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モブの俺たちが主役カップルを裏工作でくっつけようとした結果、なぜか俺と相棒のクーデレ女子の距離がバグり始めている  作者: 比津磁界


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第10話:観客席への挨拶と、モブの誓い

罪悪感(と自腹のゼリー)によって、なんとか致命傷を避けたモブ二人。

そして数日後、ついに風間くんが完全復活を遂げて学校にやってきます。


秘密の看病を経て、少しだけ変化した三人の関係性をお楽しみください。

あの「贖罪のドラッグストア」から、二日が経過した。


朝のホームルーム前。教室の斜め前の席に、風間海斗が座っている。

熱はすっかり下がり、時折出ていた咳も収まったようだ。

昨日一日は大事をとって休んでいたが、今日から完全復活を果たしたらしい。


「……よかった。風間くん、顔色戻ってる」

「ああ……。これでやっと、俺たちもぐっすり眠れるな」


隣の席の鈴木さんと小声で言葉を交わし、俺は深く、深ーく安堵の息を吐き出した。

この二日間、俺たちは生きた心地がしなかった。

昨日、風間が欠席したと知った時なんかは、俺と鈴木さんは屋上の階段の踊り場で緊急会議を開き、固く誓い合ったのだ。


『……佐藤くん。私たち、一歩間違えればただの加害者だった』

『全くだ。ラブコメを盛り上げたいからって、ターゲットの健康を脅かすなんて言語道断だ。……今後、体調に関わるような物理的なトラップは一切禁止。絶対に』

『……賛成。私たちの手は、もう汚さない』


そんな、裏社会から足を洗うヒットマンのような悲壮な誓いを立てたのも、今となってはいい思い出……にはまだ早いか。


そんなことを考えていると、一時間目が終わった休み時間。

俺と鈴木さんが席に座ったまま次の授業の準備をしていると、不意に目の前に人影が立った。


「あ、あの……佐藤くん、鈴木さん。ちょっといいかな?」


見上げると、そこには一条彩乃さんが立っていた。

学校での『完璧な美少女』の顔と、ドラッグストアで見せた『必死な女の子』の顔が、少しだけ入り混じったような、柔らかい表情だ。


「一条さん。どうしたの?」

「その……この間は、本当にありがとう。二人のおかげで、すごく助かったから」


一条さんは周囲に聞かれないように少し声を落とし、俺たちに向かって小さく頭を下げた。


「いや、俺たちは別に何もしてないよ。選んだのも薬剤師さんだし」

「……うん。私たちはカゴにゼリーを入れただけ」

「ふふっ。でも、一人暮らしの知恵、すごく参考になったよ」


一条さんは嬉しそうに微笑んだ。

そして、少しだけ照れくさそうに言葉を続ける。


「私たち、同じクラスだったのに、今まであまり話したことなかったね。……これからは、もっと普通に話しかけてもいいかな?」

「もちろん。俺たちでよければいつでも」


俺がそう答えると、一条さんは「ありがとう」ともう一度笑った。

学年一の美少女から『普通に話せるクラスメイト』としての認定をもらった瞬間だ。モブとしては破格の出世である。


「……あ。そういえば、その『お友達』は良くなったのか? 大丈夫だった?」


俺がわざとらしく、しかしごく自然なトーンで尋ねる。

すると一条さんは、一瞬だけビクッと肩を揺らし、チラリと斜め前の席(風間の背中)に視線を泳がせた。


「う、うん! すっかり良くなったみたい! 薬も効いたし、二人が選んでくれたゼリーもすごく食べやすかったって言ってたよ!」

「そうか、それはよかった」

「……うん。看病、お疲れ様」


鈴木さんが淡々と相槌を打つと、一条さんは「えへへ」と少し頬を赤らめてごまかすように笑い、「じゃあ、またね!」と自分の席へ戻っていった。

風間が風邪を引いたこと、そして自分が看病に行ったことを、彼女は学校では隠すつもりらしい。


「……一条さん、分かりやすすぎる。嘘が下手」

「そこが可愛いところなんだろうな。まあ、俺たちは『何も知らないただの親切なクラスメイト』ってことで、これくらいが一番都合がいい」


俺たちは斜め前の席で再び「普通の距離感」に戻っている二人の背中を眺めながら、密かにほくそ笑んだ。


その日の帰り道。

俺と鈴木さんは、いつものように並んで歩いていた。


「……風邪イベント、無事に終了。結果的に、二人の距離はかなり縮まった」

「ああ。でも、今回の一件で学んだだろ。俺たちの工作は、時に予想外のダメージを与える。これからはもっと慎重に、安全第一でいかないとな」

「……うん。健康第一。……でも」


鈴木さんは、夕暮れの空を見上げながら、メガネの奥の瞳をキラリと光らせた。


「……もどかしい二人を見たら、やっぱり背中は押してあげたい」

「違いない。俺たちの観測とサポートは、まだ始まったばかりだからな」


俺たちは顔を見合わせて、小さく笑った。

モブ二人の平穏で刺激的な日常は、これからも続いていく。

第10話をお読みいただき、ありがとうございました。


自分のせいで風邪を引かせたことを猛省し、「今後は物理的なトラップを仕掛けない」と誓う渉と鈴木さん。

そして、看病の一件を通じて、一条さんから「普通に話せるクラスメイト」に昇格しました。


観測とアシストの舞台は、ここからさらに面白くなっていきます!

引き続き応援よろしくお願いいたします!

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