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フィオナ王女の冒険譚  作者: アイヒカ
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第十五話 7人の小人


 温和でいつも柔らかい表情をしているはずのスノーが珍しく怒っていた。それは、誰が見ても恐ろしい顔で部下達を睨みつけている。


「いやぁ…だって、お昼寝の時間だったもんで…ムニャムニャ」

 言い訳をしながらまだ眠そうにしているのがスーピー。

「あぁ…えっと…そのぉ…」

 もじもじと言葉にならない声を出しているのがバッシュ。

「あはは!こりゃ、ほんと笑える!」

 他人事のようにケラケラ笑っているのがジョイ。

「そ、そんなぁ…僕が寝てたなんてことが…うう…」

 泣きべそかいているのがニジー。

「おかしいなあ…。寝てたなんてことあるわけないんだけどなぁ。」

 言い訳しているのがドーラ。


 5人ともアンジーと同じような背丈の小人達である。スノーは5人の話を聞き、さらに怒り心頭である。


「スノー様、私はきっちり仕事してましたぜ。」


 1人ふんぞり返って答えたのが先生。


「何を言っているの!異変に気づいたら私にすぐに報告しなさい!あなた達!今日は今から腕立て100回、懸垂100回、神殿内部を100周!いいわね!」


 6人は、息の合った呼吸で一斉に口をあんぐり開ける。そして、口をそろえて文句を言い、騒ぎ出す。


「静かになさい。」


 スノーの怒りに震えた声を聞き、小人らはそそくさと自分らの持ち場へと消え、大人しく筋トレを始めた。

 そんな様子を見ていたフィオナ、クロト、シロは今後何があってもスノーを絶対に怒らせないようにしようと心に誓うのであった。


「スノー様、お食事の準備ができました。」

「アンジー、ありがとう。では、参りましょうか。」


 フィオナ達は、神殿の大広間から食堂へと移動する。そこには大きな長いテーブルいっぱいに料理が並んでいた。


「アンジー特製ジビエ料理です。どうぞ皆様召し上がれ。」


 アンジーは得意気に大きな声で言った。だが、やはりアンジーの顔は怖い。


「うわぁー!美味しそう!」


 一番先に食いついたのはクロトである。クロトはお腹が空いていたのか口いっぱいに頬張った。


「さ、フィオナ様も遠慮せず。」

「は、はい。いただきます。」


 シロもフィオナの足下で料理を堪能する。


「めちゃくちゃ美味しいです!アンジーさん!」


 クロトは口をもぐもぐさせながらアンジーに話しかける。するとアンジーは嬉しいのか、目をつむり頷いている。


「ほ、本当に美味しいです。ちょっと変わった味ですけど…」

「ふふふ、アンジーの料理は格別ですからね。今日はお疲れでしょう。たくさん召し上ってください。」


 スノーは先程の恐ろしい顔からいつもの穏やかな笑顔に戻っていた。

 ジビエ料理に馴染みのないフィオナとクロト。だが、その味は確かに誰の舌にも合うように味付けされている。肉は、鹿や猪の肉を使っており、香草などを使って臭みを消し、食べやすくされている。また、硬い肉は柔らかく煮込まれ、口どけも良く、食べ慣れていないフィオナ、クロトも美味しく食べることが出来ている。


「そういえば、奇術師って一体なんだったんだ?」


 クロトが口をもぐもぐさせながら、スノーに尋ねた。


「奇術師…そうですね、奇術を使う者は昔、亜人族の中にいたと言われています。もしかしたら、あの者は亜人なのかもしれませんね。それよりも…魔王クロードレイの側近であった悪魔が蘇ると言っていたのが気になります…」

「あ、悪魔…?」


 スノーの話に恐る恐る尋ねるフィオナ。


「そうです。今は魂の眠りにつき、500年の月日を経て復活する…とか噂されていましたね。ミハエル様が戻られなかったとするならば、奇術師の言う悪魔復活も近いのかもしれませんね…。」


 フィオナは息を呑む。自身が好んで読んでいた『大賢者ミハエルの伝記』がまさか本当に現実となるとは思っていなかったからだ。


「悪魔復活なんかしたらこの世界はどうなっちゃうんだ?」

 クロトかスノーに尋ねる。スノーはため息を吐き、下を向く。


「恐らく…再び戦争となるかもしれません。魔物の国では悪魔復活を願う者たちがいるという話もありますから…」


 戦争が再び、という言葉にその場にいた者たちは静まり返る。だが、スノーは真っすぐフィオナを見て言う。


「ですが、今のフィオナ様は恐らくあの大賢者ミハエル様と同じくらいの魔力をお持ちです。今から鍛錬を積み、悪魔に立ち向かうべきではないかと。」

「へ?」


 スノーの期待に満ちあふれた瞳を見てフィオナは怖気づく。過去の記憶を取り戻し、魔力も取り戻したがどういう訳かイジケた性格は変わらないようで悪魔に立ち向かうとか自分に出来るのか、そんな期待されても困る、と思うのであった。

 浮かない表情のフィオナを見て、スノーは優しく笑う。


「まぁ、それくらいの力がフィオナ様はお持ちということです。現状ではサンフィオーレ王国の王妃様もいらっしゃいますし、まずはこの事を国王と王妃に伝え、対策を考えましょう。」

「ま、その時は俺がついているから大丈夫!」


 クロトが満面の笑みを浮かべ自信満々に言い放った。そんな姿にシロは呆れたように首を振っている。


「本当に頼もしいですね。とりあえず、今日はゆっくり休んでください。」

「あ、ありがとうございます。スノーさん。」

「食事が終わりましたら、客室に案内しますね。」


 フィオナは、スノーの優しい笑顔にほっとするものの、自身の力が強大であることを今一度自覚せざるを得なかった。実際に今までとは違う、魔力が体の奥底から湧き上がってくる。それは今まで望んでいた力のはずではあるが、なぜだか以前と心持ちが変わらない自分に気づく。

 

 過去の記憶を見ても魔法が使えたって母は厳しかった…。魔法が使えても使えなくても私は私なんだ…。


 そんなことを思いながら、笑顔を浮かべつつ食事を堪能するフィオナなのであった。



 




 

 





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