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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第12話:雑貨屋でのステルス・マーケティング

一条さんへのプレゼントを買うため、駅前のショッピングモールまでやってきた風間くん。

しかし、キラキラした雑貨屋の敷居は高く、入り口で立ち往生してしまいます。


その状況を打破するため、モブ二人が見せる「不自然なほど自然なアシスト」とは!?

オシャレ雑貨屋の店内は、フローラルな甘い香りと、J−POPのオルゴールアレンジが流れる、完全なる『女の子の聖地』だった。


「……佐藤くん。アウェー感がすごい」

「ああ……。呼吸するだけでHPが削られていく気分だ」


俺と鈴木さんは、陳列されたカラフルなバスボム(入浴剤)の棚を挟んで、小声で言葉を交わした。

周りを見渡せば、学校帰りの女子高生グループや、プレゼントを選んでいる若い女性ばかり。制服姿の男(俺)と、メガネの地味めな女子(鈴木さん)の組み合わせは、明らかにこの空間から浮いている。


だが、俺たちの目的は買い物ではない。外で震えている主人公を、この店の中に引きずり込み、正しいアイテムを買わせることだ。

俺が入り口の方をチラリと確認すると、俺たちが入店したことで「他の高校生も入ってるし、いけるかも……」と勇気をもらったのか、風間が恐る恐る、一歩、また一歩と店内に足を踏み入れてくるところだった。


「……来たぞ、鈴木さん。作戦開始だ」

「……了解。音量、二割増しでお願い」


風間が俺たちの背後、約三メートルほどの距離にあるヘアアクセサリーのコーナーで立ち止まったのを確認し、俺は大きく深呼吸をした。

そして、近くで品出しをしていたエプロン姿の女性店員さんに向かって、店内に響き渡るような、少し大きめの声を張り上げた。


「あ、すみません! ちょっと聞きたいんですけど!」


店員さんが「はい、いらっしゃいませ!」と笑顔で振り返る。

周囲の女子高生たちがチラリと俺の方を見たが、構うものか。背後にいる風間に聞こえなければ意味がないのだから。


「最近、高校生の女の子が、ちょっとした『お礼』でもらって一番喜ぶものって何ですか!? あんまり重くなくて、でも気が利いてる感じのやつで!」


俺のバカでかい質問に、店員さんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに接客スマイルを浮かべて頷いた。


「そうですね〜。高校生の女の子へのちょっとしたプレゼントでしたら、こちらのコーナーが人気ですよ!」


店員さんが案内してくれたのは、入り口のすぐ近くにある、綺麗にラッピングされたギフトコーナーだった。


「特に今人気なのが、この『チェリーブロッサムの香りのハンドクリームと、オーガニック入浴剤のセット』ですね。お値段も千五百円とお手頃ですし、何より消耗品なので、もらう側も気を遣わずに受け取れるのがポイントです。パッケージも可愛いので、絶対に喜ばれますよ!」


店員さんの完璧なプレゼンテーション。

それは俺に向けての説明でありながら、背後で聞き耳を立てている風間に向けた、極上の攻略ヒントだった。


「……へえ。これなら、お返しとして重すぎないし、実用的で最高。……センスがいいって思われる」


鈴木さんが、普段の三倍くらいハキハキとした声で、店員さんの言葉に相槌を打つ。

ハンドクリーム。入浴剤。確かにこれなら、もらって困る女子はいないだろうし、アクセサリーのように「重い」と思われるリスクもない。

看病のお礼としては、まさに100点満点のチョイスだ。


「なるほど! めちゃくちゃ参考になります! ありがとうございます!」


俺は店員さんに深く頭を下げ、満足げにその場を離れた。

もちろん、その商品を買うつもりはない。俺たちが買うべきじゃないからだ。

店員さん、本当に申し訳ない。ただの冷やかしでこんなに丁寧に説明させてしまって。この罪滅ぼしは、後で必ず風間が売り上げという形で還元してくれるはずだ。


俺と鈴木さんは、用は済んだとばかりに、自然な足取りで店の出口へと向かう。

すれ違いざま、風間の横顔を視界の端で捉えた。

彼は、さっきまで死んだような目をしていたのが嘘のように、確信に満ちた強い眼差しで、ギフトコーナーの『ハンドクリームと入浴剤のセット』を真っ直ぐに見つめていた。


「……よし。ミッション完了だな」

「……うん。私たちのステルス・マーケティング、完璧だった」


店の外に出た俺たちは、ようやく張り詰めていた緊張から解放され、大きなため息を吐いた。


「それにしても、あの店員さん、ナイスアシストだったな。あんな完璧な答えが返ってくるとは思わなかった」

「……接客のプロ。彼女もまた、このラブコメを彩る優秀なモブの一人だったってこと」

「ハハッ、違いないな。……おっ、出てきたぞ」


十分ほど待つと、店の出口から風間が姿を現した。

その手には、オシャレなロゴが入った小さな手提げの紙袋が、しっかりと握りしめられている。

任務を達成し、魔王の城から生還した勇者のような、どこか誇らしげな表情だ。


「……買ったね」

「ああ、間違いない。あとは、あれを一条さんにいつ渡すか、だな」

「……明日学校で渡すか、それとも今日、直接アパートで渡すか。……どっちにしても、見届けないと」


俺たちは風間に気づかれないように距離を保ちながら、モールを後にする彼の背中を再び尾行し始めた。

夕暮れの街を歩く風間の足取りは、モールに来た時よりもずっと軽い。

カバンの中で揺れる小さな紙袋。それが、一条さんの最高の笑顔を引き出すキーアイテムになることは、観測者である俺たちには痛いほど分かっていた。


「……なあ、鈴木さん。俺たち、もしかして風間より一条さんのこと詳しくなってないか?」

「……モブは、ヒロインの好みを把握しておくのも仕事のうち。……佐藤くん、まだまだプロ意識が足りない」


俺たちは他愛もない軽口を叩きながら、アパートへの帰路を急いだ。

この後、今夜中に最大のイベントが起こる予感が、俺たちのオタク魂を静かに熱くさせていたのだ。

第12話をお読みいただき、ありがとうございました。


オシャレ雑貨屋という完全アウェーの地で、モブ二人の大根役者ぶり?が光るアシスト。

店員さんの完璧なプレゼンのおかげで、風間くんも無事に「正解のアイテム」をゲットできました!


あとは渡すだけ。果たして風間くんは、いつ、どこで一条さんにプレゼントを渡すのか?

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