第071話 ロックハルト攻防戦(その1:劣勢)
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト シャロン家 アルフォード・ウィンザー
何だか、胸騒ぎがする。敵が来るのか…町の中も騎士たちが忙しなく動いている。かなりの規模だ。4万か5万位の規模だ…
僕は、自分の部屋から外に飛翔魔法で飛んでいる。屋根の上で眺めていた。討伐部隊は2万から2万5千くらいか。町の守備隊は1万5千くらい。討伐隊と守備隊の間に待機する部隊がいる。それが1万5千くらいか。そうすると僕の部屋がノックされた。僕は慌てて部屋に戻った。
『どうぞ。』
入って来たのは、マリーさんとマリアさんだった。
「どうやら王都に敵が攻めてくるみたい。魔物の数は2万との情報よ。」
「…」
マリアさんは、何か心配があるのか顔色が青かった。
『やはりそうですか。』
「やはり?どうして分かったの。」
『屋根で、陣形を見ていたのです。聖騎士団が頻繁に動いていました。それと、どうも予感がするのです。それで、用件は…』
「アルフォード君はどうするの…」
『…?言っている意味が分かりません。』
「戦うかって事よ。」
『敵も多いかもしれませんが、既に王都から討伐隊と守備隊が出ているようです。それに、王都から戦闘の要請が有りませんし、自分たちで対応出来ると判断したのではないでしょうか。』
「そうかしら…」
『それで、マリーさんとマリアさんは如何しますか。避難しますか?』
「避難…?」
『私なら転移が使えます。クリスタニアまで戻る事も可能です。』
「お父様を置いて、この王都を離れる訳には…」
『しかし、これからする戦闘の規模はかなり大きいと思います。戦いの余波に巻き込まれたら…』
「…」
『マリーさんのお父さんは何処に居るのです。事情を説明しましょう。連れて行って下さい。』
「…分かったわ…」
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 行政府 宰相室 アルフォード・ウィンザー
僕は、言葉を発せないでいた。マリーさんの父親が、この国の宰相をしているなんて知らなかった。それでは、流石に避難する事など出来ないだろう。
『マリーさんとマリアさんだけでも避難出来ないでしょうか。』
「アルフォード君。うちの家内が、避難したいと申しましたか。マリーも同様です。」
『いいえ。ですが、この戦闘の規模はかなり大きくなります。そうなれば危険です。』
「私の家は代々からの名家でもある。喩え、ここで朽ち果てようともこの国を見捨てて逃げる事など出来ない。仮に、滅びるのであれば、それも定めなのです。シャロン家に生まれた時から覚悟は出来ています。」
『分かりました。戦況は有利に運んでいるのでしょうか。部外者ですが、教えて頂ければ有難いのですが…』
「上位種が7体と最強種が1体確認出来ました。この最強種が問題なのです。魔人と互角に戦える存在です。戦闘ですが、現在は多くの魔物と交戦しており、連絡が途絶えがちです。」
『そうですか。最強種のタイプは分かりますか。』
「漆黒の竜だそうです。」
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト近郊 ビクター・アクセル将軍
戦いが始まって、既に4時間が経った。常に戦いをしている我らには疲労の色が出ている。何といっても上位種だけでも厄介なのだが、それが7体居るばかりか、最強種までいる。そして、追い打ちをかけるように報告が来た。
「第2、第3の聖騎士隊が半壊しました。」
「なに…」
「第2・第3の聖騎士隊は、戦線を維持出来ません。一旦、後退をして再編を図るとの事です。第2・第3の穴を第6の聖騎士隊が代わって行います。」
超越者が10名いても、所詮は指揮官になっている以上は、簡単に戦える者ではない。それにしても魔物だけなら対応出来るが、上位種が暴れてから魔物が来るので、騎士団の対応が後手になってしまっている。戦いに勝つには先手必勝なのだが…
「ロックス将軍に連絡せよ。」
「ハッ」
「ロックス将軍の隊は、上位種及び最強種を長距離から援護せよ。更に彼の隊の半分をこちらに合流させよ。そして、怪我人などは、後退させる。第2及び第3隊の中で、怪我をしている者は後退させよ。王都にも至急に連絡、救護する場所を確保するようにと。」
「ハッ」
伝令を伝えるために、何人かの騎士が転移して言った。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 行政府 宰相室 アルフォード・ウィンザー
『僕も戦います。よろしいでしょうか。』
「そうしてくれるか。頼む。」
『ただし、私は単独で行動します。誰かの指揮に入りません。それでよろしいでしょうか。』
「うむ。出来れば、戦況は確認して対応してほしい。」
「分かりました。」
そうして、僕は宰相の部屋から飛び出した。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト近郊 ロックス・ウィリバルト将軍
ビクター将軍の指示のもと、騎士団を派遣したがどうも劣勢だ。このままでは、王都に被害が出る可能性がある。何とかしなければ…しかし、私は予備隊を任されているに過ぎない。また、宰相殿から過度な行動を慎む様に言われている。どうしたものか…
その時、戦闘が行われている場所に凄いスピードで移動している者が見えた。あれは何者なのだろうか…




