第070話 急転
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 行政府 宰相室 オスカル・シャロン宰相
アルフォード君は、非常に良い好青年だ。マリーかリーファのどちらかでも彼を婿として貰えれば、我が家は安泰なのだが…。やれやれ…。そんな事を考えていると、扉がノックされた。
「入りたまえ。」
「失礼致します。」
入ってきたのは、リンツ参事官だ。
「アルフォード・ウィンザー君と国王陛下であるセイリオス・ロックハルト5世様の面会ですが、何時頃を予定しておりますでしょうか。」
「その事か。もう少し調整に時間がかかる。」
「そうですか。」
「リンツ殿には懸念があるのか。」
「クリスタニアを長期で空けるのは、どうかと思いまして…」
「魔人の心配という事か。」
「はい。クリスタニアは連続で、魔人に襲われました。町のトップが長期に留守すると、良からぬ噂が流れるやもしれません。」
「逃げたと言われるか。」
「そこまで、直接的な表現では無いと思いますが、恐らくは…」
「参事官よ。魔人の討伐の件について、貴官の意見を聞きたい。どう思われる。」
「クリスタニアは一度、痕跡を残しております。そういう意味ではある程度ですが、町の位置を把握されておりますので、何とか討伐したいという考えは持っています。しかし、魔人は私の想像を超えた存在でした。そうであれば、事は慎重に進めるべきと思われます。」
「そうか。騎士団の中では討伐を望む者が多くいる。まあ、出世のチャンスと思っている輩が多いのだ。何より、今までは複数の魔人がいたが、1体になったのは此方としては好機と見るべきなのだろう。その意見が大半を占めている。」
「アルフォード君の意見はどうでしたか、彼は常に冷静な判断が下せると考えています。」
「彼は、慎重な意見だったよ。魔人の恐ろしさを知っている感じだった。安易な行動は、力のない者に被害が及ぶという考えだった。」
「そうですか。」
リンツ参事官と話していると、扉が再びノックされた。
「どうぞ。」
「急な用件で有ります。」
「クロノス・スティンガー将軍。急な用件とは…」
「ハッ。ロックハルトの北側10Km先に、魔物の群れを発見しました。このまま、直進を続ければ、ロックハルトを直撃します。至急防衛体制を整いたく。」
「して、その群れの数は分かるか。」
「詳しい情報はまだ確認が取れておりません。おおよそ、2万という話です。」
「なに、2万だと。クロノス将軍は至急、守備隊の布陣せよ。町の防衛を指揮せよ。」
「承知。」
そうすると、彼は即座に部屋を出て行った。
「第1聖騎士団の近衛兵に連絡せよ。王族の身辺警護を怠るな。第2、第3、第4、第5、第6の聖騎士団は、討伐隊を編成して、迎撃に向かわせろ。討伐隊は、ビクター将軍に指揮権を委ねる。第7、第8、第9、第10は予備兵力として待機させよ。予備の指揮はロックス将軍に任せる。彼には、常にビクター将軍との連絡を取って、無理な行動は慎む様にと…。」
宰相の秘書官が慌ただしく動いている。約30分後には各々が持ち場についた。
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 王宮 オスカル・シャロン宰相
「国王陛下、つい先程、クロノス将軍からロックハルトの北側約10Kmに魔物の群れが発見されとの報告を受けました。このままでは、王都を直撃します。現在は、第2から第6の5部隊約2万で討伐に当たっております。」
「そうか…それで、魔人の確認は出来ているのか。」
「今の所ですが、魔人の確認は出来ておりません。今回の戦いはこの王都を落とす事ではなく。痕跡を得るための揺動の可能性が有ります。」
「そうか。これだけの敵が攻めてきたのは、初めてか…」
「はい。陛下や王族の方々には近衛兵が守備しております。万が一の場合は転移にて、クリスタニアに一時避難して頂く事もお考え下さい。」
「それはならぬ。臣民をおいて、我らだけ逃げては…」
「一時避難の可能性を申しております。そのような事がないように、こちらも最大限の兵力を持って対応をしております。」
「そうならないよう。全力を尽くしてくれ…」
「ハッ…」
■クリスタニア大陸 王都ロックハルト 行政府 宰相室 オスカル・シャロン宰相
陛下への報告を済ませた私は、行政府で、各部隊からの報告を受けている。魔物は中級クラスが主であるが、7匹の上位種と1体の最強種の確認が取れた。
「上位種は問題ないと思うが、最強種がいるのか。」
最強種は、太古よりいる竜や神獣である麒麟、ユニコーンなどの生命体である。彼らは、希望石と魔結晶で構成された魔物とは一線を画す存在だ。これだけ多い敵に、魔人に匹敵する敵か…どうも、おかしい。1年位前から魔物たちの統率力が落ちている。これまでは、魔人も我々もある程度のエリアが存在してきた。しかし、1年前位から敵が積極性に侵攻を開始している。それは、果たして偶然なのだろうか。
更に報告が届いた。最強種は、竜の様だ。漆黒の大型竜との事だった。




