第059話 それぞれの覚悟
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 闘技場 アイオロス・グレイア主任教官
あの戦いから5日が経過した。魔人が再びこの町を襲うという情報に、私は耳を疑った。でも、事実だ。更に、行政府とギルドの支部長の話では、この町を捨てて撤退という言葉を出したというから二重の驚きだ。しかし、魔人がこうも頻繁に襲ってきたら確かにそれも考えなければならない。しかし、我々にはこの学園があり、生徒がいる。行政府のリンツ参事官は、白狼戦士団に再びクリスタニアの町の守備を頼んだ。しかし、結果は誰もが予想した答えが返って来たという。仕方が無い。今度こそ、前回の過ちを犯さずに戦うしかないと決意を新たにした。どれだけの生徒を守れるだろうか。
魔人が再び襲ってきた。前の魔人ガルトに似ている。そして、魔人は僕たちに要求している。この前、戦った戦士団と光を纏った少年を出せと…
民間人の避難は完了している。生徒も闘技場に避難している。そして、生徒の多くは絶望した顔をしている。先の戦いは自分の無力を痛感したばかりか、今回は助ける人が皆無という状況が生徒を奈落の底に突き落としている。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 闘技場 オルガ・アーサー戦士団長
さてと行くとするか。私の最後の仕事をしに…5日前の肉体的ダメージはもうない。しかし、精神的ダメージはかなり残った。私の騎士生活の中でも特に思い出しなくない一日になっただろう。しかし、忘れたい事の方からわざわざお越し頂けるとは、魔人との再戦か。あまりにも早すぎる再戦に私は苦笑した。しかし、騎士たる者の務めがある。ここで逃げる訳にはいかない。私が死んでも、私の意志を遂げてくれるものがいる。私も多くの騎士や英雄の姿を見て学んだのだ。私もその志だけは後の者に残さなければならないだろう。
エミリアすまん。単身でクリスタニアの町に赴任してきたが、どうやらここが私の最後の地になるだろう。一体何人の若者を生かして逃がす事が出来るのか。戦いは、辛いものを生むものだ。それは仕方がない事だが、歴史を繰り返さないために、誰かが後世に伝えなければならない。あの若者だけは、今回の戦いから守らなければならない。彼には次の世代の希望になって貰わなければならないのだから…
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 闘技場 白狼戦士団 ウィリアム・バーゼル戦士団長
「本当に、町を見捨てて行くの。」
「セレン。俺たちにやれる事は少ない。」
「そうかもしれない。でも…」
それ以上、セレンは言葉を発しなかった。
「ウィリアム…」
「なんだ。アイゼル…」
「これは、俺自身の考えだが、判断はお前に任せるよ。俺たちは、足りないものが分かった。しかし、足らないって言って逃げれば、俺たちはこれからも何かにつけて、逃げる理由を探して生きていく事になるんじゃないかって…ウィリアム…お前は後悔しなのか。ここの人を見捨てて行けば、俺たちはその十字架をずっと背負って生きていかなければならない。俺たちが、冒険者になったのは何でだ。それを思い出してほしい。」
「アイゼル。俺だってそんな事は分かっている。スリングを失った。俺の心にポッカリと穴が開いちまった。戦う前まではそんな事など考えていなかった。失って、初めて気付いたんだ。俺の指揮で人が死ぬ事があるって事を…。俺だけなら良いが、仲間を巻き込むんだぞ。」
それに、アイゼルは黙って、肩を叩いた。
「俺はお前を信じているよ。スリングも同じだったと思う。確かに、前回の魔人との戦いは今でも怖いよ。でもな、俺は戦った事を後悔なんかしていない。」
「アイゼル…」
「俺たちにこんな生き方は似合わないよ。ウィリアム」
「ああ。行こう。確かにやれる事は少ないかもしれない。でも、俺たちを待っている人がいるかもしれない。」
「そうね。私もそれに賛成よ。」
「ありがとう。俺は良い戦士団員に恵まれた。もう、迷いはしない。必要とされる所に行こう。」
「うん」「おう」
そうして、俺たち戦士団はクリスタニアの競技場に向かった。
クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 闘技場 ガルトス(冷酷なる破壊鳥:◆◆)
ようやく、俺の前に弟と戦った戦士団が来た。この中に二人の超越者がいた。そして、騎士団も来ている。確かこの男も超越者…光を纏った奴は、やっぱりダメージが大きいのか来ていない。少し楽しみが減ったがしょうがない。
「俺は、魔人カルドの兄…ガルトス…!?…」
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 闘技場 アルフォード・ウィンザー
やはり、起きたては辛いな。何かふらふらして、体が定まらない感じがするよ。僕はホーリーを気まぐれな女神に与えた。
『少し辛いから協力してほしい。この前の力を僕にほしい。』
「坊や…しょうがないわね。」
そうすると、それから気まぐれな女神は、神のような光を作って、僕に纏わせた。
『ありがとう…』
そうして、僕は魔人を打倒すべく準備を始めた。




