第080話 記憶の間(その9:痣)
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 行政府 会議室 オスカル・シャロン
会議の中で、おかしな事に気付いた。魔人の砦には常に見張りが付いている。だから、魔人に動きがあれば、報告が来るはずだ。だが、それがない事に違和感を覚えた。
「パスティア基地の様子を調べてくれ。ロックス将軍。」
「ハッ。何か御懸念でもあるのですか。」
「クリスタニアの町を襲ったのは本当に魔人なのか。リンツ参事官。」
「魔人を見た者はいません。ですが、ライアン支部長は魔人が来たと言っておりました。そして、奪われたと……」
「魔人が来たのに町が襲われた形跡が無いというのは釈然としない。」
「パスティア基地は異常ないとの事です。そして、魔人が動いた形跡はないとの事です。」
「……いろいろな事が起こり過ぎる。そして、我々が知らない事が多すぎる。王都も襲われた少なからず魔人は何らかの痕跡を得ただろう。ここで、魔人討伐するか否かを決めたいと思うが、他の者の意見を聞きたい。」
宰相の問いに反対の意見は無かった。将軍たちはクリスタニアの最後の魔人を討伐する決意を固めた。
「アルフォード君。君はどうする。」
『僕は戦いには参加しません。僕は、自分の今日の出来事を整理出来ないでいます。本来なら国王陛下に拝謁して帰るところでしょうが、こうも事態急変しているので私は辞退したいと思います。先程から胸が熱くなっています。もしかしたら僕は自分の記憶を垣間見る事が出来るかもしれません。』
「そうか。魔人討伐はロックハルトの関係者で行う。国王陛下に拝謁する事は延期しよう。町も防衛体制を整えなければならない。そういう事で来てもらって悪いが、そういう事にしよう。」
『分かりました。それでは僕はこれで失礼します。』
「アルフォード君。今日は我が家に泊まっていきなさい。」
『分かりました。それでは失礼します。』
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト シャロン家 アルフォード・ウィンザー
「アルフォード君。どうしたの元気が無いみたい。」
『マリーさん。今日はいろいろあったのです。自分自身の事でも不安な事がありました。それと王都はこの大陸の最後の魔人を討伐する事を決めました。だから、国王陛下との拝謁も延期する事になりましたので、明日にでもクリスタニアに帰ります。』
「そう。急な話ね。」
『えぇ。』
「何があったの…」
『それは僕も聞きたいくらいですよ。分からない事が多くて何を話してよいか分かりません。』
「そう。」
『お父さんなら客観的に判断出来るかもしれません。お父さんに聞いて貰えますか。』
「分かったわ。」
『それでは、僕はもう寝ます。胸が熱いのです。もしかしたら過去の関係が判明した事で記憶が干渉しているのかもしれません。そういう訳ですので、今日は失礼まします。』
「そう。」
僕は、ホーリーを気まぐれな女神に使った。
「どうかしたの。」
『すいません。記憶が干渉しているかも知れない。僕は記憶を知る必要があります。出来るなら干渉して貰いたいのです。』
「分かった。出来るかは分からないけど、あなたの記憶がそれを求めているなら問題ないと思うわ。あなたが眠ってから記憶に干渉してみる。」
『分かりました。僕は早速ですが眠ります。』
そうして、僕は再び自分の記憶に干渉する事になった。
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)
「どうやら上手く干渉出来たようね。」
『はい。これで、何か分かれば良いのですが……。』
「それは、私には分からないわ。」
『それはそうですね。』
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(8歳)
僕は、あれから度々戦士団で行動しては魔人を討伐していた。僕は予備役だから戦力になっていないが、核クリスタルと魔結晶を得ているため、それを四等分して貰っている。それを冒険者ギルドに渡すとかなりの報酬と希望石を受け取る事が出来る。僕のレベルは33になっていた。そして、冒険者のランクはDランクになっている。
『師匠。僕に教えてほしい事があります。』
「なんじゃ。改まって……。」
『この基地は何の為に存在しているのでしょう。そして、師匠は何のために魔人を倒しているのですか。』
「その事か。」
『はい。』
「分かった。その事を話す事にしよう。じゃが、その前に飯と風呂にしようではないか。」
『分かりました。」
そうして、晩飯と風呂に入って、エリシオさんに話を聞く事になった。
■クリスタルの記憶 アルフォード・ウィンザー(15歳)
僕の記憶が干渉できたという事は僕に何かしらの情報を与えたがっているのかもしれない。8歳の僕も順調にレベルを上げている。でも、僕のレベル57までは随分と差がある。そして、冒険者のランクもDになっている。後5年でそこまで成長するのだろうか。そして、僕は8歳の僕を見た。彼はお風呂に入っていた。エリシオさんとの会話を楽しみに待っている自分がいた。それで、何か分かるかもしれないからだ。そう考えていると僕はある違和感を覚えた。そういえば、この痣は何かの術なのかな。母さんは僕と兄ちゃんに人体実験をしたのだろうか。そして、僕は8歳の僕の肩を見た。
「えぇ。痣が無い。何で僕の肩に痣が無いのだろう。一体どういう事なのか。」




