第075話 ロックハルト攻防戦(その5:護符の文様)
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト近郊 アルフォード・ウィンザー
僕は、クリスタルウォールを展開しつつ、漆黒の竜の攻撃を無効化している。戦いは、超越者と普通状態を繰り返しながら戦っている。これも精神的な負担があった。僕の師匠は、何でも無い様にしていたから気付かなかった。僕は二人を見た。二人も超越者になっている。
ダグラスさんは、拳法の技術指導をしてるとあって、クリスタルファングは、クリスタルクローとクリスタルナックルを両手に付けている。防御力もあるのか篭手の部分に丸い盾もついていた。更にその盾から時々であるが鋭い爪が現れる。それが竜の皮膚を切り裂いていった。そして、クローもナックルの部分が光を帯びる事がある。これは、魔法の力だと推測は出来た。
ロックス将軍は、青龍戟という武器を持っていた。本来なら両側に取り付けられている三日月状の月牙と呼ばれる横刃が、片方だけに付いている武器だ。この武器の特徴は切る、突く、たたく、薙ぐ(なぎはらう)、などの槍型の武器の動作を一振りで出来るところにある。切った後に突くや払いの後に切るなど複数の動作を一度にこなせるという便利なものだ。
そして、相手の攻撃がくると僕の出番になり、それを繰り返して戦っている。今度は、最強種を見た。狂ったように攻撃をしている。知能があるとはとても思えない。これには訳がありそうだと思った。僕はこの漆黒の竜を調べる為に近づくと、腹と尻尾の所に魔法陣があった。それにこの護符は…
僕は、二人にこの事を念波で伝えた。どうやら、この魔法陣でこの漆黒の竜は暴れる様に操られている可能性がある。三人は一旦、竜との距離を取った。
「どうするかの。」
「このまま攻めれば、倒す事は可能と思うが、相手は古来から生きている生物。神獣とか神の使いと呼ばれているものだからね。倒すのも気が引ける。アルフォード君の考えはどうかな。」
『…僕は、魔法陣も気にありますが、あの護符が気になりますよ。』
「護符?」
『はい。あの護符には、奇妙なマークが書いてある。僕は昔ですが、あれと同じ物を見ました。二人はあのマークをご存じですか。』
「どれ…分からんの。」「俺も見覚えがない。」
『そうですか。』
やはり、魔人とこのマークの組織は繋がっている。つまり、僕の母さんもこの組織の一員なのか。僕は4歳の時に見たローブ男に書いてあったマークと再び出会う事になった。取り敢えずは、この漆黒の竜を何とかしなければならない。
『どうでしょう。あの護符と魔法陣が書いてある部分を削ぎ落すというのは…』
「そうか。では儂が護符を取る。ロックス殿は、魔法陣を削ぎ落すという事でどうか。」
「承知した。」
漆黒の竜との戦いは、既に40分が経っている。僕のバトルカウンターを見た。僕が超越者になれるのは、後30分か。他の人は、戦闘開始からずっと超越者になっている事から彼らも後30分しかなれない。そして、決着は僕たちの思いがけない形で着いた。
ダグラスさんが護符を取ると、魔法陣が光輝いた。これは自爆の光…更に漆黒の竜は生気がない。これは…
『ダグラスさん、ロックス将軍、僕の傍に早く来て下さい。早く…』
「分かったわい。」「承知した。」
僕は、瞬時に状況を把握した。そして、僕は超越者になり、クリスタルウォールを球体の形にして3人を包み込んだ。そうすると、漆黒の竜は光を増していき、爆発しながら消滅した。
「何が起きたのじゃ。」
『それより、護符は持っていますか。』
「持っている。」
『良かった。』
「どうしたと言うんじゃ…アルフォード君。儂らにも分かるように説明してくれないか。」
『事情は、後ほど話します。』
「そうか。」
漆黒の竜が自爆した後を見た。衝撃から穴が開いている。
「それにしても、アルフォード君の障壁は優秀じゃわい。これに巻き込まれて生きている事も不思議じゃが、無傷なのだから驚きは2重という処かの。」
「ええ。これがなければ、我々はもうこの世には居なかったでしょうね。」
僕は、宰相にどのように説明して良いか分からなかった。あの最強種は、もともと生きていなかったと思う。そして、あの護符を外した途端に竜は、生気を無くすように崩れた。そして、魔法陣が爆発を誘発するように輝きだした。あの護符は誰が施したものだ。この技には危険な馨がする。死者を生かすための術なのか。僕は、あのマークの組織の素性を突き止めなければならないと思った。
「どうした。アルフォード君。さっきから顔色が悪いぞ。」
『ええ。大丈夫です。少し、考え事をしていました。それより、周りの戦いはどうですか。最強種も倒しましたので、早く片づけて魔人に備えるべきではありませんか。』
「そうじゃな。」
「では、私は持ち場に戻ります。後で会いましょう。」
ロックハルトの攻防戦は、それから6時間後に集結した。この戦いは魔人の思惑なのか。それとも別の思惑が働いたのか。この時の僕には知る由もなかった。




