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部屋に入るとアルデビルド様がソファーに座って、優雅にお茶を飲みながら待っていた。とっても絵になる。
僕たちに気づくと、お茶を飲むのをやめて近づいてきた。心配そうな顔をしているけれど、まだ僕は信用していない。いつ魔法を使って僕を攻撃してくるかわかったものじゃない。
僕の警戒が伝わったみたいで、アルデビルド様はちょっと困った顔をして笑った。手を伸ばしてきても顔を背ける。
そんな僕の態度を青い頭の人が窘めるかのように、軽く僕の体を持ち上げた。仕方なく僕はアルデビルド様の方を見る。
アルデビルド様は何か考えた後、なぜか僕の方に両手を伸ばしてきた。一体何がしたいんだろう?
首を傾げていると、青い頭の人がアルデビルド様の方に僕を差し出した。
行きたくなくて青い頭の人の方に両手を伸ばす。けれど僕の抵抗むなしくアルデビルド様の腕の中に納まった。
僕の顔の近くにアルデビルド様の顔がある。近くで見てもきれいな顔をしている。
やっぱり王子様みたいだなと思っていると、ギュッと抱きしめられた。まるで子犬にするかのように、僕の胸元に顔を埋めてくる。くすぐったくて体が震えた。
暫くして満足したのか、僕を抱っこしたままソファーに座った。なぜかアルデビルド様の膝の上に横向きで座ている僕。一体何の羞恥プレイ?納得いかない。
僕が不満そうな顔をしているのに気付いたのか、アルデビルド様はお茶のお供に付いていたであろうクッキーを僕の口元に持ってきた。
クッキーは甘い匂いで僕に『食べてもいいのよ?』と囁いてくる。ぐぬぬ、僕はそんな誘惑には負けないぞ。プイっと顔を背けた。けれど、甘い匂いが気になってちらちらとクッキーを見てしまう。
青い頭の人に助けてと視線を送るが、微笑ましいといわんばかりな顔でこちらを見ている。
アルデビルド様はほら、お食べと再度クッキーを近づけてきた。
観念して僕はパクリとクッキーを半分食べた。
サクサクしていてとってもおいしい!残りの半分もパクリと口に入れる。勢いあまってアルデビルド様の指も口に入れちゃったけど、歯は当たってないからセーフだと思う。
クッキーはあっという間に無くなった。もっと食べたかった。
うっかりアルデビルド様の膝の上という事を忘れていた。アルデビルド様の顔を恐る恐る見てみると、顔を赤くして僕が口に入れてしまった指を見ていた。
ヤバイ、歯は当たっていないと思っていたが痛かったのだろうか?
そう思ってみていると、アルデビルド様は赤い顔をしたまま大丈夫だといった感じで手を振った。
こうしていると、やっぱりアルデビルド様は悪い人ではないんじゃないかと思う。けれど赤い頭の人を僕に近づけようとした。わからない、いい人なのか悪い人なのか。
そう思っていたらドアがノックされた。僕の頭の上でアルデビルド様が返事をする。
ウェルスタイ様と赤い頭の人が入って来た。赤い頭の人を見た瞬間、体が固まり震えだす。
僕を膝の上に抱えていたアルデビルド様も気づいたみたいで少し考えた後、赤い頭をした人に出て行くように指示していた。
赤い頭の人は僕をギロッとにらみつけた後、扉から出て行った。
ウェルスタイ様だけ残ってこちらに近づいてきた。そして青い頭の人の横に立つ。
怖い人がいなくなって安心した僕は体の力を抜いた。赤い頭の人を出て行かせたというはアルデビルド様はいい人だ。
さっきは何か考えがあってあんな事をしたんじゃないかな?そう思たら逃げ出して申し訳なかった。
反省していると、アルデビルド様がもう1枚クッキーをくれた。
やっぱりいい人だ!
そういえばあの青い頭の人は何て名前なんだろう?探しに来てくれたし、お風呂にも入れてくれた。
アルデビルド様の洋服をつまみ、軽く引っ張る。
どうしたんだと僕の方を見てくれた。僕は青い頭の人の方を指さして、お名前はなあに?と首を傾げて見せた。
アルデビルド様はまたしても顔を赤くして口元を押さえて顔を僕から背けた。
忘れていた、僕の顔は顔を背けるほど不細工だったという事を!こういう仕草はかわいい子のみにしか許されない。僕がしたら気持ち悪いだけだ。
もう首を傾げたりするのはやめよう。こう、男らしい動作で意思表示していこう。
そう心に決めて、再度挑戦。
男らしい仕草で名前を聞くって難しいな。男らしい仕草ってどんなだろう?さらに名前はって仕草、どうやったら伝わる?暫く考える僕。
うん、無理だね。男らしい仕草は心がけていくとして、名前ってどう聞けばいい?
うーん、と考えた後、青い頭の人の方を指さして。
『アルデビルド様!』
と口を動かした。するとアルデビルド様は首を振った後。
「******」
と教えてくれた。うまくいった!あとは名前を聞き取るだけだ。
「******」
『えど、るん』
「******」
『えごん?』
「******」
『エルゴン?』
「**!エルゴン!」
青い頭の人はエルゴン。割と覚えやすい名前だった!
僕はアルデビルド様の膝から降りて、エルゴン様の所に行く。
『エルゴン様、色々とお世話になりました。ありがとうございました』
そう口を動かして頭を下げた。名前が分かってすっきりした。名前を呼んだ僕を、エルゴン様は頭を撫でてくれた。一仕事終えた気がする。
そう思ったら眠くなってきた。撫でられている頭も気持ちがいいし、ちょっとウトウトしてきた。
そして立ったまま僕の意識は無くなった。




