第067話 手紙
■クリスタニア大陸 クリスタニア 行政府 リンツ・ジョーゼフ参事官
王都からの手紙がきた。この町の防衛戦でお褒めの言葉を頂いた。私は、混乱が無いようにした位だ、そして、戦える者と打ち合わせをしたに過ぎない。褒められるべきは戦った者たちだろう。手紙の中で、功労者であるアルフォード君を王都に呼んでほしいと書いてあった。
この事を彼に話した。彼は困惑していた。僕の事は気にしないで下さいと…。彼にも、いろんな事があるのだろう。これ以上の係わりは持ちたくないという雰囲気があった。でも、この町には火種がある。もう、痕跡は無いと思いたいが、この大陸には魔人がいるのだ。クリスタニアの覇者と異名を持つ魔人が、その打倒には彼の力は必要なのだ。王都もその辺りを理解したのだろう。私が出した報告に迅速に対応している事からそれが伺える。何と言ってもイーグル・スピリットの関係者が生きていたのだから…。さて、如何したものか。
手紙の差出人を見てため息を吐いた。差出人は、オスカル・シャロンと書いてある。宰相殿からの手紙か。私は気が重たくなった。彼はこの話を乗る気では無い。そういえば、宰相殿のご令嬢がクリスタニア学園にいたな。彼女たちに相談するしかないかもしれない。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 理事長室 リンツ・ジョーゼフ参事官
私は、理事長にこの事を話した。理事長もこの件については理解してくれた。理事長室に、宰相のご令嬢であるマリー殿、リーファ殿に来て貰った。
話を聞いているとアルフォード君とリーファ殿とは上手くいっていない事が分かった。宰相のご令嬢なのだが…と思ったが、彼はその事を知らないらしい。また、彼女たちも自分の才覚で学園生活を送りたいという事からこの事を話していないというのだ。まあ、ロックハルトからここに来ている学生は殆どがこの事を知ってはいるが、中には田舎町から来ている者もいるのだ。
それに、多くの者は、特権階級の者と関係を結びたいと考えている。そういう者は、要人はチェックしているのだが、どうもアルフォード君にはその手の欲は無いようだ。それが、事態を難しくさせているのだが…
「マリー殿、アルフォード君への御取り成しをお願い出来ないでしょうか。」
「私自身も彼との友好な関係は築きたいのです。でも、彼は出世欲とか無縁のようです。私が話しても果たして上手くいくかどうか。」
「それでも、構いません。」
「分かりました。話しておきます。」
「それと、お父様からお手紙が届いております。この手紙が同封されておりましたので、お渡し致します。」
「手紙…?」
■クリスタニア大陸 クリスタニア 学園寮(女子寮) マリー/リーファ・シャロン
「お姉様、お父上は何と仰っていますの…」
「手紙には、どうも魔人が、この町を襲うと聞いてからずっと心配していたようだ。通りで、Bランクの戦士が来るはずよ。」
「そうですわ。この大陸でBランクの冒険者を探す事は大変なのにね。相当の報酬を出すか、国に使えるだけの身分を与えるか。」
「お父様からは、今年は夏休み、冬休みに里帰りしていないから、この春休みに一度帰ってくるようにと書いてあるわ。」
「お姉様は如何するのです。帰るのですか?」
「そうね。…帰ろうかなぁ。」
「リーファはどうするのよ。」
「…」
「なるほど、2年生になると編成しなければならないものね。ローザちゃんやナディアちゃんもチーム長だけど、その辺の事は如何するのよ。彼女たちは、他の人に譲るのかしら。それとも貴女がチーム長の座を退くの…」
「その辺は、これから話すつもりよ。多分だけど、その辺は問題ないと思うわ。」
「それなら良いけど…。それより、リーファ」
「何、お姉様…」
「アルフォード君とはまだ上手くいっていないの。」
「…うん…」
「そう…彼は悪い人間ではないわ。それに私たちが想像したより過酷な人生を送っている。あなたは、どうするの。」
「彼を前にすると…」
「素直になれない。」
「うん。」
「そう…困ったものね…その頑固な所はお父様譲りね。フフフ」
「…」
「お父様には、私から言っておくわ。2年生の編成が後の人生に大きく係わる事になるから、貴方も慎重に編成するようにね。」
「分かりました。ありがとうございます。お姉様。」
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 屋上 マリー・シャロン
私は、参事官と話した事をアルフォード君にお願いしている。彼は悩んでいた。でも、町を救った功労者なのだ。それに、参事官や理事長もこれを断ると何かしらの影響があるかもしれないと話すと、そうですねと彼は答えた。
『マリーさんはどうしたら良いと思いますか。』
「私も、実家がロックハルトなのよ。アルフォード君が行くなら、私も一緒に帰ろうかなぁ。王都を案内してあげるわよ。それに根を詰めると良くないわ。気晴らしも必要よ。」
『…うーん。如何しようかなぁ。僕は、偉い人に会わなくても、全然問題ないですからね。自分の気の進むまま生きて行きたいと思っているのですが…』
「アルフォード君、何事も経験よ。それに、あたなに会いたい人はそんなに偉ぶらない人よ。」
『え…何か知っているのですか。』
「それは、会ってからのお楽しみよ。」
『もう、会う事が前提になっているのですね。』
「そうね。年上の意見は聞くものよ。それに、王都にもいろんな情報があるかも知れないでしょ。」
『分かりました。何時頃こちらを出発するのでしょうか。』
「魔法で移動だから、何時でも良いのではないかしら。参事官は転移出来るから問題ないと思うわよ。それに旅の途中でうっかりして痕跡を残せば大変よ。」
『それもそうですね。』
私は、強引に纏めた。彼は行きたくないようだったけど、何事も経験よ。アルフォード君…




