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扉の向こうはとても広かった。部屋の奥は少し高くなっていて、そこに椅子が置いてあった。
部屋の壁際には多分偉いであろう人が何人も立っていた。
扉の横には案内してくれるのであろう見るからに偉そうな格好をした人が立っていた。
案内してくれる人が歩きだし、僕たちは後ろに続く。
僕は手を離されたことに不安を覚え、ビクビクしながらアルデビルド様の後ろをついて歩く。
アルデビルド様の家ではこんなに大勢の人に見られたことないから緊張のあまり冷や汗が出てくる。視線が痛い。
椅子の前に着くとアルデビルド様たちは膝を着いて頭を下げた。僕も少し後ろでそれに習う。
椅子の置いてある所は横に通路があるようだ。そこから王様が来るっぽい。
暫くした後、誰かが出てくる感じがした。
ドキドキと心臓がうるさい。汗が滴となって床に落ちた。
椅子に人が座ったのが分かった。
「面を上げなさい」
低いが、良く通る声が聞こえた。僕の前にいるアルデビルド様たちが動いたのが目の端に映る。
僕もゆっくりと頭を上げた。
椅子の方を見るとそこには思っていたよりも若い、アルデビルド様のご両親とそんなに変わらない位の歳の男の人が座っていた。髪の毛はとても赤い。
目が合うとにっこりと笑われた。赤い髪をしているから怖い人なのかと思ったけれど、そんなこと全然ない。
「よく来たね。楽にしなさい」
そう言われてほっと体の力が抜けた。なんだかとってもいい人そう。力が抜けて、ヘラリとしそうになったため慌てて顔に力を入れた。危ない危ない、うっかりつられて笑いかけた。
「名前は何という?」
これは僕に聞かれているのだろうか?でも、僕には声を出すことが出来ない。口パクでいいのだろうか?
困惑した僕はアルデビルド様の方を見る。
「恐れながら国王陛下、この者は声が出ません。名はシーネと申します」
アルデビルド様のお父さんが代わりに答えてくれた。そして王様は気の毒そうな顔をして、そうかと頷いた。
「シーネの髪は本当に白いのか?こちらに来て見せてみよ」
王様は僕に近くに来るように言った。これは近づいてもいいのだろうか?僕が困惑していると、少し高い声が聞こえた。
「父上、近づけと言われて近づける者は少ないでしょう」
クスクスと笑いながら黒髪をした男の子が横の方から出てきた。僕と同い年くらいだろうか?頭が良さそうな顔をしている。
「こら、ガウェン。お前は呼んでいないだろう。なぜここにいる」
「父上、白髪の者が来るのをなぜ隠していたのですか。私も会ってみたいとあれ程言っていたではないですか」
この男の子はガウェンという名前で、どうやら王子様っぽい。黒髪の王子様か、ちょっと僕とポジション交代しませんか?
どう考えても僕の立ち位置っぽいんですけど。
そう思っていたら王子様は僕の横に降りてきて、僕の手を取った。
え、なんで僕手を握られているの?
またしても困惑した顔でアルデビルド様の方を見る。アルデビルド様も困った顔をしていた。
「さあ、一緒に行こう?」
笑顔でそう言われて、僕は逆らえず立ち上がる。そして何故か王子様に手を引かれて王様の前に行って膝を着いた。
王様の手が頭に乗って髪の毛をかき分けられる。髪の毛の根元を見ているみたい。根元まで白いのを確認した後、王様は感心したように本当に白いのだなとつぶやいた。
さっき汗をかいたのであまり触らないで頂きたい。
「父上、シーネと一緒に遊んでもいいですか?」
なんか王子様がとんでもないこと言いだした!
いやいや、滅相もない!そう思って王子様に見えない所で王様に向かって首を振る。結構必死な顔をしていたんだと思う。
「よし、許可しよう」
笑いながら王様が許可した。満面の笑顔で王子様は僕を見る。僕は絶望的な顔で王子様を見た。何この状況。王様、許可しないでくださいよ!
「ありがとうございます。シーネ行きましょう!」
王子様は僕を立ちあがらせて、扉の方へと歩き出した。
アルデビルド様助けてと振り向いたが、王様の許可が出ていないので心配そうな顔を向けてくれただけで助けてはくれなかった。それはそうだろう、勝手について来たら不敬罪になってしまう。
僕は王子様に手を繋がれたまま、アルデビルド様たちと離れ離れになってしまった。




