第098話 パスティア平原の戦い(その11:迫りくる恐怖)
■クリスタニア大陸 パスティア平原 アルフォード・ウィンザー(◆ゼクス・ウィンザーの意思)
まさか、あの戦いの後遺症で記憶を失うとは思ってもいなかった。でも、記憶を無くし、技を失ってもアルフォードは戦っていたのだなと思った。先程は厳しい事を言ったが、我々の意思を継ぐ者なのだ。簡単に戦いを終えられても困る。出来れば、孫の代までに戦いを終わらせたいと思っていただけに、孫が自分の意思を継いだ事に感慨深いものを感じた。
俺は、相手を確認した。手負いの状況だった。クリスタルも4個ある。4個持ちか…わざわざ、下級魔法で耐性を調べるまでもない。クリスタルにはその属性の色が有るのだ。見えるクリスタルの色で魔法の耐性は分かる。黄色は雷属性。それに水色は水属性。茶色は土属性。更に、紫色のクリスタルが見える。毒か…
私は、指輪に聖なる光を与えた。
「久しぶりだな…メフィア。」
「…?まさか…ゼクスなの…」
「ああ。俺は、自分の意思をクリスタルに封じてある。まあ、死ねばそういう事になっている。アルフォードもな。この首の痣にはそういう力を封じ込めるようにもなっているのだ。そして、次の者にその力を継承するのだ。短期間で強くなる方法としては最も有効な技ではあるが…厄介な事にもなる。正しい者が引き継いでくれれば…」
「もう。何で私を手放したのよ…」
「すまん。アルタイドは俺の兄弟子でな。彼が壁に当たっていたから見るに堪えなくてな。俺もお前を装備してから格段に強くなった。だから見かねてな。まあ、俺自身もお前を手放した事は大きな損失だったよ…」
「知らない…ゼクスのバカ…」
「すまん。今は争っている場合ではない。相手の動きを封じる光輪を出してくれ。」
「…」
「機嫌を直してくれないか? メフィア。俺はもう過去の者なのだ。これからは全力でアルフォードを補佐してくれメフィアよ。」
「……仕方ないわね…」
俺は、光の闘気を纏って、相手の前に立っている。勝負はいい所まで魔人を追い詰めていた。だが、魔人の戦いには経験が必要だ。それが足りなかったという事だろう。
魔人が、俺に攻撃を仕掛けてきた。この魔人も平和ボケしているのか。無防備に突っ込んできている。仕方がない。少しは眼を覚まさせてやろう。剣を構えて、閃戒空流の穿空波を頭にある角に当てると魔人は簡単によろめく。弱点をさらしている事くらいは直に分かるだろう…
■クリスタニア大陸 パスティア平原 サイバート(クリスタニアの覇者:◆◆◆◆)
俺は、アルフォードに向かって行った。もう、奴も限界が近づいている。彼奴を倒せば後は如何とでもなる。俺は止めと言わんばかりに攻撃をした。しかし、返って来たのはクロスした剣の衝撃のだった。それが俺の頭にある角に当たると、俺の体がふぁーとした。何だこの脱力感は…もしかして、弱点なのか。そして、目の前の敵を見た。さっきまで戦っていたアルフォードという青年の威圧ではないものを感じる。俺は急激に悪寒を感じた。おかしい…奴は瀕死の筈だ。それなのに何だ…この雰囲気は…
■クリスタニア大陸 パスティア平原 アルフォード・ウィンザー(◆ゼクス・ウィンザーの意思)
少しは潜在的に理解した様だ。俺はメフィアから天属性の魔法である月光の力という光輪を相手の残りの足に放ち、相手の動きを抑えつけた。見えない力が魔人の行動を阻害する聖なる光が発動している。魔人は身動きしようにもビクともしなかった。
俺は、久しぶりの勝利を噛み締めるように魔人に近づいた。あっけない幕切れだな。俺は剣を構え、上空に飛翔して、剣技を放つとその周りの空気がスパと切れたような感覚になった。空間が裂けたように光の糸が伸びている。その光の糸が魔人の首まで伸びて魔人の首に吸い込まれるように消えて行った。
「閃戒空流奥義 断空飛翔斬!」
技が炸裂した後は、魔人の体と首がズレていた。そして、絶命したのか灰色クリスタルと魔結晶になっている。そして、暴走したクリスタルが4個無残にも転がっていた。
魔人と相対してわずか2分間弱の出来事だった。
■クリスタニア大陸 パスティア平原 サイバート(クリスタニアの覇者:◆◆◆◆)
何がどうなっているのだ。光の輪が俺の足元に放たれた後、俺は身動きが出来なかった。そして、彼奴が剣を抜いて一歩、また一歩と近づいてくる。俺は初めて感じる恐怖を抑える作業で必死だった。俺は心の中で叫んでいた。くるな…くるんじゃない。一歩、また一歩と死が迫る。そして、相手の剣が放たれると光の糸が見えた。
「あぁ…何て綺麗なんだ…」
次の瞬間、俺の目は闇となった。
■クリスタニア大陸 パスティア平原 ビクター・アクセル将軍
私は、目の前の現実が受け入れなくなっていた。散々苦労した魔人は、アルフォード君の攻撃の前に2分も持たなかったのだ。それにしても、相手の動きを完全に封じるあの光は一体なんだったのか。いや、その前に魔人をよろめかせた剣技は何だったのだろうか。もしかしたら、角は魔人の弱点なのか…
なら、彼はなぜこの時まで、あの攻撃をしなかったのだろうか。そして、最後の技は空気が切れているように見えた。空気と空気が裂け、衝撃が光の糸を紡ぎ出した。何とも幻想的な…いや、あれはそう錯覚しているのだろう。それにしても空間諸共、切ってしまうとは…。結局、最初から最後まで彼にお世話になりっぱなしだ。俺はただただ、茫然としていた…




