第096話 パスティア平原の戦い(その9:次への扉)
■クリスタニア大陸 パスティア平原 ダグラス・ワイズマン技術指導長
今、彼を死なせる訳にはいかない。儂は全速力でアルフォード君と相手の拳の間に入り、篭手についている盾に魔力を込めた。しかし、暗黒闘気の拳は儂のクリスタルファングの上から物凄い衝撃と共に儂とアルフォードを吹っ飛ばした。
■クリスタニア大陸 パスティア平原 アルフォード・ウィンザー
凄い衝撃を受けて僕は飛ばされた。しかし、致命傷ではない。どうして…そうすると僕の身代わりになるようにダグラスさんがクリスタルファングで暗黒闘気の技を受けてくれた。しかし、10mの巨体から全力で放たれた打撃の影響でダグラスさんと僕は200mくらい飛ばされ地面と激突した。飛ばされている対空時間を利用して、クリスタルウォールで僕とダグラスさんを包んでいるため、致命傷を回避している。しかし、僕もダグラスさんも起き上がる力は失われていた。僕は自分とアルタイドさんにレストレーション3を使って、体力の回復を行うが、ダグラスさんは回復に向かわなかった。
■クリスタニア大陸 パスティア平原 ダグラス・ワイズマン技術指導長
「アルフォード君…儂らはどうやら敗れたようだね。」
『……そうかもしれません。相手は全快しています。私のバトルカウンターを見ると超越者になれるのは後15分です。僕のライトニングブレイクが効かない状況では…抵抗出来るのもあと10分位でしょう。』
「アルフォード君。何人かを連れて、逃げてくれ…たのむ。」
『僕には出来ません。誰かを犠牲にして逃げる事など…』
「そうか…」
『…』
「では、魔人に勝つには最後の手段を取るしかないの…」
『まだ、そんな方法があるのですか。』
「ああ。儂のクリスタルを君が継承してくれれば、君は一時的だが飛躍的に強くなれる。それで、あの魔人を倒してくれないか。」
『クリスタルの継承…?』
もしかしたら、僕が8歳の時に、師匠やお祖父さんは誰かのクリスタルを僕に継承する事を考えていたのかもしれない。僕は過去の出来事が再び重なった。そして、その思いを受け取るように僕の胸が熱くなった。
「ああ。冒険者にはクリスタルが存在する。そのクリスタルに自分の意志を封じ込めるのだ…人間としての活動は無くなるが意識は残る。儂はお前の中で生きる事になるが…」
『…』
「どうせ、儂はこの戦いを最後に引退する予定だった。それが少しばかり早くなっただけだ。問題はない。ロックハルトの戦士を助けてくれ…犠牲は少ない方が良い…アルフォード君は、誰かのクリスタルを継承した事はあるか…」
『分かりません。過去の記憶が無いので…』
「何…判別する事は出来る。首の部分に痣が無ければ、継承はしていない…」
『首に痣…僕には首に痣があります。』
「どのような形の痣だ…」
『首に、三日月のような痣です。月のかけている部分に丸が書かれた痣です。』
「間違いない。その痣は誰かのクリスタルを継承している。その力を解放すれば飛躍的に強くなれるぞ…どうやら儂はくたばらなくて済みそうだわい。」
『どのように、この力を使うのですか。』
「その痣にホーリーを使え。その三日月が光輝けば力は発動する。光り輝けばお前の腕にクリスタルの継承をした人物の文様が浮かぶ筈だ。その文様に再び魔力を与えれば、その者の意志がよみがえると言う。儂にはその力が無いからどのような影響があるかは分からないが…」
『分かりました。どのみち、このままでは敗北は必至です。鬼が出るか蛇が出るかは分かりませんが、これに全てを掛けるしかないようですね。』
「そろそろ、魔人が我らの所に向かって来るぞ。」
『では行ってきます。』
「月並な言葉で悪いが、幸運を祈っているぞ。」
ダグラスさんは、僕に親指を立てている。幸運か…僕の中に継承されたクリスタルは多分だけどあの人の者だろう…
■クリスタニア大陸 パスティア平原 アルフォード・ウィンザー
僕は、肩の痣を触りながらホーリーを使った。肩の痣が熱くなる。そして、その後に僕の腕に3つのクリスタルが描かれた…
「え…」
僕の腕に描かれたのは3個だった。僕は3人からクリスタルを継承されているのか…痣を見るとイーグル・スピリットの紋章が描かれたクリスタルの絵が2つあり、灰色の魔女の紋章が描かれたクリスタルが1つあった。
「やはり…」
僕はこのイーグル・スピリットの紋章にホーリーを与えた。そうすると僕の心の中にクリスタルの主の声が響いた。
「ようやくここまで来たようだな…アルフォード…」
『…』
「俺は、お前のお祖父さんだ…」
『はい。ゼクスお祖父さん…』
「私の意志を継ぐ者がたかが4つ、5つの魔人に遅れを取るようでは、この先が思いやられるぞ。思い出せ。お前は13歳にして、我らの力を超えたんだ。今のお前はその何分の1しか力を使っていない。」
『…すいません。』
「今日は、俺に戦わせろ。お前に戦いと言うものを教えてやろう。」
『分かりました。如何すればよいのですか。』
「意識を休めればよい。」
そうして、現代に至宝と呼ばれた男が復活する事になったんだ。僕の体はゼクス・ウィンザーの意識に同調した。だから、気まぐれの女神は僕のクリスタルからゼクスの匂いを感じたのだろう。僕は、記憶の間で分からなかった超越者の次のステージへ行くための扉に手を掛けた瞬間だった。




