている。


(……あ。一条さんだ)


さらにその少し前、横道から一条彩乃さんが現れた。

学年一の美少女が夕暮れの住宅街を歩いていると、そこだけ妙に画になる。

二人は特に言葉を交わすわけでもなく、けれど同じ方向へと歩いていく。


数分後、二人は俺が住んでいるアパートの……「真向かい」にあるマンションの前に辿り着いた。

そこで初めて、風間が足を止め、一条さんに気づいたような素振りを見せる。


「……あ。一条さん、お疲れ」

「……うん。風間くんもお疲れさま」


二人はマンションの入り口で、なんだかすごく気まずそうに立ち止まった。

まだ進級して一週間。お互い同じ建物に住んでいると知っていても、学校の女子とバッタリ鉢合わせるのは、風間みたいなタイプには刺激が強すぎるのかもしれない。


一条さんも、学校での完璧な笑顔とは違って、少しだけ視線を泳がせている。

二人はそのまま、どちらが先にオートロックを開けるか譲り合うような、妙に初々しい空気感を漂わせながら中に入っていった。


(……マジか。あの二人、同じマンションだったのかよ)


俺は道路を挟んだ自分のアパートの前で、足を止めた。

俺の部屋は二階だ。窓を開ければ、向かいにあるあのマンションのエントランスや廊下が嫌でも視界に入る。

しかも二人とも一人暮らし。

親の目が届かない同じ建物に、あの二人が住んでいる。

……これ、完全にラブコメの舞台が整いすぎているだろ。


「……神様、設定盛りすぎ。これで将来的にお前ら付き合わないとか、そんな展開あったら俺が納得しないぞ」


つい独り言が漏れた。

じれったい二人のやり取りを思い出して、ニヤけそうになるのを必死で抑える。

俺は一呼吸置いてから、自分のアパートに入ろうと階段に手をかけた。


「……ほんと。出来すぎよね」


「……うおっ!?」


すぐ後ろから声をかけられ、俺は派手に肩を跳ねさせた。

振り返ると、そこには一人の女子生徒が立っていた。

ショートヘアに黒縁のメガネ。同じクラスの、鈴木さんだ。


彼女はもともと、ブックカバーのかかった文庫本を手に持っていた。

読みかけなのか、指をしおり代わりにしてページに挟んでいる。


「す、鈴木さん? なんでここに……」

「……一条さんの後ろを歩いてきただけ。家、こっちだから。……佐藤くんこそ、何してるの。ここで待ち伏せ?」

「違うわ! 俺はここに住んでるんだって。……というか、鈴木さんこそ何で」

「……私も、気になったから。……今の二人、見てたんだね」


鈴木さんは淡々と、でもどこか鋭い目で俺を見た。

その時、彼女が持っている本から、挟まっていた「新刊の投げ込みチラシ」がひらりと落ちそうになった。

それを直そうとした彼女の手元で、ブックカバーが少しだけずれる。


(……ん? あの背表紙の色……)


見覚えがあった。

というか、昨日俺が読み終えて悶絶していたラノベと全く同じデザインだ。


「……鈴木さん。その本、もしかして『隣の席のギャルが、なぜか俺の弁当を狙っている』の最新刊?」

「……え。……あ」


鈴木さんは少しだけ顔を赤くして、慌ててブックカバーを整えた。

けれど、一瞬見えたイラストとタイトルは、間違いなく俺のバイブルだった。


「……もしかして、鈴木さんも、ラノベ……好きなの?」


俺の問いかけに、彼女は観念したように小さく頷いた。

夕闇の中、街灯がパッと灯る。


隣の席の、目立たない女の子。

彼女はただのクラスメイトじゃなかった。

俺と同じように、道路の向かい側からあの二人の関係をひっそりと見守っていた、唯一の『同志』だったんだ。

第2話をお読みいただき、ありがとうございました。


渉の住むアパートの「真向かい」に、主役二人が住んでいるという驚愕の事実。

最前列の観客席を手に入れた渉ですが、そこで出会ったのは同じく「観測」を趣味とする鈴木さんでした。

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