閑話 魅惑のゴールデンあっぷるん
7人の小人達はそれぞれに役割を与えられている。神殿の正門を守護するのがアンジー、神殿の裏門を守護しているのがニジーとスーピー。バッシュとジョイ、ドーラは守り人族の森を巡回し、森の健全なる生育を守護している。先生と呼ばれている小人のみは、神殿の地下に籠もり、ひとり黙々と森に住む動植物の研究をしている。
その日もいつもの様に持ち場についていた。森を巡回していたバッシュ、ジョイ、ドーラは久しぶりに木々の伐採を行うことにした。
「そういやぁ、もうそろそろゴールデンあっぷるんが育ってるんじゃないかなぁ。ケケケ…」
ジョイがにこにこと笑みを浮かべ、独り言のように呟いた。ゴールデンあっぷるんの単語に食いついたのはバッシュである。
「ゴゴゴゴ、ゴールデンあっぷるん!!!こ、この間は、ぼぼ僕食べ損ねたんだよね…」
「おや?そうだったか?じゃあ、伐採ついでにさがしてみるかい?」
ゴールデンあっぷるん探しを持ちかけたのはドーラだ。その提案にジョイとバッシュ待ってましたと言わんばかりに心を躍らせ、スキップしながらそれぞれに分かれ森深くへと入っていく。
「あぁ…ゴールデンあっぷるん…。ごご50年に一度実がなる貴重な林檎…。たた食べたいなあ…」
バッシュが呟きながら木々を分け入って行く。すると、奥の方からきらりと光ったように感じた。も、もしや…と高鳴る鼓動を抑えながら鼻息荒くその光に向けて走り出すバッシュ。
「こ、こ、これはー!」
そこには、見事なまでの黄金に輝くゴールデンあっぷるんが爛々と実をつけていた。
興奮冷めやらぬバッシュは普段では聞けないような大声でふたりを呼ぶ。
「ジョイ!!!ドーラ!!!」
ただならぬバッシュの声に気づき、2人も息を切らしながらやってきた。
「こ、これはーーー!」
光り輝くゴールデンあっぷるんに興奮しながら3人は小躍りを始めた。
「おおー!ゴールデン!ゴールデン!ゴールデン!あっぷるん!るん!るん!」
はたっと立ち止まったのはドーラである。
「貴重なゴールデンあっぷるんがこんなにも大量に実るなんて…こんなことがあるんだろうか…」
「ドーラよ!これは日々頑張っている我々にご褒美なのだ!ありがたく頂こう!はははっ!」
ジョイは高らかに笑い、ゴールデンあっぷるんを次々と収穫していく。そんな様子を見たドーラは一抹の違和感があったものの遅れまいとジョイに続き、ゴールデンあっぷるんをもぎ取っていく。
「ね、ね、ねぇ!待って!」
ゴールデンあっぷるんを収穫していくジョイとドーラをバッシュが止めた。
「どうしたんだよ?バッシュ?ニヤニヤ…」
ニヤニヤしながらジョイが尋ねた。バッシュはもじもじとしながら答える。
「スーピーもこの間、眠っててたた食べられてないんだ…。スーピーにも持って行きたいんだけど…」
「分かったぞ。じゃあ、たくさん持っていこう。シシシ…」
こうして、3人はたくさん実ったゴールデンあっぷるんを大量に抱え、裏門を守護するスーピーとニジーの元へと向かう。
「な、な、な、!ゴールデンあっぷるんがこんなに!!うう…生きてて良かった!」
「ムニャムニャ…ゴールデンあっぷるんるん…」
ニジーは泣きながらゴールデンあっぷるんに手を合わせている。その横でうつらうつらとしているのがスーピーである。
「み、み、み、んなで食べよ!」
バッシュが待ち切れないとばかり、とびきり大きなゴールデンあっぷるんを手に取った。
「でも、アンジーさんや先生はいいのかな…うう…」
「大丈夫さ!こんなに沢山あるんだから!後でアンジーさんにアップルパイにしてもらおう!あはは!」
「では、頂こうか!」
かぶり!もぐもぐもぐ…
魅惑のゴールデンあっぷるんを皆が大きな一口で頬張った。しかし、もぐもぐもぐ…と食べていくうちにひとりふたりと小人らは次々と倒れていく。
「んん?」
スーピーの大きな鼻提灯が割れ目を覚ます。
「あれれ?みんなどうしたんだ?」
スーピーは周りを見渡す。そこにはゴールデンあっぷるんではなくごくごく普通の赤い林檎が大量に山積みとなり、その林檎を囲むようにみんなで座っていた。
「んん?そうか!昼寝の時間か!では、みんなお休み。ムニャムニャ…」
他の者たちが眠りこけるという異常な光景を前にし、スーピーは自分のいいように解釈し、再び眠りにつく。
「おやおや、守り人族も大したことありませんねぇ
」
ゆっくりと近づいてくるシルクハットの男。不敵な笑みを浮かべ、眠りこける小人らを横目に神殿内部へと入っていったのであった。
一方その頃、地下研究室で先生はというと…
「むむ?何か良からぬものが神殿に侵入しているような…」
異変を感じた先生。
「だが…研究が今、いい感じなんじゃい!これが終わったら、助けに行くぞい!」
自らの欲望を断ち切ることは難しかったようで、研究に没頭していくのであった…。
大きな寝息を立てて眠る5人の小人達…
「もぅ、たた食べられないよぅ」
「えへ、えへへへ!」
「これぞ!ゴールデンあっぷるんるん!」
「こ、こんなに美味しいなんて…うう…」
「ムニャムニャムニャムニャ…」
そんな姿を見たスノーは体を震わせ、大きく息を吸う。
「お、き、な、さーーーーい!!!」
「は!!!!」
その大きな声に5人の小人らは勢いよく起き上がる。と同時にスノーの見たこともない形相に5人は背筋が凍った。
「あなた達…一体ここで何を…」
スノーの低い声が一層恐ろしさが増していく。
「ああえっと、そそそのぅ…ごごゴールデン…」
「あ、あははは…ゴールデンあっぷるんが…」
「何を…ってあれ…?」
「うう…うう…ゴールデンあっぷるんが…」
「ムニャムニャ…僕は、ただ寝てただけ…」
5人の小人達は状況が飲み込めず、目の前にある大量の林檎を見て全て夢だったのだと悟る。
「あなた達!!!反省しなさーーーい!!」
こうして、小人達は魅惑のゴールデンあっぷるんを食べれず、ただただ、スノーのお説教を聞くこととなったのである。




