第062話 支部長からの依頼
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 進路指導室 アイオロス・グレイア主任教官
私は、第1・2・5チーム全員を集めて、事情を聴いている。なぜ、痕跡を残したのかだ。それには、チーム長であるリーファ・ローザ・ナディアも顔を曇らせた。事情を聞いたところ、行動計画書を、3年のリ―ファの姉たちに見せる予定をしていたが、そのチームの指導員になっていたアルフォード・ウィンザーが居た事が事態を複雑にしたと彼女たちは話している。結果として、全員に反対されたが、彼がいたのでその理由を3年生には聞かなかった。そして、それが原因で彼と決闘する事になったという。そして、その決闘に私たちは敗れた。彼が凄腕冒険者だという事を知らなかった。そして、同じ年齢の者に後れを取ることが許せなかった。そして、彼から私たちのチーム全員がレベル5になるまで、野犬以外の討伐を禁じられた。でも、私たちは彼に追いつきたかったし、更に今回の魔人戦でも役に立ちたかったとの事だ。つまりは、彼女たちは、彼に後れを取る事に不安や苛立ちを覚えさせた。それが焦りになって、無謀な討伐に走らせたという事だった。
「そういう事か…」
「私たちは、彼が羨ましかった。力を持っている彼を…」
「羨ましい?それはどうかなぁ…」
「…」
「俺が彼の立場なら、正直困惑するよ。魔人と戦う前の彼は、自分が力になれるか分からない状況だった。超越者ではない事が彼を不安にさせていた。それに、理事長も私も、彼がBランクの冒険者という事を知っていた。彼に期待するところは大きかった。勝てるか勝てないか分からない敵に、彼は戦わなければいけなかった。それに、戦いの中で、我々が彼の足を引っ張った。我々が居なければもっとスムーズに勝つことが出来たはずだ。私が彼の立場なら、何回かの攻撃は我々の傍に来たと思う。身を呈してまで守れたかどうか正直なところ疑問がある。」
「…」
「君たちなら、全員を守ったか。守れる事が出来たか。彼は何度も我々の代わりに打撃を受けた。その度に、彼は立ち上がった。何度も絶望し、何度も敗れたと思った状況でも、彼は我々に弱い所を見せなかった。彼は魔人を倒した直後にも自爆から我々を守っている。瞬時に校庭に転移した。彼はあの時に、後先を考えていなかったと思う。もしかしたら死んでいたかもしれないのになぁ。グレース先生も、理事長も彼は相当なダメージを受けて、危険な状況と言っていたよ。」
「…」
「力があれば、頼られる。そして、勝てると思えば、多くの期待を背負う事になる。彼の事を羨ましいなどと簡単に俺は言えないよ。」
「…」
「それに、5歳の頃から戦闘経験がある事は、普通の家庭では有り得ない事だ。彼には、非常事態が有ったという事になる。彼の事を知らずして、簡単に羨ましいなど言ってはいけない。彼は、我々の方こそ、羨ましいと思っているはずだ。平和に暮らしている事や家族がいる事を…。彼は、記憶がない事が彼を苦しめていると思う。」
学生たちは、俺の言葉を最後まで黙って聞いていた。この子たちも魔人との戦いの中で、俺が話したことを感じたのかも知れない。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 第1・2・5合同チーム リーファ・シャロン
アイオロス教官からの話をした後、我々は集まって、今後の事を打ち合わせた。アイオロス教官の話は最もだ。彼は、超越者に戦いの中でなれたのであって、最初から超越者ではなかった。私が、彼の立場なら同じように戦えたか疑問だ。彼は戦い抜いた。そして、生きぬいた。彼は、魔人より強い力を持っていたけど、それは結果論に過ぎない。私たちは、その結果を安易に受け入れていはいけないのだろう。彼のこれまでの事なんて考えてもいなかった。力が正義だと思った。力さえあればと…彼からすれば、そう考える事すら幼稚な考えなのだろう。彼は言った。反省としては半分だと。我々が出来る事を考え、行動しなければならない。彼は我々に対して怒っている訳では無い。彼の眼は、私たちの事を悲しんだ目をしていたのだから…
■クリスタニア大陸 クリスタニア 行政府 リンツ・ジョーセフ参事官
会議室には、冒険者ギルドの支部長、白狼戦士団、騎士団長、理事長、それにアルフォード君がいる。今日は、魔人との戦いについての反省と彼らの戦勝を兼ねた祝勝会をする予定だ。
一通りの御礼を良い、後は残った者で雑談をしたが、アルフォード君への質問やその返事は、多くの者が興味を抱くものばかりだった。
「アルフォード君、ありがとう。」
『参事官…僕は、皆さんにお世話になっています。それに、魔人を倒せたのは、ここに居る皆さんのお蔭です。私だけが戦った訳ではありませんよ。』
「それにしても、白狼戦士団に聞いたけど、イーグル・スピリット戦士団の技を使ったといっていたが、まことですか。」
「はい。私は、戦いの後で記憶の間で見たのです。私は、ゼクス・ウィンザーの孫で、アレックス・ウィンザーの子でした。」
「そうですか。イーグル・スピリットの後継者がいたのですね。彼らは、平和を目指す我々の理想なのです。そして、今回のアルフォード君の活躍は、我々に勇気と希望を与えてくれたのです。平和のために、聞きたいのですが、戦いの中で魔人について何か分かりましたか?」
「はい。幾つか分かりました。」
「ホッホッホ…それには儂も興味がある。出来れば教えてほしい。それと出来れば攻撃方法などをどうすれば良いか報告書を書いてほしい。全大陸で平和なのは、ユーレリア大陸だけなのでなぁ…他の大陸は、魔人の脅威に晒されている。出来れば冒険者ギルドから情報を発信したいと思っている。どうかの…」
『分かりました。報告書を書きましょう。』
「うむ…よろしく頼むぞ…アルフォード君」
『分かりました。支部長…』
こうして、僕はギルドに報告書を提出する事になった。




