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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第11話:主人公の悩みと、モブの追跡

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


風邪と看病という、主役二人の急接近イベントが無事に終了しました。

しかし、ラブコメのイベントは「やられっぱなし」では終わりません。


貰った恩は返すのが主人公の鉄則。

放課後、頭を抱える風間くんを見つけたモブ二人が、新たな尾行ミッションを開始します!

四月も下旬に差し掛かると、新しいクラスの空気にもすっかり慣れてくる。

ホームルームが終わった後の教室は、部活に向かう生徒の活気と、放課後の解放感に包まれていた。

俺、佐藤渉は、自分の席に座ったまま、スマホをいじるフリをして斜め前の席を観察していた。


ターゲットである風間海斗は、今日もまだ教室に残っている。

普段なら誰よりも早く気配を消して帰路につく彼が、今日はどういうわけか、自分の机に張り付いたまま動こうとしない。

よく見ると、スマホの画面を睨みつけながら、重い前髪の奥で眉間に深いシワを寄せ、一人でうんうんと頭を抱えているではないか。


「……佐藤くん。風間くんの様子がおかしい」


隣の席から、いつものように感情の起伏を抑えた低い声が聞こえてきた。

鈴木さんだ。彼女もまた、手元の文庫本を広げたまま、視線だけを風間に向けている。


「ああ、見てる。あいつ、さっきからスマホで何か検索しては天を仰ぐ、っていう謎の動作を五回は繰り返してるぞ」

「……ちょっと、背後から画面の文字を解析してくる。……モブの機動力を舐めないで」


鈴木さんはスッと立ち上がると、黒縁メガネをクイッと押し上げ、音もなく風間の背後へと回り込んだ。

ゴミ箱へゴミを捨てに行くという自然な動作を装い、風間の肩越しにスマホの画面をチラリと盗み見る。その動きは、もはやプロの工作員のそれだった。

鈴木さんはそのまま教室を一周し、俺の隣の席に戻ってくると、小さく息を吐いた。


「……確認した。検索ワードは『女の子 喜ぶ お礼』『高校生 プレゼント 重くない』だった」

「なるほどな。完全にフラグだ」


俺たちは顔を見合わせて、口角を上げた。

風間が悩んでいる理由は、考えるまでもなく明らかだ。

数日前の「看病イベント」。一条さんが自分の部屋まで来てくれて、差し入れを買ってきてくれたことに対する『お返し』を何にするか、迷っているのだ。


「……律儀な主人公。ヒロインから受けた恩は、必ず倍にして返す。……それがラブコメの鉄則」

「違いない。だけど、あいつのあの絶望的な顔を見る限り、女の子にプレゼントなんて選んだことがないんだろうな。何をあげたらいいか分からなくて、ネットの海を漂ってるってわけだ」


俺たちがそんなメタな分析をしていると、ついに風間が意を決したようにバタンと机を叩き、立ち上がった。

カバンを肩にかけ、足早に教室を出ていく。


「……佐藤くん」

「ああ、行くぞ。主人公の初めてのお買い物クエストだ。モブとして、最後まで見届けないとな」


俺たちはすぐさま荷物をまとめ、風間の後を追って教室を飛び出した。


校門を出た風間は、いつも帰るアパートの方向とは逆の道へと歩き出した。

向かった先は、駅前にある大型のショッピングモールだった。

平日の夕方でもそれなりに混雑しているモール内は、高校生のカップルや買い物客で賑わっている。

俺と鈴木さんは、風間から十五メートルほどの距離を保ち、エスカレーターを上る彼の背中を尾行していた。


「……あいつ、さっきから同じフロアを二周してるぞ。完全に迷子になってるな」

「……うん。目的の店すら決まっていない証拠。……あ、止まった」


三階のフロア。風間が足を止めたのは、ピンクやパステルカラーを基調とした、いかにも『女の子向け』といった雰囲気のオシャレな雑貨屋の前だった。

店内には、キラキラしたアクセサリーや、可愛らしいパッケージの化粧品、小洒落た文房具などが所狭しと並んでいる。


風間はその店の入り口から五メートルほど離れた場所の柱の陰に隠れ、まるで敵の拠点を偵察するかのように、店内をジッと見つめている。

入ろうとして一歩足を踏み出すが、店内の「女子高生率100%」という圧倒的なアウェー感に気圧され、すぐに元の柱の陰へと戻ってくる。

その反復横跳びのような挙動不審な動きは、端から見ていて涙を誘うものがあった。


「……あのヘタレ。このままだと、日が暮れても店に入れないぞ」

「……うん。あの中に入っていくのは、地味メンにとって魔王の城に単身で乗り込むようなもの。……HPが足りてない」


鈴木さんは淡々と風間のピンチを分析する。

確かに、あいつの気持ちは痛いほどよく分かる。

俺だって、あんなキラキラした空間に男一人で突撃しろと言われたら、間違いなく尻込みする。

だが、このまま風間が手ぶらで帰ってしまえば、一条さんへのお礼イベントが消滅してしまう。

それは、モブである俺たちにとって最大の損失だ。


「……仕方ない。今回も、俺たちが少しだけ盤面を操作するか」

「……賛成。アシストは、モブの特権」


俺と鈴木さんは、互いに短く頷き合った。

これより、ミッション『お買い物アシスト』を開始する。

俺たちは、不審者丸出しで柱の陰に隠れている風間の横を、あえて気づかないフリをして素通りし、そのまま真っ直ぐに、キラキラと輝く魔王の城――オシャレ雑貨屋へと足を踏み入れたのだった。

第11話をお読みいただき、ありがとうございました。


お礼のプレゼント選びに悩む風間くん。

ネット検索で頭を抱え、女子向け雑貨屋の前でフリーズする姿は、ラブコメ主人公。

もどかしすぎる主人公の背中を押すため、渉と鈴木さんがいよいよ店内に突撃します!

次回、第12話「雑貨屋のステルス・マーケティング」をお楽しみに!

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